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タバコ離れで、人間関係が"ぎくしゃく"する?
タバコを吸う人がまたまた減りました――。
厚生労働省の調査によると、日本にいるスモーカーの割合は19.5%。20%を切ったのは、調査開始以来、初めてのようですね。また男女別にみると、男性は32.2%、女性は8.4%。特に男性スモーカーは、2003年が46.8%だったので、わずか7年間で14.6ポイントも減少したことになります。
スモーカーが減り続けていることを、どのように受け止めればいいのでしょうか。「タバコは体によくありません」「百害あって一利なし」などと訴え続けた、厚労省(昔は厚生省)の"成果"ともいえる数字でしょう。
記者もタバコは吸わないので、できれば他人の煙は吸いたくありません。「ヘビー」と呼ばれる人と会話をしているだけで「この人の息、くさいなあ~」と感じたこともしばしば。最近では居酒屋くらいでしかタバコの煙をかぐ機会がないので、たまに道の前を歩いている人が吸っていたら、その人を追い越して「どんな奴が吸っているんだ!?」と顔を確認することも(確認したところで、何が起きるというわけではありませんが)。
●タバコと職場の人間関係
タバコを吸う人が減った。多くの職場で、煙が消えた。そして社内の環境もよくなった。――とは一概には言えないかもしれません。
タバコを吸わない人って、実は"スモーカーがうらやましいなあ"と思っているのではないでしょうか。「休憩しているのに、何もしてなければサボっているように見られる。でもタバコを吸っていれば、それだけで言い訳になるし」「喫煙所では楽しそうに話しているよなあ。どんな会話をしているのんだろう? オレも仲間になりたいよ」などと。
事実、ある調査ではこのような結果が出ています※。ビジネスパーソンの52%が「タバコは職場の人間関係に"有利"だと思う」と回答。興味深いのは「有利」だと答えたのは、スモーカーよりも吸わない人のほうが多いこと。また「有利」だと思う理由を聞いたところ「喫煙所で別の部署の人や役員などと知り合え、人脈が広がると思う」「喫煙所を外から眺めていると、会話が弾んでいるように見える。きっと人間関係にも影響があるに違いない」といった声がありました。
▼▼※ビジネスパーソンの「タバコと職場の人間関係」意識調査。DODA調べ。
未知の領域ともいえる喫煙所。吸わない人にとっては、憧れのようなものを感じている結果となりました。
一方、スモーカーからも「有利」な点として、こんな声がありました。「喫煙所は重要な会議所になっている」「普段仕事では接しない人と話す機会があり、人間関係が広がる」と。
やはり......そうだったのです。スモーカーにとって、喫煙所はいわば"サロン"のようなもの。そこでは「昨日、阪神が勝ったなあ」といったゆるーい話から、「また給料が下がったよ」といったくらーい話まで飛び交っているのでしょう。しかしそうした会話を、ノンスモーカーは聞くことすらできません。
●人間関係が"ぎくしゃく"する?
話は少しそれますが、ある銀行の支店長がこんなことを言っていました。
「ドイさん、職場恋愛が少なくなったのはいつごろかご存じですか?」
「うーん......」と答えを探していると、支店長は
「女性がお茶くみをしなくなってからですよ。それからは支店内でカップルが生まれるどころか、やれ『セクハラだ』とか言い出して、人間関係がぎくしゃくし始めましたね」
営業をしている男性が、疲れ果てて支店に戻ってくる。そうしたときに職場の女性から「はい、どーぞ」とお茶を差し出されると、男性はうれしいもの。つまり「一杯のお茶」から、恋愛関係に発展するケースが多かったようです。
もちろん恋愛に発展しなくても、「あの娘は優しいなあ」「気がきくなあ」と男性陣が思えば、職場の雰囲気はよくなることでしょう。
ではタバコの場合はどうでしょうか。喫煙所で恋人ができるかどうか分かりませんが、「○○部長にはまいったよ」「あ、お前もか? 実はオレもこんなことがあって......」と意気投合したりすることもあるはず。そうした小さな意見の一致を積み重ねていけば、いずれ大きな人間関係を築くこともできるでしょう。
しかしスモーカーの数は右肩下がり。職場では"タバコ離れ"に歯止めがかかりません。社内でのスモーカーが減り続ければ、ひょっとしたら人間関係が"ぎくしゃく"し始めるかもしれません。まるで「女性がお茶くみをやめたとき」のように。
誠編集部(土肥)