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病院で死ぬなら私は是非ここで!

病院で死ぬなら私は是非ここで!

嶋田 淑之

戦略経営協会理事・自由が丘産能短大教員・文筆家。 「不変と革新」「イノベーション」をテーマに新聞・雑誌・オンラインビジネス情報誌などで執筆活動を展開。国内外のイノベイター200人以上を取材し、記事化。「ビジネスメディア誠」でも2007年末より連載中(=「嶋田淑之の“この人に逢いたい”」、「あなたの隣のプロフェッショナル」)。

当ブログ「嶋田淑之の“不変と革新”ブログ」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/hideyuki-shimada/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


以前、房総半島の鴨川シーワールド近くにある亀田メディカルセンターについての記事をかかせていただきました。

そこでは、同メディカルセンターの「主客一如」にフォーカスしましたので、今回は、「不変と革新」についてご紹介したいと思います。

 

下記は、フジサンケイビジネスアイで、私が担当した全44回の連載の中の、第39回として、2008年8月19日に掲載されたものです

 

 

現代における「良い病院」とは

 

現代日本をめぐる問題のひとつに病院の経営難がある。

利用者(患者やその家族)にとっては、自分の身に直接ふりかかる問題であり、決して他人事ではない。

 

そうした環境を背景に、最近では、病院経営の在り方を説く書籍が多々発行されているようだ。

 

しかし、どちらかといえば、合理化とかコスト削減などのキーワードが目につき、利用者の視点に立って書かれたものは、あまり見かけない。

 

そして実際、利用者、特に入院患者に対し、不安や緊張、我慢や諦めを強いる病院が、いまなお存在するのは残念なことだ。

漂う異臭、冷たく無機質な建屋、不十分な情報、娯楽・潤い・自由のなさ、味気ない食事、そして、プライバシーの欠如。

 

一個の人格として尊重されない、時として、それまでの自分の人生を否定されたかに感じられる処遇。

 

質の高い医療サービスで患者を病の苦しみから解放するという「ミッション」は「不変」としつつも、上記のような側面は、利用者の視点に立って「革新」すべきではないか。そう思っていた矢先、先日、それを最高水準で実現する稀有な事例に出逢った。千葉県の高名な総合病院。

 

ここでは、「顧客第一主義」を謳う創業の理念に基づき、あらゆる面で、利用者の利便性と快適性の追求が最優先されている。

医療レベルの高さは言うに及ばず。建屋の構造・デザインから食事の質、利用者への情報公開やプライバシー保護など業務プロセスの細部にまで、それは徹底しており、全スタッフが、「誇りと自覚」をもってそれを運用している。

 

南国リゾートを思わせるオーシャン・ビューの立地も開放的な気分を高めてくれ、その利便性と快適性は、まるで一流ホテルで一流の医療サービスを受けているかのようだ。しかも、価格はリーズナブル。

そのせいであろう、利用者が選ぶ良い病院のランキングでは、総合成績で常に全国のトップクラスに名を連ねている。

 

ここでは、「顧客第一主義」の理念を「不変」の対象として貫徹するために、スタッフの教育に多大なエネルギーを投じている。

それが結果として、全スタッフの「自己革新」を促し、病院としての「不断の自社革新」のダイナミズムを生んでいる。

そして、それが同病院の「ミッション」のより高次元での実現を可能にしているのである。

 

「病は気から」と言うが、医療機関としての「ミッション」を果すためには、患者やその家族が明るい希望をもって、極力、不安な緊張のない、快適な生活を送る中で、病と向き合える環境作りこそが、今、求められているのではないだろうか。