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「HBSミーツ東北」第四日目:学生が南三陸「小野花匠園」にて事業戦略を提案する

「HBSミーツ東北」第四日目:学生が南三陸「小野花匠園」にて事業戦略を提案する

山崎 繭加

ハーバード・ビジネス・スクール日本リサーチ・センターのシニア・リサーチ・アソシエイト。主に日本企業やビジネスリーダーに関するケース作成を行っています。

当ブログ「ボストンと東京のあいだで」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/mayukayamazaki/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


一つのチームが雪の果樹園ではしゃいだり、りんごの美味しさに感動したり、福島で生きる人たちの思いや葛藤そこからの奮闘についての話をきいてしみじみしている間、あと半分の15人のHBSの学生と竹内弘高先生は、南三陸の「小野花匠園」で時を過ごしていた。

東日本大震災の直後から現地入りし、このところは南三陸を拠点として活動している長年の友人(盟友?)佐野哲史さんが、小野花匠園とのご縁を作ってくれた。佐野さんは、被災地で活動を続ける中で、東北の人たちが自ら立ち上がってこその復興であり、自分はそれを応援しエンパワーする立場に立とう、という思いにいたり、「復興応援団」を創設。

主に南三陸のきらりと光る起業家たちと一緒に、東京から恒常的に人がやってくるためのボランティアツアーの企画をしたり、事業プランを考えたりしている。小野花匠園は、復興応援団とがっつり組んで仕事をしている菊とトマトの農家である。


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(夏ごろの小野花匠園の菊畑)


小野花匠園の社長、小野政道さんは、いわゆる一般的な農家のイメージからは、かなりかけ離れている。背がすらっと高く、茶髪で、おしゃれ。トラクターに乗って汗を流しているというよりは、スタジオで音楽でもつくってそうな。

ちなみに、小野さんの同級生で復興応援団とも仕事をしている南三陸の漁師、高橋直哉さんも、タイプは違えど大変なイケメンであり、佐野さんは「おしゃれ農家とイケメン漁師」と二人のことを呼んでいる。南三陸ってイケメンぞろいなのかな。


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(数日後にあったイベントにて。真ん中が小野さん、右が佐野さん、左が漁師の高橋直哉さん)


若いころはどうしても農業がいやで逃げ出したりしていた、というこのおしゃれ農家が、本当にすごいのだ。震災で地域のほとんどの人が家を失った。職を失った。

ならば自分が雇用を生み出さなければいけない、でも農協に提示された価格で卸す従来型の農業ではだめだ、と思い、コンビニの販路を直接交渉で自力で開拓。

そこで見えてきた消費者のニーズに合わせて栽培の方法や種類を変えたり、需要が増えて価格が上がる時期にあわせた供給をできるようにしたり。付加価値の高い甘いトマトをつくってブランド化をはかったり、さらにオンラインで直販を拡大したり。

小野さんの心意気とビジネスセンスに惚れ込んだ佐野さんが、恒常的に東京や他の地域から人がボランティアとして小野花匠園に訪れ、開墾や農作業の過程を一年を通じて手伝うというツアーを企画した。労働力とファンを一挙両得で増やしていく作戦、とでも言おうか。

小野さんのFacebookには、日本各地からやってきた人たちの笑顔の写真がひっきりなしにアップされている。私も復興応援団のツアーに参加させていただきファンになった一人だ。

★★★


私は福島にいたのですべて伝聞ですが、外は雪が降りしきる中、トマトのグリーンハウスで、HBS一行は、小野さん、佐野さんとあたたかく濃密な時間を過ごしたらしい。もともとのこの日の目的は、HBSの学生が事業についての話を伺い、その場で議論をして、事業についての提案を行う、というもの。

15人の学生は1時間でしっかり議論し、15人で意見をまとめて、ブランドやチャネル戦略のことなど、ばっちりプレゼンした。「たいしたもんだったよ、あいつらやっぱりすごいな」とは竹内先生の言葉。


たまたま数日後小野さんと復興応援団の東京でのイベントでお会いする機会があり、こんなことを言ってくれた。

「学生さんたちが言ってくださったこと、すごくうれしくて。すべてメモしたので、それを毎朝見返して、今後やるべきことの指針にしているんです。」


小野さんの長男で、小野花匠園のブランドトマト「はるちゃんトマト」の名前の語源でもある、はるとくんも、とってもうれしかったようで一日中そばにいて、グリーンハウスの中をぐるぐる走り回ったりしていたそうだ。

そして、はるとくんは将来何になるの?という学生からの質問に「社長だよ!お父さんと一緒!」と答え、6歳にしてつわものだらけのHBSの学生を感嘆させた、とのこと。


なお、福島組は雪の影響をほとんど受けずに18時すぎには仙台に帰り着いたが、南三陸チームはどはまりして、5時間半の長旅となった。でも、あなどるなかれ。元気一杯で、5時間半、寝る人はほとんどおらず、歌ったり、ゲームしたり、ノンストップだったそうだ。竹内先生はこれについても「やっぱりすごいな、あいつら」と言っていた。はい、すごいです。本当に。

小野さん、佐野さん、本当にどうもありがとうございました。応援の輪は世界にも広がってます!

★★★

次回、まとめをしまして、長々と書き綴ってきた「HBSミーツ東北」も終わりです。