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上海雑感

上海雑感

マイク 丹治

セールスジャパンという、中小企業・ベンチャー企業向けの営業代行・販路開拓の会社で会長を務める傍ら、いくつかの会社の顧問に就任しており、更に政策シンクタンク・構想日本で政策提言を行っています。

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先週は、ほんの1-2日だが久しぶりに上海へ行ってきたので、その感想を含めてここ数日の日本の状況についてコメントする。

まず、上海。前回行った時も既に浦東地区はかなり開発が進んでいて、外灘に素敵な西欧系のレストランなどが出来ていたので、20年前の時代との大きな変化を感じた前回と比較すれば、今回はあまり変化は感じなかった

ただ、逆に少し時間があったので、南京東路などを徒歩で歩くことが出来て、思ったほど豊かになっていないな、と感じたのが今回の短期滞在だった。確かに、ブランドショップなども沢山並んでおり、20年前ごろに初めて出来たマクドナルドやKFCが、随所に店を構えているが、服装は相変わらず質素だし、大きなビルの裏側では、依然とあまり変わりない住宅街が並んでいる。

要は、国全体ではかなり豊かになったが、基本的に階級社会で、庶民も一定程度経済発展の恩典を受けているが、それを超える、金融用語で言えばupsideは、一部の特権階級に独占されているのだと思われる。また、昔は結構タクシーで中国語を話せなくても何とかたどり着いたが、逆にタクシーの数が増えたせいか、香港同様英語が通じにくくなっているとも感じた。

急速な発展を続ける大国の、バランスが十分取れていない部分だと思うが、昨今発生している汚職の摘発なども含めて、国内統治を安定化させる動きとの関係で、不必要に海洋進出などで国際社会において摩擦を起こさないように願いたい。CCTVでは、常に戦前の日本に関する様々な記録報道が行われており、今回も大戦の日米の太平洋争奪について、米兵への取材に依拠した形で流されていた。

一方、オリンピック開催決定で、相変わらず浮かれている報道が続いている。プレゼンが良かっただの、戦術が奏功しただの、意味のない自画自賛は辞めた方が良い。そもそも開催地決定は戦いではなく、日本が様々な問題を抱えつつ、全力を挙げて平和の祭典のために頑張ります、ということを示したことに対して、世界の国が理解を示してくれたということであって、まずは謝意を表するのが日本の文化のはずだ。そして責任を持ってこれを完遂することが重要であり、浮かれている余裕などない。

ましてや、これはビジネスではないし、またただ単にインフラを整備する事業でもない。そんなことだけに関心を煽るような報道はもってのほかだ。前回も触れたが、是非外見や先進性にこだわるのではなく、世界中の人々の和につながるような、参加した人々、放送で見た世界中の人々の心に残る素敵なオリンピックにしてほしい。

閑話休題。オリンピックの経済効果を期待してか、消費税の引き上げも進められそうだし、そのような積極姿勢を反映して集団的自衛権の議論にも拍車がかかっている。確かに、自国を自ら守る仕組みがないのはおかしいし、守っていただいている米軍に対する攻撃を阻止できないとすれば、米国との関係で不平等だろう。

だが、政府解釈が言うように、国連において集団的自衛権が認められるとしても、この日米のような関係は本来の対象なのだろうか?確かに、政治的にも、文化的にも日本は米国との関係は深いし、防衛は米国に依存しているが、では、この関係が国連における集団的自衛権の対象かというと、誰かこれを確認したのだろうか

そもそも、憲法解釈が、首相が代わり、内閣法制局長官が変わることで、突然安易に変更になるとすれば、そのこと自体が重大な問題だと思うが、それ以前に、上記の点を再度確認すべきではないか、という気がする。繰り返しになるが、日本は国連においては敵国条項対象国だ。自分たちの都合のよいように、国連の考え方を解釈できると考えるのは、ちょっと甘いのではないか?

そして、それ以前に何故今集団的自衛権なのか?米軍が、突然危険な立場に置かれるようになったという状況ではないと思うのだが。そして、確かにわが国の国民の命を守るに当たって米国は大事な役割を果たしてくれているが、だから集団的自衛権という前に、まずは他国に防衛を依存しているという異常な事態をどう考えるかという根本論から始めるべきではないか?どうも話の順序も逆になっているように感じて仕方ない。