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新刊案内「勤めないという生き方」

新刊案内「勤めないという生き方」

森 健

ジャーナリスト。1968年東京都出身。科学技術、経済、雇用、教育問題などを軸に活動。著書に『ぼくらの就活戦記』『就活って何だ』(ともに文春新書)、『脳にいい本だけを読みなさい!』『グーグル・アマゾン化する社会』(ともに光文社)、『インターネットは「僕ら」を幸せにしたか?』(アスペクト)、『天才とは何か?』(数研出版)ほか多数。

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tsutomenai.jpgこんにちは。新刊案内です。
2月18日、メディアファクトリーから
『勤めないという生き方』という本を上梓します。

タイトルが示すように、本書は会社に勤務していない人、つまり、会社を辞めたり、あるいはそもそも一度も就職をせずに独立したり、という人たちを描いた本です。
登場するのは、個人事業主もいれば、法人の代表もいますが、いずれも単に規模拡大を目指したりするのではなく、身の丈にあった仕事をしたり、自分の理想とする生き方を追求したり、という人たちです。

この数年、雇用が悪化する中で就職に関する取材を続けていますが(『就活って何だ』『ぼくらの就活戦記』)、どこか雇用がいびつな状況になっている感を否めません。
人気企業には5万人といったおそろしい数のエントリーが寄せられ、あふれた学生は「就活浪人」「就活留年」を選択。やりたいことを考えるよりも安定と収入ばかりを志向した結果で、いまや高校生の理想の職業一位は公務員です。安定や収入を目指すこと自体は悪いことではありませんが、いま起きている現状を見ると、仕事や働くということに対して、思い違いをしているようにも思いますし、そもそもあまりに夢がありません。

一方で、世の中を見渡すと、そんな大勢とは真逆の選択をした人たちも少しずつ現れつつあります。サラリーマンという安定を捨て(あるいは元から選ばず)、自分が納得できる仕事を選ぶ。自分のしたい仕事に飛び出す人たちが徐々に増えている。そうした事業に就き始めた人には、大企業をやめて参入したという人も少なくありません。会社という既存の組織をやめ、個人や法人で独立する。それはたいへんなリスクです。まして、「儲かる」という基準ではなく、「好きなことをやる」という基準になると、多くの人は「おいおい、ちょっと待てよ」と思うのが自然でしょう。
でも、そういうことをしてきた人もいるのです。
本書は、そんな人たちを北に南に取材に訪ねていった本です。

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登場いただいた方は13名。職人、農業、地域、お店、NPOと大まかに分類したうえで、これまでの軌跡や転機のタイミング、折々の考えなどに焦点をあてました。なかには、トヨタ自動車、ワコール、博報堂、住友建設(現三井住友建設)など優良企業をやめたかたもいますし、学生時代からそのまま自分の好きな道に邁進してきた人もいます。北海道、東京、長野、京都、島根、高知、沖縄......と、日本全国さまざまな場所に赴き、彼らの話に耳を傾けてきました。
本書はいわゆる「成功本」ではありません。順調に事業を進めている方もいれば、いまひとつ思わしくない状況にいる方もいます。対象者は20代後半から40代前半。どの方もまだ途上というのが適切な言い方でしょう。

それでも、本書に出ている方にはみな強い魅力がありました。表情には、ひとつ抜けたようなさわやかさと強さがあり、そして、どこかいい加減でもある(そうでなければ独立というリスクをとらないとも言えますが)。取材の過程で、その呑気さや無謀さに驚いたり、笑ったりということは少なくありませんでした。
ただし、腹のくくり方は共通していました。自らの好きなことをし、それで食べていく。その点については、みなほぼ揺るぎなく確信をもっていたように思います。そして、そこに彼らの生き方のおもしろさもありました。

勤めて働くことと、勤めないで働くということに、優劣の差はありません。どちらにもそれぞれ固有の厳しさと面白さがあります。
多様性ある豊かな社会、といった掛け声はさまざま耳にしてきましたが、仕事に関して、働くということに関して、現状それが実現したとは言いがたい状況です。けれども、本書に登場した人たちのように、自分の感性や意志を軸に生きていく人たちが現れつつあるのは、そんな社会に少しは近づいている証かなと思っています。

もう一つの働き方、仕事の楽しみ方を本書を通じて感じてもらえたら、筆者としてはなによりうれしいです。
ぜひご一読ください。よろしくお願いいたします。

こちらが新刊案内のPDFです。