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「日本企業」という考え方の不思議
マイク丹治の「グローバル・アイ」
「日本企業」という考え方の不思議
セールスジャパンという、中小企業・ベンチャー企業向けの営業代行・販路開拓の会社で会長を務める傍ら、いくつかの会社の顧問に就任しており、更に政策シンクタンク・構想日本で政策提言を行っています。
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ちょうど金曜日の日経新聞の朝刊のトップが、アジアの投資規制緩和に関するもので、これが日本企業の進出にメリットになるのでは、というものだった。
そこでふと不思議に思ったのが、少なくとも欧米で海外の経済情勢を語る時あまり自国企業の利益という観点で表現したのを見たことがないな、というものだ。もちろん例えば日米間で繊維とか自動車とかの議論がされたことはあるし、米国の自動車産業を守るために米国政府が動いたのも事実だ。だが、これらは貿易摩擦であったり、非関税障壁であったりするもので、自国における自国の産業を守るためであり、海外における自国企業というコンセプトではないような気がする。
これに対して、わが国の報道では、毎日のように諸外国の制度が「日本企業にとって」どうなのか、という議論が行われているように感じるのだ。そして、これは全くの感覚論だが、同じことがどうも中国や韓国についても言えそうだ。どうも東アジアの我々の文化圏は、企業を自国企業とそれ以外というように分ける社会的認識があるのではないかと思われる。
でも、考えてみればこれは不思議なことだ。そもそも日本企業って何だろう。もちろん企業にとっても国籍のような考え方は成り立つから、日本で日本法に基づいて設立された会社は日本企業と言えるかもしれない。或いは、そもそも日本で事業活動をしている会社は日本企業と言えるかもしれない。日本人が経営している企業は日本企業かもしれないし、日本人が大多数の会社は日本企業かもしれない。では、例えば欧米の企業の日本子会社は、日本企業なのか?
企業というのは、一人ではできない事業を人モノカネを集め、一つの法的主体として遂行するための存在であり、その目的は、一つには株主への収益還元、更には雇用の確保、そして顧客への製品・サービス提供、更には企業が存在するコミュニティへの貢献などである。日本人が設立し、100%日本人を雇用し、顧客もすべて日本国内で、日本以外に拠点はないような企業は、確かに日本企業と言えるだろう。だが、それこそ記事が指摘しているような投資規制の対象とは、日本の企業が海外に投資することであり、この場合投資形態によって異なるとは言っても、株主も現地投資家がいる可能性はあるし、従業員も日本から何人か送るとしてもあとは現地だろうし、部品調達だけが目的でない限り、顧客も現地にいる可能性はあるし、その物理的存在も現地なのでその社会への貢献は求められる。これを日本企業というのは何故なのか?
部品調達などであれば、確かにそれを日本に持ち込むのが目的だからその限りにおいて日本との関係性は深い。また、経営戦略などは日本の本社で立案しているとすれば、日本との関係はあるだろう。更に言えば、現地で収益が上がれば、それが日本に還元されるというのもそうだろう。だが、大事なことは、企業はその活動する地域地域において、その社会と密接に関係しているということだ。だから、その地域地域の仕組みの中でどう溶け込んでいくかが重要であり、そのことに国境はないはずだ。それを日本企業というコンセプトで捉えるところに、現地軽視というかすべて日本のためというような狭隘な意識の萌芽を感じる。
もちろん実際に現地に赴いている企業の方々は、それぞれの地域への貢献などを含めて様々な努力を進めておられるのだろうと認識しているが、やはり日本の場合どうしても諸外国の事業の責任者を日本人中心に考える思考回路は残っているし、それ以上に報道などが不思議な「日本企業」というコンセプトを使い続け、結果として不必要なナショナリズムを醸成しているような気がする。ある意味、企業には国境はないのであり、だからこそ経済活動を通じで世界の協調が図れるのであって、アジアの投資規制という議論をするのであれば、域外の企業が進出するに当たってその障壁が減少したという表現にするべきではないか?