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マイホームを捨ててまで転職するミドル層とは?
ヘッドハンターが明かす転職事情ウソ・ホント!?
マイホームを捨ててまで転職するミドル層とは?
2004年創業の日系ヘッドハンティング会社。代表取締役の兒玉彰をはじめ、大手人材会社出身者が多く、各業界と著名人へのネットワークが豊富。所属する27名のヘッドハンター達が、30~40代を中心としたミドル層へのヘッドハンティングと転職支援を日々実践中。
当ブログ「ヘッドハンターが明かす転職事情ウソ・ホント!?」は、2015年4月6日から新しいURL「http://blogs.itmedia.co.jp/pro-bank/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。
東京八王子から愛知尾張へ、広島から金沢へ。というように、ヘッドハンティングをきっかけに転職する方は、転居を伴う場合が結構多い。首都圏から関西圏という都市間での転居だけでなく、地方から地方、都市圏から地方という転居もしかりだ。どちらからというと地方を赴任先として転居していくパターンが最近では増えている。
理由は、外資系企業や大手企業の利用が中心だったヘッドハンティングが、地方に本社を構える中小企業でも活用する例が増えてきているからだ。全国的に知名度が低い地場企業が優秀な人材を募ろうとしても、公募ではなかなか集まらない。そこで、首都圏などの遠隔地よりiターン、Uターンでの就業が可能な人材を積極的にスカウトしてきて欲しいという需要が高まっている。
そしてもうひとつ、リーマンショック後に大量リストラを行った大手・中堅メーカーの業績回復に伴い、人員不足で採用意欲が増しており、生産拠点となる地方の工場で働く生産技術者や品質管理者、研究開発者をヘッドハンティングで採用したいというニーズが強まっていることも背景にある。これらの職種の多くは、都市圏以外の地方工場で働く場合が多く、地方から地方への転職となるのである。
上記企業のほぼ全てが即戦力を求めているので、ヘッドハンティングのターゲット(候補者)は40代以上となり、当然、移籍していく方々もその年代となる。おのずと候補者の大半は、家族持ちで自宅所有者となってくる。そんな中、転居してでも移籍するわけだから、それなりの動機が存在するわけだ。「転居が伴う転職」に値するだけの条件を企業側が提示するという場合もあるが、単純に条件だけで住み慣れた土地や家を捨てられるのかといえばそうではない。役職や処遇の上昇、転職先企業の魅力、仕事内容の魅力。色々な理由が混在するが、実はもっと大きな理由・動機は『キャリアの社会還元』であると個人的には思っている。
我々の経験上、20代は「自分を成長させたい!」「自分の力を試したい!」など、仕事は自分自身を活かすためのツールであることが多い。これとは対照に40代、50代と歳を経るに連れて、「生活・家族のため」という理由が多くなり、これと同じくらいに、「社会の役に立ちたい」や「社会人としての責任を持ちたい」という社会への還元を表明するようになる。これは年齢が増すに連れて大きくなり、60代を過ぎるともはや給与や役職には全くこだわらず、自分がこれまで蓄積した知識、技術等のノウハウを後世に伝え、残したいという方も出てくる。
ヘッドハンティングの候補となる40代半ばあたりからこの欲求が強まってくるようで、「これまでの経験を別の分野で活かすことができるなら」や「地方の発展に貢献できるなら」と動機付けされる方が意外と多いのである。場合よっては、地方を超えて就業先が東南アジアなどの途上国の工場ということでも快く移籍される方もいるほどだ。
ヘッドハンティングで声がかかるような方は、現職で実績を残して周囲からの評判が高い傾向にあり、そのほとんどが転職未経験者である。つまり20数年間ずっと1社で働いてきた方々で、決して現職への満足度が低い訳ではない。それにも関わらず転職を決意されるのは、まさにこの『キャリアの社会還元』が自身の心の正義となり、慣れ親しんだ現職を離れ、新たな環境に向かわせる強い動機となるのである。
地場企業であったり、遠隔地の工場だからと言って「優秀な即戦力人材は応募して来ないだろう」とはなから諦める必要はない。自分のキャリアを社会還元したいというミドルからシニアの人材は意外と多いという事実を念頭に、募集戦略を考えるのもひとつではないだろうか。(黒瀬 千雅)