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北欧モノのリメイクなら、コチラもお忘れなく

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平沢 薫

映画ライター、編集者。仕事のためと思って始めたハリウッド・ニュース・ウォッチが気づけば趣味のひとつに?

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 日本人にとって、アメリカ人による他国映画のリメイク作がオリジナル作よりも魅力的になることは、まずないんじゃなかろうか。(アメリカ人にとっては自国語で見られることに意味があるのかもしれないが。)

 近年では、少年の切ない初恋を描くスウェーデン映画「ぼくのエリ 200歳の少女」(08)を「クローバーフィールド/HAKAISHA」のマット・リーヴス監督がリメイクした「モールス」(00)が、あのすばらしい女優クロエ・グレース・モレッツをキャスティングし、そのうえオリジナル作に近い脚本でリメイクしても、オリジナル作の魅力には到達できなかった。
 
 が、これは例外になるかもしれない。どちらも日本ではまだ放送中なので、最終的にはどうなるか分からないが、今のところ、米TVシリーズ「THE KILLING〜闇に眠る少女」は、デンマークのオリジナル作「THE KILLING/キリング」よりも魅力的に見える。

 その魅力のポイントは「映像」だ。物語は、今のところ細部に違いはあっても大筋は同じなのだが、その「映像」がまるで違う。米版の映像は、物語だけでなく、その街の空気を描いていくのだ。

 オリジナルの舞台はデンマークのコペンハーゲン。米版はこれを北部の街シアトルに移し、この土地の空気の冷たさ、湿り気を描く映像や、その土地の雰囲気を伝える遠景の映像が、随所に挿入されていく。その風景、とくにその色調は、ひとりの少女の死を巡る悲劇的な物語とは対比的に、常に静謐で冷たく美しい。映像についてのコンセプトが異なるだけでなく、その映像の質が高いのだ。
 
 そう思ってスタッフを見たら、米版の監督には「太陽と月に背いて」「秘密の花園」などで知られるポーランド出身監督アニエスカ・ホランドも参加していた。そりゃ映像がいいはず。製作総指揮陣は、アメリカ人とオリジナル版のデンマーク人の混合スタッフ。これも効果的だったのかもしれない。

 考えてみればあたりまえのことだが、リメイクにも、オリジナルを超える方法はある。この2作は、そんなことを感じさせてくれる。もっとも、最後まで見たら物語はオリジナル版のほうがよかった、なんてこともありそうな話だがw




「THE KILLING 〜闇に眠る美少女」
http://tv.foxjapan.com/crime/lineup/prgmtop/index/prgm_cd/1336


「THE KILLING/キリング」
http://www.superdramatv.com/line/the_killing/