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「生き残るための」文章の書き方 ③『もし女子高生が、法律雑誌に連載を持ったら』

「生き残るための」文章の書き方 ③『もし女子高生が、法律雑誌に連載を持ったら』

高瀬 文人

フリーランスのライター/編集者/書籍プロデューサー。 月刊総合誌や『東京人』などに事件からまちの話題、マニアックなテーマまで記事を発表。生命保険会社PR誌の企画制作や単行本の編集も行う。著書に鉄道と地方の再生に生きる鉄道マンの半生を描いたヒューマンドキュメント『鉄道技術者 白井昭』(平凡社、第38回交通図書賞奨励賞)、ボランティアで行っているアドバイスの経験から生まれた『1点差で勝ち抜く就活術』(坂田二郎との共著、平凡社新書)、『ひと目でわかる六法入門』(三省堂編修所、三省堂)の企画・制作。

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ah_nau2.jpg「もしドラ」(『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』岩崎夏海著、ダイヤモンド社)はあくまでフィクションだが、これから私がするのは「本当の話」である。

■初めて会った女子高生に、雑誌連載を頼んだ
法律雑誌の編集をしていた頃、毎月、女子高生に半ページの連載コラムを書いてもらっていたことがあった。
きっかけは、現職裁判官の座談会を収録しに行って、偶然、座談会を見学に来た高校2年生と出会ったことだ。彼女の高校は単位制で、論文を書く科目がある。そこでテーマに「司法制度」を選んだ。取材先を探した彼女は、現職裁判官の団体「日本裁判官ネットワーク」に「話を聞きたい」と連絡したところ、「座談会をやるからおいで」と招かれたのだという。

座談会は彼女を交えて行われた。法学部志望だというし、裁判官たちに促されての発言の内容もよい。「連載コラムを書いてもらおう」と思い立った。
(その座談会が収録された本はこれだ。ちなみにタイトルは、彼女が座談会を見ながらぽそっとつぶやいた、「裁判官だって、しゃべりたいんですね!」という感想をそのままいただいた。このセンスにもしびれた)

■盛りだくさんの編集意図
ちょうど10年と少し前。2009年に始まった裁判員制度など、一連の司法改革の制度設計がこの当時進んでおり、法科大学院(ロースクール)も、彼女が大学を卒業する頃に始まることが本決まりになった。どこの法学部を選ぶか、試験をどう突破するか。それらをリアルタイムで誌面に載せられたら面白い。

そしてそして。2010年のいま、『ハーバード白熱教室』が流行っている。アメリカではこういう授業は珍しくないが、当時の日本における大学教育では想像もつかないことだった。アメリカのロースクールでも、昔から教師がダイナミックに学生と対話しながら進める授業が普通に行われており、10年前の私は、日本で法科大学院が始まったら、こんな授業が展開されるだろうと考えていた。

最前線に彼女が身を置いて、生のレポートを送ってくれたら。『推定無罪』『立証責任』などリーガル・サスペンスで一世を風靡したスコット・トゥローも、ハーバード・ロースクール時代に呪文のような法律学や教授の難解な問いに圧倒されつつ、同級生同士でもより高い成績をとるためバトルを繰り広げた体験を、25年以上前に本にまとめてアメリカでベストセラーになった。邦訳は『ハーバード・ロースクール わが試練の一年』(ハヤカワ文庫)だが現在は絶版のようだ(「白熱教室」の本と同じ出版社なのにセンスないなあ)。ロースクールの実態が、生々しく、実に面白く書かれている。こんなことが、彼女でできないだろうか。

そうだ、女子高生の今のうちから、文章で表現するというスキルを身につける訓練をしてもらおう。いったいどんな人に育つだろうか。実験してみよう。

振り返ると、よくこんなこと思いついたと呆れるが、司法改革たけなわで、先が見えない状況だったから、編集会議で企画はすんなり通った。

連載は開始された。(つづく)