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インターネット時代におけるラジオ局の役割とは?

インターネット時代におけるラジオ局の役割とは?

ソーシャル探偵団 『happy dragon』

山口哲一(音楽プロデューサー)と、ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)によるプロデューサー・ユニット。インターネット上のソーシャル・マーケティングを実践的に研究。エンタメ・コンテンツとソーシャルグラフの関係を分析し、具体的なプロデュースワークにフィードバックする活動を行っている。2011年に『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本』(ダイヤモンド社)を刊行。 2012年4月よりトークイベント『sensor 〜it&music community』を開始。毎月完売の人気イベントになっている。 https://www.facebook.com/happydragon.page

当ブログ「コンテンツとメディアの近未来」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/happydragon/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


 新年あけましておめでとうございます。2011年も昨年以上の激動が予想されますが、
ポジティブに頑張っていきましょう!

 皆さんは、「radiko」(ラディコ)をご存知ですか?
 
 関東圏と関西圏のラジオ局の番組がリアルタイムにインターネットで聞けるサービス
です。2010年12月1日から本格稼働が始まりました。2010年3月15日から関東1都
3県、関西2府2県で行った試験運用も好評で、予想以上の聴取者数だったそうです。

 今回は、RADIKOから見えてくるメディア事情について、論じたいと思います。

 ラジオが始まった頃から、ラジオ局は、音楽プロデューサーにとって、頼りになる
味方でした。音楽好きのディレクターやパーソナリティが、ユーザーに対して我々の
楽曲やアーティストの個性を伝えてくれるメディアとして、長年に渡り近しい関係で
した。知名度が低いアーティストでも、楽曲に力があればオンエアーされ、ファンを
掴むきっかけが持てます。私自身も自分のつくった作品で、ラジオ局のマンスリー・
ヘビー・ローテーションの新記録(東京エスムジカ『月凪』という曲です)をつくった
経験もあり、応援していただいたという感謝と愛着を持っています。
 
 実際、90年代までは、「ラジオ発」のヒットもたくさんありました。宇多田ヒカルが
デビュー前から、札幌north waveと福岡crossFMという二つのFM局でレギュラー
番組を持ち、ヒットのきっかけになった話は有名です。

 ところが、近年は影響力が落ち、不況の影響もあって、元気の無い印象があります。
2010年6月には、名古屋地区のRADIO-iというFM局が経営不振に陥り、9月30日に
放送を終了、10月7日付で放送免許を返上するという前代未聞の事態が起きました。

 皆さん、ご存知とは思いますが、ラジオ局やテレビ局は国の認可事業です。少しず
つ規制緩和されていて、いわゆるコミュニティFM局は届け出制で作れるようになりま
したが、基本的には、銀行などと同様に、役所の許認可を前提としています。各地の
FM局は、地元の地場産業がずらっと株主に名を揃え、役員も出向者で大半を締めら
れています。なかなか機敏な経営は難しい体制の会社が多いと思われます。

 そんな中で、radikoは、関西電通が事務局となり「IPサイマルラジオ協議会」を
2009年に設立され、各ラジオ局と連携して、実証研究してきました。音楽関係の
権利者団体やプロ野球機構等のスポーツ団体とも交渉を重ねてきています。

 ユーザーからは、試験運用時から好評で、予想以上の聴取者数だそうです。
(2010年11月末発表で、radiko公式アプリのダウロード数は、約110万)
 ラジオ局の持つコンテンツ力が、ユーザーから支持されたというのは、とても喜ば
しいことだと思います。
 

 そんな私が、現状のradikoに対して、残念に思うのは、以下の2点です。

●せっかくインターネットで放送しているのに聴取地域は既存のままで、エリア外
 では聞けないこと。

  これは、前述の認可エリアの問題と、協賛企業とのCMの調整が理由と思われます。
 インターネットは通信で、ラジオは放送で、立脚する法律も前提とするビジネスモ
 デルも違うので、簡単では無いのですが、「放送と通信の融合」と言われてもう久
 しいです。実際は、「放送と通信の溶解」が起き始めている訳で、こういう機会に
 試験的にでもクリアーするべきだと思います。

●新しいビジネスモデルが何も提案されていないこと。

  radikoが、権利者側に行っている説明は、何と「難聴取対策」です。「高層ビル
 が増えて、電波が届かなくなってまずいので、ネットで同時放送をやります。なの
 で、著作権関係のことは見逃してください」という姿勢には、正直、呆れてしまい
 ました。


 私は、一番大事にするべきなのは、ラジオ局のコンテンツ制作能力を保持増進させ、
収益力に結びつけることだと思います。

 ラジオの様なメディアは地域に根ざすことも大切ですが、それは発信力の一つの捉
えるべきで、聴取エリアを制限することで実現されることではないと思います。例えば、
地方出身者が、東京に居ても地元のラジオを聞きたいというニーズはあるでしょうし、
観光や特産品など、その地域に根ざした情報を発信することは日本の国全体の
活性化にもつながるのではないでしょうか?

 また、ラジオの受信機がパソコンや携帯電話に代わったことも、ビジネスチャンス
と捉えて、対応した番組つくりや、マネタイズの研究を積極的に行うべきでしょう。

 技術や通信速度は、ドッグイヤー(1年で7年分)やマウスイヤー(1年で18年分)
と言われるほどのスピードで、加速度的に向上していきますが、人間の感情や欲望が、
簡単に変わる訳ではありません。ラジオ番組が持っている、リスナーとパーソナリティ
の継続的な信頼関係や、レコメンドする力は、決して有効性を失っていないと思います。
むしろ、良質のラジオ名番組は、「インターネット的」、「ソーシャルメディア的」な構造を
持っている気がします。

 radikoが、ラジオ局を、本当の意味で強くするツールとなることを期待して、エールを
送りたいです。ラジオマンが元気なことは、日本の音楽文化にとっても有益な事だと
私は思っています。
 

●radiko公式サイト http://radiko.jp/


山口哲一(音楽プロデューサー・株式会社バグコーポレーション代表取締役)
Twitter→http://twitter.com/yamabug
個人blog→http://yamabug.blogspot.com/
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