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世界とたたかうビジネスパーソンのための「英語の使い方」
留学エージェントの視点
世界とたたかうビジネスパーソンのための「英語の使い方」
1971年生まれ。海外の日系現地法人や商社、外資系企業の日本事務局代表等を経て、現在は留学エージェンシー Plan Bの代表を務める。英国立リバプール大学マネジメントスクール修了。
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田中宏昌(著) IBCパブリッシング
手にとってパラパラと見たところ、ビジネス英語の参考書の類かと思っていましたが、それとは全く違っていました。いくつもの例文がありその解説が書いてある、またそれぞれの例文に出てくる重要な単語が並べてあるという意味ではそうとも言えますし参考書としても十分使えますが、単にそれだけではなく、むしろそれ以上に海外の企業あるいは外資企業のカルチャーへの適応方法、コミュニケーションのスキルがこの本の中に凝縮されています。
私は過去に海外の日本企業、国内の外資企業などで仕事をしてきましたが、著者が見聞きしたように私も自分自身あるいは周りでこういった状況や英語に多く出くわしました。読んでいるうちに過去の失敗を思い出し、恥ずかしくもなりました。外資で働いているときに実際に何度もあったのは、(多くのネイティブでさえ)プレゼンテーションで書いてあることをほぼそのまま読んでしまうパターン。大事な部分を飛ばさないようにという配慮のつもりでしょうが、よほど内容が面白くない限りは(たいていそうではありません!)、聞いている方はは完全に時間の無駄、「資料でわかるからそれはいいって!」と感じその製品自体にネガティブな印象さえ持ってしまいます。
またつい数週間前にあったのは、アメリカの有給インターンシップに挑戦しようという20代の女性に擬似インタビューをしていたところ、"I'm gonna.."という「ティーンエイジャー英語」的な表現。もちろん文法的には間違っていませんが、まず面接でいい印象は与えません。本人は海外経験もあり、指摘するまで全くそのことに気付いていませんでした。
面接だけでなく、パーティー等の場面でも重要になってくるのは自己紹介。日本的なつつましやかさ(だけ)ではなく、ある意味では「ドヤ顔」に近い位の余裕を持ったスマイルとしっかりした握手が言葉以上に重要になってきます。
幸運にも会社に入ることが出来ても安心は出来ません。日本では高野さん、あるいは部長、と呼ぶことが多いでしょうが皆さんご存知の通り英語の「デフォルト」はファーストネーム。でも日本人らしくちょっと気を使って・・"Mr. Mikio" という風にファーストネームに敬称を付けて訳の分からない呼び方をしてしまう人もいらっしゃいます。
例えばこれらのようにカルチャーがらみで起こる間違いなどについてもこの本では触れています。
その他スマートな電話の取次ぎ方、パーティーでうまく輪に入る(あるいは出る)方法、チーム内での振る舞い方からリーダーシップ、同僚を家に招いた時の奥様の紹介方法(日本的に「愚妻」・・えーっと"My stupid wife"などと間違っても言ってはいけません!)まで、本当に「あるある」な状況とミスをうまくピックアップしてあり、実際どうすれば良かったのかという「正解」を出してくれていますので、上級者の方でもかなり役に立つのではないかと感じます。長年英語と欧米カルチャーに浸かって居る私もここから学ぶことは相当ありました。。本当に恥ずかしくなる位。。こう書くと初級を自負されている方が「じゃあ私には難しすぎるでしょ」と思われるかも知れませんが、"Please look at page 16"というような極めて初歩的な表現も多くあり、全くその心配はありません。むしろこれらの文章から単語を覚えて行くのが昔ながらの単語帳作戦より何倍も効率的で実践的です。
このように完成度の高い本ですが、あえて残念なところを書くと、添付のCD(本文中の会話を収録)の音声がキレイすぎて恐らく実際のネイティブ同士で会話する場合のスピードとしては不自然なこと。TOEICのリスニングを思い出しました。実際の現場では下手をするとこの5割増位で話す人も居ますし、微妙に色々なアクセントも混じっています。そこまで言ってしまうのは贅沢かも知れませんが、アメリカでも東と西、あるいはアイリッシュやオージーなんかを雑音と一緒に混ぜてオフィスや街中の雰囲気を出しても面白いかと思いました。
とにかくそれほど期待してしまうまでに内容的には充実したもので、今後インターン系の留学をする人たち全員にプレゼントしたくなるような一冊でした。きっとこれを読んだ方は英語のスキルだけではなくカルチャーを理解した上でのコミュニケーションがいかに大事なのかが分かるようになると思います。