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「マトリックス」のウォシャウスキー兄弟が新作を

「マトリックス」のウォシャウスキー兄弟が新作を

平沢 薫

映画ライター、編集者。仕事のためと思って始めたハリウッド・ニュース・ウォッチが気づけば趣味のひとつに?

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 あの「マトリックス」三部作のウォシャウスキー兄弟が今、新作映画を撮影中。今回はいわゆるSFではなく、原作は現代文学。日本では01年のブッカー賞候補作「ナンバー9ドリーム」が翻訳されている英国作家デヴィッド・ミッチェルの04年の小説「クラウド・アトラス(Cloud Atlas)」の映画化に挑んでいる。

 とはいえ、あの兄弟が選ぶんだから、原作も普通の小説ではない。19世紀の南太平洋、30年代のベルギー、170年代のカリフォルニア、21世紀初頭の英国、近未来の韓国、そして遠い未来と、時代も場所も異なる6つの物語がそれぞれに交錯していくという凝ったもの。映画の演出もユニークで、出演者たちは、複数の物語でいくつかの異なる役を演じるという。

 それをバラしたのは、本作の出演者のひとり、「テンペスト」の英国俳優ベン・ウィショー。「誰もが少なくとも3役は演じてるんだ。大きい役もあれば、小さい役もある。僕は1930年代の英国人ミュージシャンと、1970年代のアメリカの女性、現代の看護人を演じていて、いちばん小さな役ではエキストラのようなことをやってる」。

 キャスティングはかなり豪華で、ウィショーの他に、「ラスベガスをぶっつぶせ」のジム・スタージェス、「天使と悪魔」のトム・ハンクス、「噂のモーガン夫妻」のヒュー・グラント、「X-MEN」シリーズのハル・ベリー、「キャプテン・アメリカ」のヒューゴ・ウィービング、「ハリー・ポッターと死の秘宝」のジム・ブロードベントといった顔ぶれ。

 微妙なのは、ウォシャウスキー兄弟といっしょに監督を務めるのが、トム・ティクヴァだということかもしれない。98年の「ラン・ローラ・ラン」はユニークだったが、09年の「ザ・バンク 堕ちた巨像」、06年の「パフューム ある人殺しの物語」はビミョーなような気も? しかし、ビジュアル志向の作風は、ウォシャウスキー兄弟と似合いそうにも思われる。それに、この形式の作品なら、時代ごとに監督を変えて、あえて違うタイプの映画にするつもりなのではないだろうか。

 ともあれ、「マトリックス」の興奮を体験したことがあるなら、ウォシャウスキー監督の新作を見ないわけにはいかない。現在はスコットランド、スペイン、ドイツで快調撮影中。ワーナー・ブラザーズ他の製作で、2012年全米公開予定だ。