登場いただいた方は13名。職人、農業、地域、お店、NPOと大まかに分類したうえで、これまでの軌跡や転機のタイミング、折々の考えなどに焦点をあてました。なかには、トヨタ自動車、ワコール、博報堂、住友建設(現三井住友建設)など優良企業をやめたかたもいますし、学生時代からそのまま自分の好きな道に邁進してきた人もいます。北海道、東京、長野、京都、島根、高知、沖縄......と、日本全国さまざまな場所に赴き、彼らの話に耳を傾けてきました。
本書はいわゆる「成功本」ではありません。順調に事業を進めている方もいれば、いまひとつ思わしくない状況にいる方もいます。対象者は20代後半から40代前半。どの方もまだ途上というのが適切な言い方でしょう。
それでも、本書に出ている方にはみな強い魅力がありました。表情には、ひとつ抜けたようなさわやかさと強さがあり、そして、どこかいい加減でもある(そうでなければ独立というリスクをとらないとも言えますが)。取材の過程で、その呑気さや無謀さに驚いたり、笑ったりということは少なくありませんでした。
ただし、腹のくくり方は共通していました。自らの好きなことをし、それで食べていく。その点については、みなほぼ揺るぎなく確信をもっていたように思います。そして、そこに彼らの生き方のおもしろさもありました。
勤めて働くことと、勤めないで働くということに、優劣の差はありません。どちらにもそれぞれ固有の厳しさと面白さがあります。
多様性ある豊かな社会、といった掛け声はさまざま耳にしてきましたが、仕事に関して、働くということに関して、現状それが実現したとは言いがたい状況です。けれども、本書に登場した人たちのように、自分の感性や意志を軸に生きていく人たちが現れつつあるのは、そんな社会に少しは近づいている証かなと思っています。
もう一つの働き方、仕事の楽しみ方を本書を通じて感じてもらえたら、筆者としてはなによりうれしいです。
ぜひご一読ください。よろしくお願いいたします。
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