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観光を経済の牽引車にするということ
マイク丹治の「グローバル・アイ」
観光を経済の牽引車にするということ
セールスジャパンという、中小企業・ベンチャー企業向けの営業代行・販路開拓の会社で会長を務める傍ら、いくつかの会社の顧問に就任しており、更に政策シンクタンク・構想日本で政策提言を行っています。
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ちょうど先の週末の国際版ニューヨークタイムスに、オリンピックが経済の牽引車になるかというような話題が掲載されていた。そして、ロス五輪がこの成功の例として掲げられるが、これは基本的に既存の設備を活用したからで、どうも一般的には経済の牽引車としての役割は期待できない、例えばロンドン五輪では逆に前年度比の観光客は減少した、という論調になっていた。
これは、なんとなく常識にも合う。確かに、50年前の東京五輪は、日本の経済成長の象徴のように思われるが、それはオリンピックに合わせて様々な経済活動の基盤となるインフラ整備が進んだからだと言える。新幹線や首都高速道路がその典型だ。
とすれば、同じような土建工事をやれば経済成長に結びつくのか?確かに、短期的には建設工事の需要効果によって経済成長はもたらされるだろう。だが、そもそも製造業を含めて競争力が落ちてきていて、人口減で市場としても先の見えないわが国経済にとって、これを支えるインフラとしての投資が経済全体にどのような効果をもたらすかと考えると、とても東京五輪の時と同じには考えられない。
ましてや、国立競技場などを改装し、様々な施設を作っても、それが一過性のあるイベントに活用されるだけでは経済効果、或いは社会効果も限られる。先見性のない公共工事の象徴でもある首都高速にしても、今度のオリンピックを機に、全面的に改装し車線を増やすなどということであれば、相応の効果があるかもしれないが、あまりに投資額が大きくなるし、ましてや大震災の可能性がある以上、当面巨額の投資には慎重であるべきかもしれない。
つまりオリンピックなどの一時的なイベントのために投資をしても、それが回収される可能性は薄く、もっと本格的にわが国の産業構造の中で観光の占める地位を高める努力が必要なのではと思うのだ。いつも思うのだが、これだけ風光明媚な観光地にあふれるわが国に何故多くの観光客が来ないのか?
ちょうどスイスやイタリアなどの観光収入が国家経済に大きな位置を占める国に行っていたが、確かに地続きで人が来やすいという側面はあるにしても、そこに欧州の人間だけでなく多くの中国、日本、韓国の観光客があふれていて、しかも観光地の高価な入場料、食事、土産に金を落としているのを見ると、もっと日本でも何とか出来るのではないかと感じる。
さすがにスイスの場合は、一番の観光名所はヨーロッパアルプスであり、もちろん山によって違いはあるとは言っても、観光スポットとしては比較的同質と言える。しかにイタリアは、ファッションとともに工業都市でもあるミラノに対して、水上都市として栄えたベネチア、ルネサンスのフィレンツェ、古代ローマ国家のローマ、そして海産物豊富なナポリと、全く異なる歴史と文化を持つ観光スポットにあふれている。
そして、それぞれが様々な工夫をして、その魅力に磨きをかけていると言える。驚いたのはナポリの様々な史跡の改装工事などが急速に進んでいること。もともとカプリ島やポンペイなど見どころの多いところだが、これで更に観光の高度化が見込めるのではないか?
日本にも、京都、奈良だけではない、様々な名所がある。それぞれの特徴を生かしながら、何でも安くするのではなく、きっちりとお金を取ることで、より高いサービスを提供するという形に変えていけば世界中から観光に、或いは勉強に来てもらえるのではないか?
そして、そのような人々が増えることが、日本のファンを増やし、日本に対する理解を高め、「何を考えているか分からない日本人」というイメージを払しょくすることにつながるのではないか?世界中の人々が、あの国は素晴らしい、あの国民は素敵だ、と思えるような地域・文化・社会を地道な努力で、一歩一歩創り上げていく、そこからしか観光の自立は見込めない。