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F1はやっぱり「走る広告塔」である (1) ― F1スポンサーの移り変わりは時代を映す?
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F1はやっぱり「走る広告塔」である (1) ― F1スポンサーの移り変わりは時代を映す?
グローバルなスポーツ F1(フォーミュラ・ワン)を斜め45度から楽しみましょう! 2012年3月からは、F1 Podcast『エフワンのすくつ』の Quzyがひとりぼっちで担当しています(それ以前の記事は原泰史さんと共同で担当していました)。
当ブログ「blog.formula.commons」は、2015年4月6日から新しいURL「http://blogs.itmedia.co.jp/fcommons/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。
さて、これまで「走る広告塔ではない」という斜め45度シリーズを展開してきましたが、自分たち自身で、自分たちのアイディアに(まっとうな角度から)反証を突きつけてみたいと思います。すなわち、なんだかんだ言っても、F1は「走る広告塔」に他ならないのではないか----?
・「走る広告塔」の変化
確かに、F1マシンには依然として多くの企業ロゴが貼り付けられています。車体のスペースを複数のスポンサーに小売りする場合もあれば、マシン全体のイメージを大口のスポンサーに一括して販売することもあります。どちらにせよ、スポンサーからの広告を請け負うことで、F1チームは資金を得ているわけです。
しかし、広告にはトレンドがあります。時代が変われば、スポンサーの業種も変わります。不景気の時代だからこそ、世界的なモータースポーツに広告を出す体力のある企業を知りたい、という向きもあるでしょう。
しかし、いったいどんな「イケてる」企業が、F1チームのスポンサーとして軒を連ねてきたのでしょうか。トレンドの変化を追いながら、検証してみましょう。
・タバコマネーの時代
F1を支えてきた代表的なスポンサーと言えば、タバコ会社です。タバコ会社によって「走る広告塔」の時代が幕を開けたのです。既に「F1は走る広告塔ではない (1)」でご紹介した通り、1968年、かのチーム・ロータスが、シンボルカラーであるブリティッシュ・グリーンを捨てて、赤と白のゴールドリーフ・タバコのカラーを身にまとったことが、F1広告時代の幕開けでした。その後、1980年代末から90年代にかけて、マクラーレン・ホンダのマルボロ・タバコ時代を鮮烈に憶えておられる方も多いでしょう。(写真:By twm1340 CC-BY-SA)。
僕も、始めて買ったF1プラモデルは、1992年のゲルハルト・ベルガーのマシン、田宮模型のマクラーレン・ホンダMP4/7でした(敢えてセナと言わないでみました)。
手元の『フォーミュラ・マネー 2009/10』(p.51)によると、F1のタバコ広告出稿がピークに達したのは、1999年です。
ピークが意外と遅い気がしますが、いかがですか? 日本の「F1ブーム」の時代とは、かなりズレた時代に、タバコ広告のピークがあったのです。当時は、ウェスト、マルボロ、ウィンフィールド、ベンソン&ヘッジス、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ、マイルドセブン、ゴロワーズ・・・と、各チームがタバコ企業をメインスポンサーにして走っていた、今から振り返ると「ちょっとあり得ない」時代でした。
・タバコマネーの撤退から情報産業の時代へ
その後、北米やヨーロッパにおけるタバコ広告の露出禁止が徹底されるようになると、タバコ会社は「テレビに映るのが目的」のF1スポンサーは続々と撤退していきます(参考:NPO法人禁煙推進の会えひめ「タバコ広告の歴史」)。また、タバコが「かっこいい」象徴から「怠惰・不健康」の象徴へと時代の雰囲気が移り変わる中で、イメージ重視のエンタテイメントであるF1もまた、タバコ会社を避けるようになりました(参考:タバコは美容の大敵!「タバコを吸うのはカッコイイのか?」)。
その様子を端的に示しているのが、このグラフです。(出典:『フォーミュラ・マネー 2009/10』p.50)
栄華を極めていたタバコ広告が急落した後に登場したのは、いわゆるIT産業でした。現代のF1は依然として「走る実験室」ですが、それはガソリン機関の実験室ではなく、コンピュータ・テクノロジの実験室です。
また、サンタンデールやロイヤルバンク・オブ・スコットランドといった銀行、INGのような保険会社が、IT産業に次ぐ規模でF1を支えるようになりました。2011年からザウバーのスポンサーになるのはメキシコのインタープロテクションという保険会社です(参考:F1-gate.com「ザウバー、インタープロテクションとスポンサー契約」)。
他に成長が目立つのが、飲料業界とファッション業界です。2010年のチャンピオンをとったレッドブルは言うにおよばず、モンスターエナジー、ヘルエナジー・・・といったエナジードリンクのブランドがF1では大きく露出するようになっています。ジョニーウォーカーやホワイト&マッカイといったアルコール飲料ブランドも好調です。ファッションブランドは、F1チームに公式ウェアを提供し、そのレプリカをファンに対して販売するというビジネスを展開しています。
・F1スポンサーは時代を映す鏡である
このように、確かに、時代に応じて主な広告主は変化しています。タバコのような「イケてない」企業(愛煙家のみなさんごめんなさい)は姿を消し、現在ではIT産業や金融、飲料、ファッションメーカーがF1の「走る広告塔」を支えています。しかし、こうした企業もいずれは姿を消し、時代に応じた「イケてる」スポンサーが定着することになるのでしょう。
しかし、お金を出してくれればどんな企業でもよい、というわけではありません。逆に言えば、車体にロゴを出しているからといって「イケてる」企業だとは限りません。F1は醜聞をひどく嫌い、「poshな(上品な)」イメージを大事にする世界です。次回は、「F1にふさわしくない」と考えられたようなスポンサーについて取りあげ、「走る広告塔」を斜め45度から検証してみたいと思います(^_^)
by blog.formula.commons (quzy)
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