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場当たり的な対応は止めよう!-TPPの意味を考える。
マイク丹治の「グローバル・アイ」
場当たり的な対応は止めよう!-TPPの意味を考える。
セールスジャパンという、中小企業・ベンチャー企業向けの営業代行・販路開拓の会社で会長を務める傍ら、いくつかの会社の顧問に就任しており、更に政策シンクタンク・構想日本で政策提言を行っています。
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今日は、ちょっと他の場所で打ったものを貼り付けているので、字体が明朝で失礼します。
インフラ・プロジェクトの政府営業はどんな効果があるのか?
様々な政策が議論されている。だが、どうも違和感を覚えるのは私だけだろうか?例えば、海外向けのインフラ・プロジェクトへの参画。もちろん鉄道等における日本の技術水準は、まだ世界一だろう。そしてその輸出を実現すれば、それぞれの産業の周辺にも需要が広がり、日本の経済の浮揚効果もあると思う。だが、このような経済協力がどのような形で決まっているのか?
どうしても価格競争は避けられないし、同時に政府が関与することで、様々なODAなどの支援を求められる。結果として本当にプラスになるのか?今の所得水準の高い日本の生活を維持することが前提だとしよう。そして、既にどう考えても支払い能力のない年金を前提にした経済を念頭に置く。すると、明らかにコストの安い海外の競争相手と、いつまでも価格競争を続けることが、本当に日本の為になるのか?
逆に高い品質をベースに、多少高くても価格では競争しないで、質を強調して世界に貢献する方が良いのではないか?或いは、安易に政府援助で事実上インフラを提供することで、結果として協力先の国の自立につながらないやり方よりも、違うやり方があるのではないか?
直接金融を妨げているものは何か?
証券税制における優遇の廃止の話がある。一方で年間100万以下の投資に関しては、何らか優遇を残すそうだ。そもそも証券税制の優遇は何が目的だったのか?金融ビッグバンで、日本の銀行中心の金融市場を改革し、直接金融の比率を上げることだったのではないか?とすれば、100万円以下の投資等に優遇を残すことがどれだけの意味があるのか?
相変わらず、元本保証型の投資にしか関心のない、貯蓄性向の高いわが国の家計の投資行動は何が原因なのか?国債大量発行と、年金の積立不足によって先が見えない不安が、助長しているのではないか?そもそも間接金融中心の金融システムは本当にいけないのか?一時は成功モデルのように見えた欧米型の金融システムも破たんして、解決の糸口は見えないではないか?
もっと言えば、そもそもリスクを冒して投資するような余裕のある家計が一体どれくらい日本に存在するのか?結果平等を追い求めて、1億円以上の年収のある経営者は悪、という風潮で、直接金融を担う投資家など育つのか?また、投資の対象として恥ずかしくない投資機会は本当にあるのか?
全てがチグハグで、根本的なところについての理念も対策もないまま、場当たり的に様々な政策が出て来ているとしか思えない。杉並区で、新区長が前区長の制定した多選禁止条例を廃止するという。前のものは全て変えたい、というだけの意味ない政策としか思えない。そろそろ本当に今ある現状をしっかりと把握して、10年、20年の計で、我が国の行く末を見渡す必要がある。いや、今これを怠れば、それこそ真の意味で禍根を残すことは間違いない。
TPPはどのような影響をもたらすか?
TPPの話がある。元々自由主義論者、資本主義論者の私は、これに正面切って反対するつもりはない。だが、良く考えてみよう。今農業を自由化すれば、いかに政府が政策的に尽力しても、間違いなく海外の農産物が我が国の家庭を席巻することになる。これまで改革を怠り、減反と補助金漬けで我が国農業の生産性向上を実現してこなかった咎だ。どんなに努力しても、農業の競争力が相応のレベルに達するのは10年、20年かかるはずだ。
もちろんそれでも安い農産物が入れば良いという発想もある。だが、今の世界の情勢を見てみよう。これまで世界の警察だったアメリカも、これに並ぶ力を持っていた欧州も、今や政治面でも、経済面でもガタがきているのは明白だ。一方で、世界中で、おそらく戦争の世紀と言われた20世紀よりもはるかに多い紛争が毎日のように起こっている。
我が国を取り巻く状況も、北朝鮮の存在に加え、弱体化した米国を横目に、中国やロシアが様々な仕掛けをしてきている。そんな中で、我が国は自国を守っている米軍にただ出て行けと言うばかりだ。国家の基本的な機能である自衛ということを全く考えず、平和なのは当たり前というような痴呆状態に陥っている。
そんな環境下で、国民の食事を海外に委ねて良いのか?まずは、自国の防衛をきちんとできる体制を作り上げる必要はないのか?同時に最低限自国の国民を食べさせることのできる農業の基盤を生産性向上を含めて実現し、その上で自由な貿易に追随しても良いのではないか?確かに、今乗り遅れれば国際的に厳しい情勢に置かれるのは事実だ。でも、では加盟国は日本を命をかけて守ってくれるのか?
国家としての役割は何か?
1990年にベルリンの壁が崩壊して、東西冷戦構造という我が国の平和と経済での独り勝ちを支える仕組みが無くなった。つまりゼロサムになったのだ。それにも関わらず、バブルの処理に追われ、国としての根幹にかかる防衛や農業といった分野で、世界的な情勢分析もなく無策であったことが、今の現状を作りだしている。
今こそ、幻想から覚めて、世界の現状、その中で自国の置かれた状況を正確に認識・分析する必要があるのではないか?そして、世界に貢献しつつも、自国と自国民を守るという国家としての最低限の責務を果たすために全力を挙げるべきではないか?残念ながら、世界が皆助け合って平和な国際社会を築くという夢は、まだまだ幻想でしかないのだから。