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【問い】アイデア出しに向いている時間帯というのはありますか?時間帯というより、環境や雰囲気に依存するかもしれませんが。。

【問い】アイデア出しに向いている時間帯というのはありますか?時間帯というより、環境や雰囲気に依存するかもしれませんが。。

石井 力重

アイデアプラント 代表。著書に『アイデア・スイッチ』。専門領域は「創造工学」。クリエイティブ・リーダを助ける道具を作っています。

当ブログ「力重の「ブレインストーミング考」」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/ishiirikie/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


アイデア発想の道具を作る職人の石井力重です。

友人知人からいただいたアイデア出しに関する困りごとや質問に答えてみようという試み、久々にトライしてみます。 

 問い

アイデア出しに向いている時間帯などありますか?時間帯というより、環境や雰囲気に依存するかもしれませんが。経験的にご存知でしたら教えてください。 


 回答

興味深い問いをありがとうございます。 

 まずは周辺的なところから回答を述べたいと思います。 

創造思考の状態に入るのに、どれぐらいの時間を要するかは人により違いますが、ある研究チームの調べでは「8分」とありました。これの正統性をつきつめる議論するのは労多くして益少なそうだと思いますが、8分、という時間は一つの創造的な思考状態を湧き立たせるための時間として一つの目安として私は活用してみています。

Creativeな考え方ができない―、という時には、8分間、アイデアを出すための作業に専念します。その際には、ツイッターやFBやメールや電話を触らないようにします。物理的に離れてしまうのがもっとも簡単です。

そのための方法として「8分Walk」という方法をとっています。

人が歩いて8分というのは600メートルの距離なのですが、そうした時間を過ごせるように、およそ600メートルの静かに歩ける道を職場や書斎の近くに探しておいて、そこを行きしな、アイデアを考えながら歩きます。ポケットにはメモ帳とペンと120円のコインを入れるぐらいで。そして歩きながら発想します。他に特に積極的に割り込んでくることもない状況下で発想することぐらいしかないので自然と専念できますし、歩くことで血流や酸素吸入量を増やすことができ、思考もまわり始めます。そうすると行きしなで大体想像力が回転し始めます。

帰りは別のことをしてしまうのはもったいないので、帰りも発想していきます。そうすると、アイデアが結構湧いてきて、机に向かいたいと思うことが多いです。メモをさっと書くこともあります。なお、600メートルというのは、電柱の20区間に相当しますので旅先の知らない街に滞在しているなら宿から電柱20本目あたりまで歩くだけでもいいでしょう。昔、測量の作業を手伝っていて、気が付いたのですが、電柱はざっくりいって30メーターおきにたっています。1つの目安ですが。 

さて、発想に向く時間はいつか?という本来の問いに戻ります。 

先の展開からすると、外を歩くのに良い時間、というのが1つの可能性になります。

通勤通学の多い時間帯は歩きにくいのでそれを避けて、朝6時、10時、14時、といったあたりが良いでしょう。発想し始めることができたらしばらくは作業時間がとれるように、次の予定(例えば昼飯)まですこし離れている時間がいいでしょう。また一般に、オフィスの開いた直後1時間や定時の前後1時間は頻繁にメールや電話が入ることもあるので、その辺は物理的にインプットから遠ざかるのは難しいので避けたほうがいいでしょう。 

さて、こういうアプローチではなく、例えば執筆業やSOHO事業者で、ずっと家にいるし、時間も自由に使えるとなれば、どうでしょうか。

 起き抜けのクリアな頭がある早朝、もいいでしょう。できれば起きてすぐにその日の用意をはじめないといけないような時間スケジュールにしないで、その時間よりも90分ぐらい早く起きて、朝のクリアな頭の能力いっぱいで思考作業をすることで、一日の生産物を最大化するもの良いでしょう。 また、人によっては暗くなってきてようやく集中できる、という人もいます。

夜が深くなってくるほど、頭がさえてくる、というのは、クリエータ、アーティスティックな仕事をしている人には良くみられることです。これは、例えば、ネットになじみ深い人でも深夜3時を過ぎると、多くの人は寝静まり、インプットも大体枯れてきて、それそろ、その人にとって「世界が静かになってきて、落ち着いて内省できる」時間になるという側面があります。
また、新しいアイデアというのは少し、判断力のガードを下げてもらってようやくその隙間をかいくぐって出てくるようなところもありますが、「夜中」というのは判断力のガードが下がる効果として発露することが人によってはあります。夜書いた手紙は投函するな、という言葉が示す通りです。

アイデア発想には、判断力の強いガードがすこし弱まって持った方が良かったりします。「夜中」という環境の本質を拡張していえば「判断力の固いガードが下がる時間帯」とも言い換えられますが、これを使う、という方法も、人によってはありでしょう。

 なお「判断力の固いガードが下がる状況(空間・時間)」に自分を移動させてやればよいのだ、という観点も出てきます。自分の判断力が甘くなる時というのを自分で観察し、いくつか見つけることができたら、その状況に自分を投入してやることで意図的にアイデア創出活動を促進することもできるかもしれません。 

人によっては「高速道路の長距離運転をしている時」とか「楽器演奏のための準備作業をしている時」とか「封筒に書類を入れる作業を延々としている時」とか「ウォーキングをしている時」ということを上げる人もいます。

歩くというのは、そういう意味でも良いでしょう。私は広瀬川の遊歩道などでの「ウォーキング・ブレスト」をよく薦めたりしますが、こうした背景からのことです。 

一般的ではなく、私個人の自己観察で気が付いた時の事なのですが、「新幹線の混んでいる座席に座っている時」が、アイデアを生み出しやすい状態になっている、と気が付きます。たぶん、これしかできない、という状態になっていて、指先だけは使えて、でもネットはあまり快調ではない、という環境がそうさせるのではないかと思っています。一方で快適な車中ではあまり発想が出ません。田舎ののどかな車窓をゆったり座って旅している時にはあまりアイデア発想的なことはわき起こらず、旅情をただ楽しんだりしているだけになります。 

最後に、これらの時間帯の話を超えて、もうすこし仕事術的な話をします。

私は「閉眼の30秒」をお勧めます。 

 物理的に30秒間目を閉じます。  言いたいことは、こうです。人間の思考状態と脳が持つ電位(脳波信号)にはある程度関係性があります。普段は忙しく思考する状態では早い周波数の波であるβ波が支配的です。少しゆっくりした波であるαはリラックスにした状態に多く出ます。もっと低い周波数の出現は瞑想状態に近かったりします。 閉眼は、脳波におけるα波成分割合を高くする効果があります。ごく簡単な脳波計でのスマフォアプリを仙台では作ったりしていますが、実際に閉眼することでα波の数値は上がることも体感的に分かります。 閉眼することで落ち着いた脳の活動状態に遷移する可能性があがり、落ち着いていくことでよりも広い観点で多様的な発想をしはじめられる可能性があります。 

タイマーをちょっとかけて30秒ほど、閉眼してみる。これが最も手軽にできる発想スターターではないか、と私は考えます。

カフェや街の雑踏で人を待つときに、30秒目を閉じてみると、世界にはさまざまな音がある音に気が付きます。不思議と目を開けている時には気が付かなかったような音が、駅の中で定期的になっていることに気が付いたりもします。観察力も創造力の始動をプッシュしますが、普段目を閉じないところで閉じてみると意外なインプットを得て発想が刺激される、ということもありそうです。 

もう一つは、締切の前後30分の「強制集中ゾーン」をお勧めます。

締切、というのは、イマジネーションの力を引き出す一つの要因です。これを使います。締切がなければコワーカーに宣言して、早めに自主的締め切りを設けます。その締切直前に集中力が立ち上がります。できれば、その回転数のおいしいゾーンをフルに使うために締切直後(たぶん、まだ、完了できていない状態)の時間帯も、作業に没頭できるように、スケジュールを設計します。その集中力でもっと前に発想できたらなあ、とレポート提出の1時間前に感じたことがありませんか。あれを、ずっと早い段階で自分で作り出す、そんな感じです。


長くなりましたが、ほんの一部でも役に立つものがあれば幸いです。


(蛇足)

アイデア発想法のことで、なにか、知りたいことありますか?石井ごときでお答えできることは少ないですが、誠ブログのエントリーとして、質問を引用しながら、僕なりに回答します。

ご質問があればFacebookの以下の記事のコメント欄にお寄せください。


力不足でうまくお答えできない問いもあるかもしれませんがお許しください。