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2011_02_14「グローバル化の実相1:世界的変化の日本での変化」
ニュースを解く読書・別館
2011_02_14「グローバル化の実相1:世界的変化の日本での変化」
ジャーナリスト。1968年東京都出身。科学技術、経済、雇用、教育問題などを軸に活動。著書に『ぼくらの就活戦記』『就活って何だ』(ともに文春新書)、『脳にいい本だけを読みなさい!』『グーグル・アマゾン化する社会』(ともに光文社)、『インターネットは「僕ら」を幸せにしたか?』(アスペクト)、『天才とは何か?』(数研出版)ほか多数。
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森 健の『ニュースを解く読書』
--- Dive Into Books with News --- 2011/02/14 vol.10
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<< CONTENTS >>
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【1】今週のテーマ >>「グローバル化の実相1:世界的変化の日本での変化」
【2】今週の1冊 >>『BOP 超巨大市場をどう攻略するか』
<書名・著者・出版社・定価・amazonリンク>
<版元による「内容紹介」の引用>
<目次>
<要約>
【3】解説と雑感 >>「20年後のビジネスを想像/創造できるか」
【4】おまけ
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【1】今週のテーマ「グローバル化の実相1:世界的変化の日本での変化」
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おそらく2008年のリーマン・ショックないしは世界的金融危機がすべて
のきっかけだったと思う。
中国やインドなど2002年以来、BRICsと呼ばれる新興国が急速な経済成
長を遂げてきたのも理解はしていたし、日本などはそれによって2000年代
の成長のステップとなった。
だが、CDOやCDSというデリバティブの金融商品の市場崩壊によって、
先進国の経済が大きく後退。輸出に頼って成長していた日本企業は急激な消
費不振に襲われ、一気に経済は悪化する流れとなった。
だが、これはあくまでもきっかけだった。
何のきっかけだったかと言えば、本当の世界の変化を認識し、それに合わ
せるためのきっかけだ。
その劇薬のような症状から半年ほどした時点で、日本はさまざまな変化を
打ち出すようになってきた。
これは、それまでハイプな株価に目眩ましされていた企業が、人口減少と
少子高齢化で市場が急減していく日本の将来と、その反対に伸びていく市場
である海外に活路を目指していくことに、ようやく実感として気づいていっ
た過程でもある。
その明確な表れが大学生の新卒採用数の急減だ。
製造業でもサービス業でも大幅に採用数を減らし、およそ前年比で25%
が減らされることになった。それは単に数だけの話ではなく、質の面でも慎
重に検討され、その会社において基準に達しないのであれば、採用しないと
いう「厳選採用」という風潮も生み出した。
そもそも伝統的な企業は20年、30年と雇い続けることを想定して、採用
を決める。であれば、日本の20年先、30年先、世界の20年先、30年先に
思いを馳せれば、国内の市場に対する社員数を減らすのは当然のことだ。
その結果、学生にとっては「超就職氷河期」となった。
この変化と対照的に動き出したのが、本社における外国人社員の採用だ。
これまで海外に複数拠点を置く企業は、その国で現地法人をつくり、そこ
で社員も採用し、活動するという流れだった。もちろんいまなおそれは変わ
っていないが、それを補うように日本の本社(ヘッドクォーター)でも外国
人を採用しはじめたというところに、いまの人材のグローバル化の大きな流
れの一端がある。
こうした人材戦略が企業の裏側の側面だとすれば、表側=事業戦略は明確
に海外に向きだした。
それは単に新興国という枠組みでは捉えられない方策だが、攻め方として
は、上方展開と下方展開とある。
上方展開の一つが、インフラ輸出だ。
原子力発電所、鉄道(高速鉄道、都市鉄道)、送配電、上下水道、リサイ
クルなどおよそ9つの分野に絞って、霞が関(経産省、資源エネルギー庁)
と複数の特殊法人(外郭団体:石油天然ガス・金属鉱物資源機構や新エネル
ギー・産業技術総合開発機構など)とともに、商社やインフラ企業が本格的
に稼働しはじめた。
昨秋契約をとることに成功したベトナムの原発計画はその成功例だが、ほ
かにもインドのデリー=ムンバイ大動脈構想などもすでに受注しており、多
数のプロジェクトが世界で交渉の土台に入っている。これはインフラという
国家基盤に関わる主要技術であるため、たいていは政府間協議が欠かせず、
いわば上からの事案である。
そして、下方展開の一つが、下からの市場開拓、BOP戦略だ。
BOPとはBase Of Pyramidの略で、いわゆる底辺層のこと。アジアやア
フリカ諸国に多数居住する人たちで、この層は40億人以上いる。
数年前、日本では中国など新興国の「中間層」を掘り起こすべきだという
記事が多く出た。中間層とはおよそ年収で200万以下だが、積極的な消費意
欲をもつ層のこと。中国にはこの層だけで数億人はいるとされ、それに目が
けて市場開拓をするべきだと、あるいはこれだけ斬り込んでいるという記事
が多く出た。
だが、いまから思えば、それでもまだ日本企業は出遅れだったという感が
否めない。
なぜなら、世界のトップ企業は、まだ数としては少ない中間層よりも所得
は少ないけれども、膨大な人口がいるBOP=底辺層のほうにターゲットを絞
りだしていたからだ。
世帯年収で90万円未満。あるいは1日の生活費用が1ドル。そう聞くと、
ほとんどの日本人ないしは日本企業は「そんなところにビジネス展開したっ
て、ペイしないじゃないか」「何を寝ぼけたことを。社会貢献のつもりか?」
と苦笑を浮かべるのが関の山だろう。
だが、そうした認識が大きな市場展開の遅れを招いている。
この層は、単なる数字で判断すると大きな市場を見逃してしまうほどの消
費意欲がある。たとえば、年収90万円でも大型液晶テレビも新型冷蔵庫も
もっているし、1日1ドルの家でもバイクは購入するし、携帯電話は必須だ。
毎月数百円でも貯金をして将来の買い物に備えるし、子どもの教育には収
入の2割を注ぎ込む旺盛な教育熱もある。
詳細は省いて言えば、彼らは未来が明るくなる、経済が発展するとわかっ
ているからこそ、消費も積極的にしているのである。
この層=最後の未開拓層に世界中のトップ企業が激しい攻勢をかけている。
この層の取り合いこそが、2010年代以降の20年をきめると言っても決し
て過言ではない。
話を戻そう。
要は、2010年代以降の世界のありようは、この数年ではっきり見えてき
つつあり、それに対して企業も行政も手を打ち始めたのが現在だ。
それはこれまでの言葉だけの「グローバル化」から、本当の意味での本格
的な「グローバル化」の到来でもある。もう少し具体的に言えば、ヒト・モ
ノ・カネのうち、国内では達成されていなかったヒトがグローバル化すると
いうことでもあり、モノとカネは本格的に海の外に重心が移っていく過程で
もある。
そこで、今回から数回、「本当のグローバル化」というシリーズで、いま
日本に訪れつつあるグローバル化の本当の一面を見ていきたいと思う。
初回の今回は上記に記した変化のうちから、最後に記した「BOP」=底辺
層へのビジネス攻勢についての本を紹介しようと思う。
『BOP 超巨大市場をどう攻略するか』
今年1月に出たばかりの本だが、おそろしく生々しい現実に満ちている。
著者陣は野村総研の研究員たち。ほぼ同じメンバーで昨秋11月に似たよ
うな本『BOPビジネス戦略──新興国・途上国市場で何が起こっているか』
が出ているが、比べて読んだところ、今日紹介する本のほうが読みやすく、
また伝わる衝撃度合いも強かった。
底辺層と呼ばれる人たちの生活実態はどういうものか、本書で知れば、
ぼんやりしていられないことが誰にでも実感できるはずだ。
※以下はfoomiiでお読みいただければ幸いです。