誠ブログは2015年4月6日に「オルタナティブ・ブログ」になりました。
各ブロガーの新規エントリーは「オルタナティブ・ブログ」でご覧ください。
結局フィリピン(セブ島)留学は「買い」か?
留学エージェントの視点
結局フィリピン(セブ島)留学は「買い」か?
1971年生まれ。海外の日系現地法人や商社、外資系企業の日本事務局代表等を経て、現在は留学エージェンシー Plan Bの代表を務める。英国立リバプール大学マネジメントスクール修了。
当ブログ「留学エージェントの視点」は、2015年4月6日から新しいURL「http://blogs.itmedia.co.jp/mikiotakano/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。
最近少しトーンダウンしたような気がするものの、これまで様々なメディアでセブ島に代表されるフィリピンへの留学がもてはやされてきました。今回は留学エージェントからみたフィリピン留学は実際どうなのよ?ということを本音で書いていきたいと思います。
学校によって(和食を提供等)差はあれど、一般的にフィリピン留学の売りは:
- 安近短
- マンツーマンレッスン中心
- 朝から晩までミッチリ勉強できる
に集約されるでしょう。過去の同僚達やら友達から、元々フィリピンという国やフィリピン人に対してのイメージはポジティブなものでした。ただ留学先となると話は別で、正直その存在意義にさえ疑問を持って居ました。それでもカウンセリングで取り扱いを聞かれたり、またある方のお誘いがあってフィリピン留学を強化しようという流れになり、去年後半から改めて学校の方にお会いしたりしてリサーチを進めました。結果から言うと今も私のところでは積極的にフィリピン留学を勧めるには至っていません。。
最も大きな理由は、やはりフィリピン人を英語のネイティブスピーカーと呼んでいいのか、というところ。確かに英語は公用語の一つとされています。ネイティブと言っていいレベルの英語を話す先生も多くいます。が、実際スーパーでおばちゃん同士が話しているのは英語ではなく、タガログ語であったりビサヤ語であったりとローカルな言葉だったりするわけです。日本で見かける方々もそうですよね?そして英語が話せる人が多いといってもみんながそうではないと。Facebookのやり取りは基本的に英語ではないし、現地の人たちと英語で話してみてもコミュニケーションはそこそこできても文法は間違っていたり、カタコト感は拭えません。
これはフィリピンだからどうこうということではなく、インドでもそうですし、例えばカナダに英語を学びに行くとしてもケベック州に行くのであればある意味では同じです。なんでわざわざフランス語圏で英語をやるの?と。逆にフランス語を勉強しにバンクーバーに行く場合も当てはまるでしょう。カナダの公用語は英語でありフランス語でもありますから。
結局留学は授業だけではなく普段の生活でも英語を話すことで格段に語学力が上がる訳ですし、そうでなければ日本でマンツーマン英会話をしていればいいわけです。 もっというなら留学において語学力は本来副作用みたいなものです。最初は語学力を上げるのに必死ですが振り返ってみると重要なのはその土地のカルチャー、ものの考え方とか生き方を身をもって学ぶのがメインだったりする訳です。
学生の国籍もポイントです。私がリサーチした限りだいたいどこも韓国人が大多数で日本人が少し、その他の国籍がちらほら、あるいはほとんど日本人/韓国人。フィリピンはマンツーマンが基本だから周りの国籍は関係ないという考え方もあるでしょう。でもよく時間割を見るとたいていのコースにはマンツーマン以外の授業も入っています。そして留学は先生だけから学ぶのではありません。クラスメイトとのやり取りでその国独特のアクセントや考え方を学ぶことも多いし、何より地図で指させないような国も含め世界中にネットワークが出来るのが大きなアドバンテージです。
近いというのは確かでしょう。ただ一週間ならまだしも3ヶ月滞在するのに数時間多く飛行機に座っていることがこれからのキャリアを考える中でどれほどのデメリットなのかをよく考える必要はありそうですし、日本とのやり取りで時差が気になるなら同じく東経135度上にあるオーストラリアでもいいでしょう。
それでも安いのは魅力、という考えも理解できます。マンツーマンの授業料として比較すると欧米よりかなり安くはなります。ただし、フィリピン留学でも多くは滞在込みで結局一ヶ月で25万円ほど掛かります。この金額は欧米での一般的な少人数グループレッスンを受けた場合の総費用と大きく変わりません。繰り返しになりますが、欧米の場合は学校の外やクラスメイトから学ぶことがより多いので比較の対象としてマンツーマンである必要はないことも考慮に入れる必要があります。
こう書くとフィリピン留学を全否定しているように取られるでしょうが、そんなことはなく、アドバンテージももちろんあります。超がつくほどの初心者で短い文章も含め全く話せない場合は、マンツーマンでゆっくり相手が待ってくれる環境が快適でしょう。これは実際にフィリピンの学校スタッフも勧めるパターンですが、そういった環境で最長3ヶ月ほど言葉を発することに十分慣れてから、更に語学力を引き上げるために欧米で学ぶことです。こうすれば英語にアレルギーがあるような方でもストレスを極力抑えながら英語を習得できるようになるかもしれません。
以上、あくまで(ほかの記事同様)これは留学業界/エージェンシーを代表する考えではありませんが、現地の人や学校から情報を集めて他国との比較を出来るだけロジカルに比較をした一人の現役留学カウンセラーの本音であることに偽りはありません。どの国/都市への留学でもそうですが各自の語学力や性格、学校や滞在場所の環境、そこで出会った人たちや運、etc. の様々な要素が絡み合うために、満足した人とそうでない人はそれぞれ多くいて唯一無二の正解というものはありませんので、なかなか簡単なことではありませんが、留学を考えている方は月並みな表現ですがしっかり情報を集めてしかるべき人に相談をし、さらに自分の頭でも考えることをお勧めします。