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グローバルな音楽活動視点でのスイバケ・ブロデュース記録<前篇>  ~「ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本」番外編~

グローバルな音楽活動視点でのスイバケ・ブロデュース記録<前篇>  ~「ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本」番外編~

ソーシャル探偵団 『happy dragon』

山口哲一(音楽プロデューサー)と、ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)によるプロデューサー・ユニット。インターネット上のソーシャル・マーケティングを実践的に研究。エンタメ・コンテンツとソーシャルグラフの関係を分析し、具体的なプロデュースワークにフィードバックする活動を行っている。2011年に『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本』(ダイヤモンド社)を刊行。 2012年4月よりトークイベント『sensor 〜it&music community』を開始。毎月完売の人気イベントになっている。 https://www.facebook.com/happydragon.page

当ブログ「コンテンツとメディアの近未来」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/happydragon/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


 私たちハッピードラゴンは,421日、初の著作『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本』をダイヤモンド社から刊行しました。「ソーシャルグラフ」を中心に据えて、誰にもわかりやすく、ソーシャルメディアとの使い方をまとめたつもりです。是非、お読みいただきたいです。予告編映像はこちらです。

この本では、ソーシャルグラフの形成、ソーシャルメディアの活用法という観点で、一章を割き、音楽ユニット「Sweet Vacation(通称:スイバケ)」のブロデュースをまとめています。本稿では、私のもう一つのテーマである「グローバルな活動」という観点で、スイバケ・ブロデュースに関して記します。

 

私の海外経験は1990年代にニューヨークでのレコーディングから始まりました。何人かのアーティストでレコーディングを行い、外国人と一緒に作品をつくることの難しさと素晴らしさ、共通言語としての音楽の価値を学ぶことができました。

その後、「GOOD NEWS」というレーベルをつくり、シカゴやニュージャージーで、ゴスペルミュージシャンと一緒に行ったレコーディングや黒人教会の礼拝は強く印象に残っています。

レーベルオーガナイザーの塩谷達也が著した「ゴスペルの本」(ヤマハミュージックメディア)は、日本語で書かれたゴスペル関連著作では最高の本です。ブラックミュージックに興味のある方は、是非ご覧下さい。現在、電子書籍版の発売も検討しています。


「東京エスムジカ」というプロジェクトでは、モンゴルやインドネシアのジャワ島でレコーディングを行いました。ルーマニアのジプシーバンド(マハラライバンダ)を日本に呼んで、レコーディングとライブを行ったりと、ワールドミュージックの要素を取り入れたJ-popというコンセプトをより進めるために、"本物"のエスノ音楽家とコラボレーションしました。この経験も非常に刺激的だったので、別の機会に書こうと思います。「東京エスムジカ」については、こちらをご覧下さい。

 

さて、2006年~2007年頃の話です。それまでの経験を踏まえて、私は「アジアのシンガーを日本人のプロデュースワークで、世界的に売る」というテーマを持っていました。当時,既に製造業では、「日本の工作機械を使ってアジアで製品をつくり、欧米で売る」というのが当たり前でしたので、似た構造が音楽の分野でも当てはまるはず、と思っていました。

同時に私は「日本で音楽プロデュースをやるのは、京都で和食屋をやるようなものだ」とも言っていました。「客の舌が肥えているので認められるのは大変だけど、ここで通用すればどこでも大丈夫」という意味です。

 

タイに注目したのは、バンコクのカルチャーが豊穣であるという目利きな方たちからの情報かあったからです。FAT FESTIVAL等のインディペンデントのフェスティバルやクラブシーンの充実度は日本からも注目されていました。soi musicの遠藤さん達から伺った話も刺激的でした。経済的にも、いわゆる中間層が増えて、余裕がありそうです。実際にバンコクに行ってみて、その面白さは予想以上でした。 

いくつかの伝手をたどって、日本をベースに音楽活動を行う意志のあるボーカリストを探しました。「グラミー」という会社の新人開発セクションが協力をしてくれることになります。「グラミー」はタイで4割強のシェアを持つNo.1レコード会社であり、マネージメントや番組制作も行っています。日本で言うと、エイベックスとジャニーズとアミューズを足した様な巨大なパワーを持つエンターテインメント会社です。

ちょうど10代の女性を集めて育成する動きをしていたようで、育成担当部署が協力してくれて、私の考えに興味を持ってくれたシンガーをオーディション形式で観ることができました。後にスイバケのメンバーとなるMayは当時16歳でした。英語力は抜群ですし、既に日本語もある程度できました。度胸やビジュアル含めて、光ってしましたね。

この日に驚いたことの一つは、彼女たちのバックグラウンドでした。コーディネーターの方から、「タイ人は気にしないですから、親御さんの職業を訊いても大丈夫ですよ」と言われたので、家庭環境についても尋ねました。10人以上の応募者は、女子大生と高校生で、全員の親の職業が、「社長」でした。貧しい家庭から芸能界を目指すというのはタイでは難しいのでかもしれませんね。仕事柄、シンガーのオーディションは数多く経験してきていますが、こんなにガツガツしてない女の子が揃ったのは珍しいなと思った記憶があります。

結局、最終候補として残した二人に、こちらが用意した日本語のデモ曲を歌ってもらう二次オーディションを数ヶ月後に行うことにしました。やはり、Mayが良かったので、具体的な話を進めます。当初はグラミーに所属していましたから、グラミーを経由して三者契約をしました。その後、グラミーからアイドルグループとしてアルバムを1枚出しますが、Mayの興味がスイバケに強かったこともあって、グラミーとの契約終了後は直接、BUGと契約することになります。

 

レコーディングは東京とバンコクの両方で行いました。Mayが高校に通っていたので、休暇の時期を活用して日本に呼び、学校があるときはタイに行ってというようなやり方でした。スタイリングやヘアメイクなどのビジュアルワークを試しながら、並行してプロモーションのプランニングをしていきました。

MySpaceに作品をおき、Yahoo!のトップにニュースとして掲載され、iTunes Music Storeの「今週のシングル」の過去最高のダウンロード数を記録するという流れは、前述の著作『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本』の中で紹介しましたので、そちらをご覧下さい。また、メジャーデビューまでの軌跡をまとめた映像が、こちらにありますので、興味のある方はご覧になってください。

「インターネットから彗星のごとく現れたガーリーハウスの新ユニット」、そんなイメージでスイバケは活動を本格化させていきます。次回に続きます。

 

また、スイバケの作品紹介は、ブクログにまとめています。アルバムごとのセルフレビューを書いていますので、興味のある方は、こちらからご覧下さい。

 

423()に、東京芸術大学で行われるシンポジウム『グローバル化するJ-pop』~J-MELOリサーチ2010の調査結果から~に、パネラーとして参加します。m-floTAKUさんや、NHKJ-melo」の原田プロデューサーも一緒です。興味のある方はいらしてください。

 

山口哲一(音楽プロデューサー・株式会社バグコーポレーション代表取締役)