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生命保険選択の具体的な方法 その二 ~死亡にも入院、介護にも幅広く備えられるのは最低の保険~

»2014年1月12日
生保のトリセツ

生命保険選択の具体的な方法 その二 ~死亡にも入院、介護にも幅広く備えられるのは最低の保険~

しごとにん

10年余り生命保険業に所属し、一社専属の大手国内生保から乗合い代理店、保険ショップ運営を経験。現在は業界から距離を置き、俯瞰できる立場で個別相談や執筆活動を行っております。

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前回の「その一」では、これまでお話ししたことを含めて生命保険の<基本的構造>の続きです。
以下3つの要素のうち今回は2と3についてお話しします。

1、なるべく見直さなくても継続できるようにする
2、見直しが必要になった際にでも、コントロールしやすい形にする
3、目先の保険料に惑わされない

前回「1、なるべく見直さなくても継続できるようにする」として、目的別にそれぞれ保障期間を決めることにより、なるべく見直しをしなくて済むように初期設定をするのが賢明であると書きました。

それでも人生何が起きるか分かりません。
でありますから、「2、見直しが必要になった際にでも、コントロールしやすい形にする」ことが重要になります。

などと大仰に言っていますが、やりかたはアホみたに簡単です。

そうです、それぞれ目的に合わせて別々の契約にすればいいだけです。

前回と同じ例で説明すると・・・

①遺族に対する保障は⇒奥様が年金を受給する年齢まで⇒奥様が65歳までご主人が「収入保障」などの「定期保険」に加入

②お葬式代や死後の整理資金⇒一生涯⇒一生涯を保障する「終身保険」に加入

③入院やがん、介護の保障⇒一生涯⇒一生涯を保障する「医療保険」「介護保険」に加入

④育資金⇒末子(一番下のお子様)が大学を卒業するまで⇒お子さまの年齢に合わせて「学資保険」または解約返戻金を利用できる「終身保険」に加入

上記のように目的、用途に合わせてそれぞれ別々に保険商品を選び、できれば一社のみの選択でなく、複数社から見積もりを取ってより条件が良いところから選ぶのが賢明です。

とてもアホみたいに当たり前のこと書いていてアホみたいですね。
しかし、この「アホみたいに当たり前のこと」が生命保険の世界ではあまりできていないのですね。

現実的に国内生保で提案され、実際に加入しているもののほとんどが①②③がパッケージになっております。(さすがに④は別ポリシーですが)

現実的には「終身保険」を主契約として「定期保険」や「医療保険」「介護保険」など特約として<死亡にも入院、介護にも幅広く備えられる>とても便利で使い勝手はよさそうなパケージになります。

黒と赤のボールペンとシャーペンや消しゴムまでついた「シャーボ」は便利なパッケージ商品ですが、黒ボールペンのインクの消耗が早いので替芯を買って交換するケースが想定されると思います。

ある日、ゼブラ社の都合で黒ボールペン部分を<主契約>にして、その他が<特約>になったとます。すると、黒ボールペンの替芯を買いに行くと・・・

「誠に申し訳ございませんが、黒ボールペン部分は<主契約>のお取り扱いしかございませんので、別途お買い求めいただきます。それと<主契約>の黒ボールペン部分が喪失した場合には<特約>となる赤ボールペン、シャープペンシル、消しゴム部分につきましては無効となりますので回収させていただきます」

などと「ファッ!?」としか反応できないような、わけの分からないことを言われてしまいます。

かなり強引な例えなのですが、感覚としてはこれぐらいの理不尽さがあると思って下さい。

<主契約>である黒ボールペン部分だけを残すことはできますが、<特約>であるシャーペン(定期保険部分)や赤ボールペン(医療保険分)、消しゴム(介護保険部分)だけを残す事はできません。

「黒がなくなったから赤とシャーペンだけで使おう」などと生ぬるいことはできないのです。ではなく、当たり前のことができないのです。

「便利で割安」であろう、生命保険については「どれでも同じだろうし、考えるのが面倒だから一社の信頼できる(だろう)担当者に任せればいいだろう」という要素も加わり、担当者に任せれば<死亡にも入院、介護にも幅広く備えられる>パッケージを提案されて、意図も簡単に受け入れられてしまいす。

アホみたいに当たり前のことですが、「シャーボ」などの消耗品と生命保険は同じではないことはご理解いただけると思います。

そして「3、目先の保険料に惑わされない」です。

生命保険の契約の最終決定において保険料は重要であることは言うまでもありませんが、初めから保険料から入るのは筋が良くありません。

まず保険料の比較をするには、その比較対象が問題になります。
ライフネット生命のように一番高い大手国内生保と比較して「保険料半分にしました」と威張っていても、まともで良心的なところと比べると、ケースによっては割高となってしまうことは、このブログで何十回も指摘しています。

また、「先進医療特約」についてですが、「めったにおこらない」「適用できる病院が限られる」といった理由で付加する必要がない、と主張する向きがあります。

確かに、この「先進医療特約」を餌に、既契約や他社契約を新契約に切り替えさせる戦略があったことは事実ですが(既契約にこの特約を付加できるケースがほとんどありませんでした)、この部分の保険料は100円前後です。

それこそ「缶コーヒー1杯分」で、健康保険適用外の高額となる先進医療にかかる実費を2000万円まで補償できるのであれば利用する価値があると思います。

もちろん、30年続ければ<100円×12ヵ月×30年=36,000円>のコストがかかるのは無駄と判断するのはありですが、「缶コーヒー1杯分」をケチったばっかりに先進医療が受けられなくなったらどれだけ残念かということと、きちんと天秤にかけて判断する必要があるかと思います。

つまり、かなり割り高である大手国内生保は論外ですが、必要性や希望するポイント、小額で担保できる保障など吟味して、生命保険を作り上げることが重要で、最終的に毎月の負担などを考慮して保険料を調節すべきです。

前回も含めてまとめますと、これらの「生命保険選択の具体的な方法」を実行するには手間がかかります。

勧誘してくるニッセイの御姉さまの言うとおりにして、署名捺印すれば済むところを、ある程度自分で調べたり、複数扱う担当者から説明を受けるにしても、いくつかの保険会社から何件かの見積もりを貰い、説明を受け、自分の考えをまとめる必要があります。

「これひとつに加入しておけば、死亡にも入院、介護にも幅広く備えられるますよ」という悪魔の囁きに屈してしまうのは賢明ではないと考えますが如何でしょうか。

 

追記

数日前の日経新聞で「ニッセイが4月に保険料最大7%値下げ」とうい記事がありました。

今回の決算でこれまで重荷となっていた「逆ザヤ」が解消されたことを受けたものなのですが、これまでが高すぎたので大勢に影響はないと考えます。

それより、この記事のプレスリリースの一番下に「前納率の引き下げ」「契約者貸付率の値上げ」がサラっと書いてあったことは見逃せません。

前者は、お客様から早めに保険料をお預かりした際の保険料に割引率、後者は、お客様へ貸付を行った際の貸付金利の引き上げです。

目立つところで値下げをしておいて、目立たぬところでその穴埋めを行っているわけで、なんだか姑息だと感じるの私だけ?