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報道されなかった悲劇ーマイク丹治のグル―バルアイ
マイク丹治の「グローバル・アイ」
報道されなかった悲劇ーマイク丹治のグル―バルアイ
セールスジャパンという、中小企業・ベンチャー企業向けの営業代行・販路開拓の会社で会長を務める傍ら、いくつかの会社の顧問に就任しており、更に政策シンクタンク・構想日本で政策提言を行っています。
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今日はちょっとEconomistの記事について、議論したいと思います。
国外退去で機内で死亡
すでに、多くの人がこの記事を読んでおり、以前からこの事件に関わっていた人たちの間で署名活動なども行われているようですが、今年の3月にAbubakar Awudu Surajというガーナの男性が、国外退去命令によってカイロ行きの便に意識不明で搭乗、その後亡くなったという事件があったようです。
この機内で、彼は手錠をされ椅子に縛られていたようで、そもそもの入国管理当局の対応が議論になっています。彼はいわゆる違法滞在者(つまり正式の在留ビザを持っていなかった)ですが、既に22年日本に住み、日本語も流ちょうで日本女性と結婚していました。このような在日外国人に対して、特別在留許可という制度がありますが、彼はこれを申請し却下されたのです。
日本はどうも歴史的に外国からの人の流入に関して比較的冷淡な対応を取ってきているように感じます。記憶に新しいところでは、同じような国外退去の例で、フィリピンの夫婦が子供だけを残して帰国せざるを得なかった事件が報道されていました。しかし、今回のガーナ男性の件は殆ど報道されていません。報道されないということ自体が、異常な感じもします。
外国人性悪説?
確かに、一方で不法滞在で違法な職業に従事したり、犯罪行為に手を染めたりする例もあり、更に言えば一部の外国人の残忍な犯罪の例も見られ、日本国民を守るという優先度の高い任務を遂行するために、厳重に入国時に確認し、更に不法な滞在は早期に発見し適切に対応する責任が入国管理局にあるのは否定できません。
しかし、どうも入国管理局の対応には、例えば以前のアメリカで白人が黒人に対したような、外国人は人間にあらずといったところがあるような気がします。もちろん先に述べたような責務から、どうしても応対が厳しくなりがちだなどの理由はあると思いますが、今回の事件で想像されるような対応(捜査を待たないと何があったかわかりませんが、搭乗後に亡くなるというのはさすがにちょっと異常ですよね)が本当に必要なのか、疑問に感じます。
第二次世界大戦における、様々な戦争犯罪が議論されています。どこまでが本当なのか、これはきちんと相互に協力し合って確認すべきだと思います。ただ、これはわが国だけではないと思いますが、わが国もまた敵国の捕虜や海外の人民に対して、必ずしも人間的な対応をしていなかったというのは、おそらく間違いないと思います。日本において、在日韓国人や部落の差別などが、未だに完全になくなっているとは言えないのもその証左です。
どこにでも行ける日本人
しかし、とくに経済大国になった今、我々は今一度自国の世界における位置づけというものをきちんと理解しなければならないと思うのです。
日本人であることの最大の利点の一つを、たぶん日本人自身が認識していません。それは日本人であればおそらく世界中どの国にでも殆どフリーパスで入国できるということです。これは日本がこれまで築き上げた経済援助を含めた経済力、そして凶悪犯罪の少ない温和な国民だという世界的認識などが大きな要因であり、我々は誇りに思わなくてはなりません。
でも、一方で肝に銘じなければならないのは、入国に際して海外の人たちがどれだけ艱難辛苦を嘗めているかということです。我々は世界どこへでも行けるという特権の有難味が分からないから、入国に関して苦労する痛みが分からない、その上に、外国人性悪説が乗っかると、今回のような事件につながるのではないでしょうか?
もっと海外からの人を大事に!
このガーナ男性が本当に在留を認められるべきであったかどうかは、私は詳細を知らないので判断できませんが、少なくとももう少し人間的な対応をしていれば、彼が命を落とすことはなかったのではないか、と感じます。そして、それより以前に、犯罪や違法な活動を阻止するという役割はもちろん重視してほしいですが、これからの少子高齢化を考えると、もっと海外からの人たちに期待すべきところはあるのであり、積極的に人を受け入れるという精神で、対応できないかと考えます。
もはや価格競争一辺倒で途上国と競争するのではなく、日本の良さを理解いただくために多くの海外の方々に日本に来ていただき、生活していただく、それを通じて日本ファンを増やしていくことが必要だと思っています。だとすれば、入国管理局にとっては一方で国の安全確保という要請がある中、悩ましいところはあると思いますが、少なくとも不法滞在者であれ、その一事をもって在留を拒絶するのではなく、国外退去の必要があったとしても、それこそ優しい日本人として最大限のサービス(国家の外国人に対するサービスです)を提供するくらいのことはしていただきたいと思います。