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2011_03_28「3.11後の日本:新しいエネルギーへ」
»2011年4月 1日
ニュースを解く読書・別館
2011_03_28「3.11後の日本:新しいエネルギーへ」
ジャーナリスト。1968年東京都出身。科学技術、経済、雇用、教育問題などを軸に活動。著書に『ぼくらの就活戦記』『就活って何だ』(ともに文春新書)、『脳にいい本だけを読みなさい!』『グーグル・アマゾン化する社会』(ともに光文社)、『インターネットは「僕ら」を幸せにしたか?』(アスペクト)、『天才とは何か?』(数研出版)ほか多数。
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森 健の『ニュースを解く読書』
--- Dive Into Books with News --- 2011/03/28 vol.16
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<< CONTENTS >>
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【1】今週のテーマ >> 「3.11後の日本:新しいエネルギーへ」
【2】今週の1冊 >>『ヨーロッパ環境対策最前線』片野優
<書名・著者・出版社・定価・amazonリンク>
<版元による「内容紹介」の引用>
<目次>
【3】付記
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【1】今週のテーマ 「3.11後の日本:新しいエネルギーへ」
◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆
ヒロシマ、ナガサキ。まさかこの後にもう一つ別の県の名が世界に知れ渡
るとは思いもしなかった。いまやフクシマは世界が注目する土地となってし
まった。世界に例のない三度目の被爆。放射性物質はいまなお放出を続けて
いる。米、仏、中、韓ほか、世界のトップレベルの技術者、研究者、事業者
が日本に集まって、フクシマの収束に挑戦している。
すでに再臨界を示すチェレンコフ光も確認されており、燃料棒の溶融やそ
れにともなうセシウムの放出も近隣で確認されている。まさに一刻の猶予も
ならぬ事態だ。だが、直近の事態はと言えば、格納容器への水の注入どころ
か、大量の放射性物質を含む汚染された水が作業用トンネル(トレンチ)に
貯まっていることが判明。2号機のトレンチには6000立方メートル、1号機
と3号機、さらに4号機の地下にも1万トンあまりが確認された。それを除去
せねば事態は進まず、3月末時点の現在はその除去に作業チームは注力するこ
とになっている。
いずれにしても、フクシマの封じ込め作業は長期化する。元原子力安全委
員会の松浦祥次郎も「今回は汚染低減作業に非常に手間がかかる。廃炉はお
そらく20~30年では終わらない」と明言した。
汚染水が除去できたとして、その次には注水と冷却作業の正常化があり、
それが数十年続けられたのちに、コンクリートで「石棺」づけにする作業と
なる。そこに行くまでが数十年ということだ。
2号前にも記したことだが、もはや放射性物質の拡散は(少なくとも)関
東および東北にとっては日常的なものとなってしまった。これは確定的なこ
とだ。あとは、その被害がどの程度増えるか減るかという増減の規模の問題
と最終的な石棺づけがいつごろになるかという時間の問題だ。
とくにセシウムが降下した地域については、居住はもちろん、農業など生
産活動もおよそ半世紀は使用できなくなる。いまなお福島原発の近隣では、
高齢者や農家など動くに動けない1万人近い人たちが居残っているとされる
が、強制退去にまでは至っていない。この人たちも移動までは時間の問題だ
ろう。
おそらく原発の作業が一服ついたあとは、周辺区域(おそらく30キロ圏
内)は出はいりができなくなり、双葉町と大熊町は自治体がなくなるだろう。
すでに三陸沿岸の被災者は十数万人単位で他の都道府県に一時的退避をして
いるが、その地域にも戻ることができない人たちも増えそうだ。宮城などは
激しい地盤沈下も起きており、そこに大量の海水の浸水が残っている。戻る
に戻れないばかりか遺体の収容さえ終わっていない。
カトリーナで水没した米国、豪雨と洪水で水没したドイツなどいくつかの
例はあるが、自然災害でここまでのレベルで被害を被った国は先進国では初
だろう。なによりも原発でこうした被害を被った先進国もないからだ。
復興については、自治体、企業(工場)、住民、などさまざまなレイヤー
があるが、ひとつエネルギーということだけに限れば、もはや原発を増やそ
うと考える日本人はいまは皆無だろう。
原発をなくせという思いもしばしば見聞きするが、停止から廃炉にするに
は、やはり時間がかかることはフクシマと変わらない。1998年に廃炉を決
定した東海村にある日本原子力発電東海発電所は2021年まで段階的に進め
ているとされる。もちろんその間も放射線は微量でも出続けており、廃炉を
決定したからそこで終わりというわけではないのだ。
そこで今回からは「3.11後の日本」として、あらたにシリーズをはじめ
ようと思う。
復興、復興と早足で進んでいく時勢に対し、どこまで歩調をあわせること
ができるのかわからない。また、複数のレイヤーが同時に動いている中で、
提言まで含めてどこまでできるのかは不明だ。この国難に際して、報道の主
軸はテレビとネットに移っており、新聞はより専門的な話か生活ベースの話
が増え、雑誌は総括的な話か提言、あるいは大手メディアに掲載されない裏
話的な方向で活路を見出している。
そういう中で、どこまで生なレポートや有効的な提言を出せるのか、心も
とないのが正直な感想だ。だが、それでも少しでも有効な情報を出していけ
ればと思っている。
いまの事態を受け止めて、前に進むには2つの作業に大別される。
ひとつは今回の大規模災害が起きてしまったことの検証。どちらかと言え
ば、後ろ向きな作業だが、それなしに適切で建設的な議論もできないのも事
実だろう。
もう一つは、それらの失敗や間違いを踏まえて、新しい日本を構築するた
めの処方や対策の提示だ。「復興」とただ叫ぶののは簡単だが、たとえば、
沿岸部の地域を以前の同じにするにはお金も時間もかかりすぎるし、また、
何の工夫もないのではまた同じ失敗を繰り返すに過ぎない。であるなら、あ
らたな社会を設計するに際して、新しい日本をつくらねばならない。実際、
小さな自治体ではかりに住民が戻るとしてもその数は減るだろうし、そうな
ったときの税収ではインフラはもちろん、医療も商業も教育も立ちゆかない
のは自明だ。ただでさえ、少子高齢化で人が少なくなるのに、すべてが破壊
されたところで組み直しをするのであれば、より合理的で建設的で妥当性の
ある、そして持続可能な社会をつくらねばならない。
実際には、この有事のような状況の中、前向きのも後ろ向きのも同時に進
んでいくだろうし、そうでなくてはならない。また、そうした観点を政府も
もっているだろうが(もっていなければ困る)、こちらもできる範囲で情報
を出したり、検証したりしていきたい。
森 健の『ニュースを解く読書』
--- Dive Into Books with News --- 2011/03/28 vol.16
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<< CONTENTS >>
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【1】今週のテーマ >> 「3.11後の日本:新しいエネルギーへ」
【2】今週の1冊 >>『ヨーロッパ環境対策最前線』片野優
<書名・著者・出版社・定価・amazonリンク>
<版元による「内容紹介」の引用>
<目次>
【3】付記
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【1】今週のテーマ 「3.11後の日本:新しいエネルギーへ」
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ヒロシマ、ナガサキ。
るとは思いもしなかった。
まった。世界に例のない三度目の被爆。
いる。米、仏、中、韓ほか、世界のトップレベルの技術者、
が日本に集まって、フクシマの収束に挑戦している。
すでに再臨界を示すチェレンコフ光も確認されており、
れにともなうセシウムの放出も近隣で確認されている。
ならぬ事態だ。だが、直近の事態はと言えば、
か、大量の放射性物質を含む汚染された水が作業用トンネル(
貯まっていることが判明。
と3号機、さらに4号機の地下にも1万トンあまりが確認された。
せねば事態は進まず、
とになっている。
いずれにしても、フクシマの封じ込め作業は長期化する。
員会の松浦祥次郎も「今回は汚染低減作業に非常に手間がかかる。
そらく20~30年では終わらない」と明言した。
汚染水が除去できたとして、
それが数十年続けられたのちに、コンクリートで「石棺」
なる。そこに行くまでが数十年ということだ。
2号前にも記したことだが、もはや放射性物質の拡散は(
東および東北にとっては日常的なものとなってしまった。
とだ。あとは、
と最終的な石棺づけがいつごろになるかという時間の問題だ。
とくにセシウムが降下した地域については、居住はもちろん、
産活動もおよそ半世紀は使用できなくなる。
高齢者や農家など動くに動けない1万人近い人たちが居残っている
が、強制退去にまでは至っていない。
ろう。
おそらく原発の作業が一服ついたあとは、周辺区域(
内)は出はいりができなくなり、
すでに三陸沿岸の被災者は十数万人単位で他の都道府県に一時的退
いるが、その地域にも戻ることができない人たちも増えそうだ。
激しい地盤沈下も起きており、
に戻れないばかりか遺体の収容さえ終わっていない。
カトリーナで水没した米国、
例はあるが、
だろう。
復興については、自治体、企業(工場)、住民、
があるが、ひとつエネルギーということだけに限れば、
うと考える日本人はいまは皆無だろう。
原発をなくせという思いもしばしば見聞きするが、
は、やはり時間がかかることはフクシマと変わらない。
定した東海村にある日本原子力発電東海発電所は2021年まで段
ているとされる。
決定したからそこで終わりというわけではないのだ。
そこで今回からは「3.11後の日本」として、
ようと思う。
復興、復興と早足で進んでいく時勢に対し、
ができるのかわからない。また、
提言まで含めてどこまでできるのかは不明だ。この国難に際して、
軸はテレビとネットに移っており、
が増え、雑誌は総括的な話か提言、
話的な方向で活路を見出している。
そういう中で、
とないのが正直な感想だ。だが、
ればと思っている。
いまの事態を受け止めて、前に進むには2つの作業に大別される。
ひとつは今回の大規模災害が起きてしまったことの検証。
ば、後ろ向きな作業だが、
実だろう。
もう一つは、それらの失敗や間違いを踏まえて、
めの処方や対策の提示だ。「復興」とただ叫ぶののは簡単だが、
沿岸部の地域を以前の同じにするにはお金も時間もかかりすぎるし
何の工夫もないのではまた同じ失敗を繰り返すに過ぎない。
らたな社会を設計するに際して、
小さな自治体ではかりに住民が戻るとしてもその数は減るだろうし
ったときの税収ではインフラはもちろん、
のは自明だ。ただでさえ、少子高齢化で人が少なくなるのに、
されたところで組み直しをするのであれば、
ある、そして持続可能な社会をつくらねばならない。
実際には、この有事のような状況の中、
んでいくだろうし、そうでなくてはならない。また、
もっているだろうが(もっていなければ困る)、
を出したり、検証したりしていきたい。
※以下はfoomiiでお読みください。