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エンターテインメントにおけるクラウドファンディングの可能性。「評価経済」に「j-Pad Girls」で挑戦!? 〜Campfire体験記〜
コンテンツとメディアの近未来
エンターテインメントにおけるクラウドファンディングの可能性。「評価経済」に「j-Pad Girls」で挑戦!? 〜Campfire体験記〜
山口哲一(音楽プロデューサー)と、ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)によるプロデューサー・ユニット。インターネット上のソーシャル・マーケティングを実践的に研究。エンタメ・コンテンツとソーシャルグラフの関係を分析し、具体的なプロデュースワークにフィードバックする活動を行っている。2011年に『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本』(ダイヤモンド社)を刊行。 2012年4月よりトークイベント『sensor 〜it&music community』を開始。毎月完売の人気イベントになっている。 https://www.facebook.com/happydragon.page
当ブログ「コンテンツとメディアの近未来」は、2015年4月6日から新しいURL「http://blogs.itmedia.co.jp/happydragon/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。
日本でも最近、注目を集めている「クラウド・ファンディング」。ソーシャルメディアを活用して、プロジェクトの支持者と資金を集める仕組みです。
一般的な分類としては3種類、金銭的な収益を期待する「投資型」、純粋に寄付のみを行う「寄付型」と金銭以外のリターンがある「購買型」の3種類に分けられるようですが、本稿ではエンターテイメントビジネスに適合すると思われる「購買型」に絞った話にしようと思います。
既に米国では、かなり浸透しているようです。エンターテインメントを得意分野とするクラウドファンディング「キックスターター」では、100万ドルを超える調達も出てきています。
日本では、「キャンプファイヤー」が注目されています。米国に比べればまだ、規模は小さいですが、着実に「サクセス」する案件が増えているように見えます。
音楽プロデュース、アーティストマネージメントの仕事を長年手がけている立場からだと、ファンクラブの発展形のようにも見えます。
音楽の分野では、デビッド・ボーイがメジャーレーベルとの契約を解除して、ファンから事前予約のような形でレコーディング資金を集めたという例がありました。もしかしたら、キックスターター等のクラウドファンディングサービスは、参考にしているいるかもしれません。
さて、私は新しいプロジェクト「j-Pad Girls」を始める際に、日本のクラウドファンディングサービス「キャンプファイヤー」を使ってみました。
「j-Pad Girls」は、ヒット・サウンドプロデューサー浅田祐介と組んで始めた、メディアアートプロジェクトです。1人のシンガーの声や演奏、ハンドクラップ等々を1人で、ともかく<全部・自分>で楽曲をつくります。「ソーシャルメディア最適化コンテンツ」を標榜し、ソーシャル美女アーティストが次々と、ユーザーの興味を喚起する楽曲をカバーし、動画も制作し、全世界で配信リリースというのが現時点で決まっている計画です。「j-Pad Girls」のコンセプトについては、こちらのプロトタイプ動画をご覧下さい。
CATFOOD / Hatsune Miku (初音ミク) Cover by Mizking from j-Pad Girls
浅田祐介氏と私の呼びかけに、4人のアーティストが賛同して、参加してくれました。女優、タレントとしてテレビで活躍している相沢まきさん、読者モデル出身で人気ブロガーの船田真妃さん、私がプロデュースしていたユニット、Sweet Vacationのボーカリストだったタイ人のMayさん、そして、ライブアイドルとして注目されている山下瑞稀ちゃん。それぞれ、自分が歌いたかった曲を<全部・自分>でカバーします。動画も<全部・自分>で制作します。
配信リリースは9月を予定していますが、その前にプロジェクト開始を発表しました。
「j-Pad Girls」は「ソーシャルメディアがコミュニケーションの基盤になっていく、これからの時代に適応したコンテンツに挑戦する」というコンセプトですので、企画の発表には、ソーシャル・ファンディングでの支援募集が最適と考えました。
いくつかのサイトを研究して、比較的活性化していて、エンターテインメントに向いているという理由で「キャンプファイヤー」を選びました。
申し込みを行うと、キャンプファイヤー側で審査と指導があります。募集開始まで時間を要してしまいますが、適切なコンサルティングをしてくれるなと感じました。リターンの設定や、説明の仕方などにアドバイスがもらえます。手数料としてサイト側が取る20%は、少し高い印象があったのですが、ここまでケアをするのならば納得できるなと思いました。
募集開始に際しては、情報発信は参加してくれるアーティストや自分を含めたプロデューサー陣のツイッター、ブログ、フェイスブック等の個人からの発信が全てです。
キャンプファイヤーは、希望額を下回る金額しか集まらなかった場合は、全額が返金される 「all or nothing」方式なので、希望額の設定が重要です。今回は、プロデューサー、クリエイターは成功報酬型になっているで、実費的な経費の一部をクラウドファンドで賄おうと考えました。他のプロジェクトの様子を見つつ、30万円を考えていたのですが、リターンの設定との内容で14日間しか募集期間ができないことがわかり、直前で20万円に引き下げました。
支援者にお渡しする「リターン」は4種類。お礼メールと活動計画をお伝えする500円支援。作成した作品の一部を差し上げ、完成映像にお名前をクレジットする3000円支援。特製ポスターをプレゼントする1万円と撮影に立ち会ってレポートを書いていただく5万円と4段階で用意しました。
個々のプロデューサーは実績がありますが、プロジェクトとしては、プロトタイプ動画しかありません。受け入れてもらえるのかどうか心配でしたが、杞憂でした。募集開始から19時間で設定額の20万円をクリアーしたのです。その後の支援は増え続け、7月22日の段階で40万円超の金額が集まっています。本当にありがたいことです。
多くの支援者(キャンプファイヤーでは「パトロン」と呼ばれています)は、コメントを残してくれます。フェイスブックのアカウントと紐づいている方も多く、どういう気持でお金を出してくれたのがわかります。そして、プロセスが全て、可視化されている、ソーシャルメディア上の不特定のユーザーの目にさらされていることに緊張と心地よさを感じました。
長年、プロデューサーとしての仕事をしてきていますが、ユーザーに直接、「私の企画にお金を出して下さい」と話しかけたのは初めてです。総合プロデューサーとして「プロジェクトオーナー」になった以上、「キャンプファイヤー」での反応は、自分への評価になります。岡田斗司夫さんが提唱される「評価経済」に足を踏み入れた気がしました。「評価経済」理論は、時代の変化を象徴する「寓話」と私は捉えていますが、「寓話」だけに、真理を突いているのかもしれません。
今回、募集を始める前には、支援する側の経験もしてみました。自分の興味のあるプロジェクトの「パトロン」になって支援してみました。少額だったとしても自分が「出資」したプロジェクトの進捗には興味が沸きます。
クレジットカードを持っていれば手軽に支援することができます。Paypalのアカウントを持っていれば、超簡単です。「キャンプファイヤー」は500円以下の少額募集を義務づけているので、気軽にプロジェクトに関わることができるのが魅力だなと思いました。
ソーシャルメディア時代の新しいコミュニケーションの一つ。クラウドファンディングを体験してみませんか?そして、私のプロジェクトにも興味をもっていただけたら嬉しいです。
是非、キャンプファイヤーのプロジェクトページをご覧になって下さい。7月23日(月)深夜24時が〆切です。宜しくお願いします。
「j-Pad Girls」東京から世界に発信するメディアアート・プロジェクト
プロジェクト立ち上げ時に、個人ブログに「決意表明」を書きましたので、興味のある方はこちらもご覧下さい。
「j-Pad Girls」は、多くのアーティストに協力していただいて、作品を発表していく予定です。暖かく見守っていただけると、そして、少しでも関わったいただけると、とても嬉しいです。
山口 哲一
(音楽プロデューサー・株式会社バグコーポレーション代表取締役)
<告知>
本ブログのプロデューサーユニット「happy dragon」は、4月からマンスリートークイベントsensor 〜 it&music community を始めました。注目のゲストを呼んでのトークが好評で、楽しいイベントになっています。興味のある方は、足をお運び下さい。直接、お話しする機会にしたいと思ってます。
『sensor ~ it&music community』peatix page
(7/23のvol.4 『ソーシャル・ミュージック会談 ~ 次世代音楽のビジネスモデルについて本気で考えるの巻』は既にSold Outです。すいません。)