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「ノート新世紀」がやってきた!手書きを即デジタル化するノート、コクヨ「CamiApp S」の実力とは?(1)
高瀬文人の「精密な空論」
「ノート新世紀」がやってきた!手書きを即デジタル化するノート、コクヨ「CamiApp S」の実力とは?(1)
フリーランスのライター/編集者/書籍プロデューサー。 月刊総合誌や『東京人』などに事件からまちの話題、マニアックなテーマまで記事を発表。生命保険会社PR誌の企画制作や単行本の編集も行う。著書に鉄道と地方の再生に生きる鉄道マンの半生を描いたヒューマンドキュメント『鉄道技術者 白井昭』(平凡社、第38回交通図書賞奨励賞)、ボランティアで行っているアドバイスの経験から生まれた『1点差で勝ち抜く就活術』(坂田二郎との共著、平凡社新書)、『ひと目でわかる六法入門』(三省堂編修所、三省堂)の企画・制作。
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とうとう、手書きノートとデジタルがつながる新世紀がやってきた。しかも、それを実現させたのはIT関連メーカーではなく、文具メーカーの老舗中の老舗であるコクヨであった。
9月5日の発売日に買い求めて10日あまり、取材の仕事などに使ってみて、この製品で「ノートする」体験が全く変わってしまったと感じる。この衝撃は、初代iPodを日本発売当日に買い求めて(まだiTunes Storeはなく、行列もなかった。iPodが何を変えるのか、みんなわからなかったのだと思う)、自分のCDライブラリを全部リッピングして「音楽を聴く」体験が変わったときに感じた「震え」に匹敵する衝撃だ。
■デジタルノートに必要な「条件」とは
紙が発明されて以来、2000年以上も続いてきた、「紙のノートに筆記具で書く」という営み。これをデジタルで置き換えるためには、絶対に譲れないいくつかの条件があった(私は、ノートパソコンの使用には否定的。その理由は回を改めて書く)。
①書いた軌跡が確実にデジタル化されること
②書いたものが失われることが絶対にないこと
③余計な操作が増えないこと
①、②は絶対条件で、これが実現できない限り、その場勝負であるインタビューや取材仕事での実戦には怖くて使えない。ここを超えなければ、どんなに高価でも「おもちゃ」である。③も、取材相手を前にして余計な操作に神経は使えない。複雑になると誤扱いの元になる。
タブレットの新機種が出るたびに、これにタッチペンで筆記できないかと試してきたが、センサーの密度や反応速度、ペンの性能が追いついておらず無理だった。専用端末もいくつか出たが高価で確実性が不安だった。
だが、CamiApp Sは、これらの条件に満額ではないがちゃんと答えを出してきた。しかも答えの出し方がいかにも文具メーカーで、デジタルとアナログのハイブリッドで解決してきたのである。
■アナログ部分を絶妙に残したハイブリッド構成が光る
CamiApp Sは、紙のノートあるいはメモパッドとセンサ・メモリ・通信部分を持つボード状の本体と専用ペンから構成されている。まず、本体に専用のノートを装着する。メモパッドでは左上部分を合わせると座標が決まる。あとはペンで書いていくだけ。ペンにはコイルが仕込まれており、本体の電磁誘導センサーと反応して筆跡が記録される。
本体とiOSデバイス、またはAndroidデバイスにインストールしたアプリとの間でBluetooth、またはNFCにより通信でき、リアルタイムでスマホやタブレットに読み込まれる。CamiApp S本体だけを起動させてメモリに蓄積しておき、あとでまとめて転送することも可能だ。さらに、手書きをOCR化テキスト化することもできる。
アプリからはメール送信だけでなく、Evernote、Googleドライブ、Googleカレンダーのクラウドに保存したり、PDF化して共有することもワンタッチでできる。
①「書いた軌跡が確実にデジタル化されること」は合格点。ペン側にはコイルしかないので、軽い。電池交換など余計な気を遣う必要がないのもよい。ペンは0.7ミリ油性ボールペンで、別売りの替え芯は80円と安いのもよい。
②「書いたものが失われることが絶対にないこと」について、コクヨは驚くべき逆転の発想で策を打ってきた。保存側のスマホやタブレットを立ち上げておけば確実にリアルタイムで読み取れるが、万一トラブルがあっても、最後には「ペンで書いた紙が残る」。まことにアナログな話だが、一番確実な方法である。
CamiAppシリーズは、今回のSシリーズの展開以前はノートやメモ用紙に筆記したものをスマホで撮影してデジタル化するコンセプトの製品で、本体にノートやメモパッドをセッティングしておくとそれが撮影用の枠となり、スマホで撮影することでデータ化できる。
③「余計な操作が増えないこと」。ここに、さまざまな工夫が仕込まれている。
最初に本体の電源を入れるが、本体の操作はここまで。あとの制御は、ノートやメモパッドに「チェック」することで進める。
最後まで書いたら、右下のチェックボックスにペンでチェックをする。これが改ページのコマンドとなり、本体はそのページの記録を終了する。紙に書くのと全く同じインターフェースであり、改ページを指示するのにペンから手を放す必要もない。非常によく考えられたシステムだ。
チェックボックスの左隣には数字を書き込むエリアがあり、これによって保存フォルダの振り分けと、事前に設定しておけばEvernoteやGoogleドライブへの転送が可能になる。
①、②で紙のノートと同じ確実性を確保しつつ、③では簡単なインターフェースでデジタル化して分類までできるという、紙のノートができない機能を加えている。「ノートとは何か」を考え抜いた、歴史のある文具メーカーらしい、素晴らしいプロダクツだ。さらに、仕事に使ってのオペレーションがどうなのか、書いていきたい。