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簿外に内部留保!?

»2011年3月 7日
生保のトリセツ

簿外に内部留保!?

しごとにん

10年余り生命保険業に所属し、一社専属の大手国内生保から乗合い代理店、保険ショップ運営を経験。現在は業界から距離を置き、俯瞰できる立場で個別相談や執筆活動を行っております。

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今回は経営者向けのお話になります。
企業保険といえば、保険会社とのバーターによる加入(出資や仕事の見返り)
が大手企業やこれから上場を目指すところなどで見受けられますが、今回お話し
したいのは、中小から中堅企業で納税しているところ、つまり多少でも儲かって
いる企業の戦略的な生命保険の活用についてです。

保険会社とは何のしがらみがなく、フリーハンドで保険会社および保険商品を
選べる状況であれば様々なやり方があります。

まずは創立間もなく、それほど資金的な余裕はないが社長に万一のことがあった
らシャレにならない会社であれば、一番安い保険料で年間の粗利額程度の保障額
の10年定期保険に加入するのがいいかと思います。
この場合掛け捨ての定期保険ですので、保険料は損金計上つまり経費扱いとなり
「税引き前」の利益から差し引かれます。

近い将来上場を目論む企業であれば、社長に万一のことがあった場合の備えとして
終身保険を使うケースがあります。
保険料は「税引き後」の利益からバランスシートの資産に計上されます。
つまり目に見える「内部留保」となるわけで、毎年積み上がりますので対外的に
イメージがよくなります。

このように、同じ生命保険の保険料でも簿外に飛んで行ってしまう経費扱いのもの
と、簿内に留保されて資産計上されるものがあるのです。

まとめると

定期保険(掛け捨てタイプ)の保険料・・経費扱いで簿外へ
終身保険(貯蓄タイプ)の保険料・・税引き後利益から資産計上され内部留保

となります。
これが基本的な考え方で、別段騒ぐことはありません。

ここからが本題です。

定期保険は基本的に掛け捨てですので、長期間に保障があるもの(100歳定期
保険なんてものがあります)についても、満期なった時点での解約返戻金はあり
ませんが、その寸前まで解約返戻金が存在しているのです。
その「解約返戻金」は保険会社に積み立てられています。

定期保険の保険料ですので、経費扱いで簿外に消えてしまいますが、それによる
解約返戻金は間違いなく保険会社に存在することがあり得るのです。
この保険会社に積み立てられた解約返戻金は、会社のバランスシートには載って
きません

これが「簿外に内部留保」の実態です。

ただ、実際の保険商品として100歳定期保険など長期に渡るものは、解約返戻金
が大きくなるので1/2損金となります。
(被保険者の年齢や期間によって決まります)
その場合でも半分は経費となり、半分は資産計上となりますが、保険会社に積み立
てられる契約返戻金は発生するので「簿外に内部留保」はつくれます。

すでにお気づきの方がいらっしゃると思いますが、「税引き前」の利益からうまく
経費をねん出できれば節税になります。
(経費になった分については課税されません)
「税金を払うなら・・・」と社員旅行の経費にしたり、宣伝広告費に使って社内の
モチベーションアップや販売促進に使うことはよくありますが、これらの効果が
目に見えてキャッシュになって残るとは限りません。
「簿外に内部留保」という形で保険会社に積み立てられるのであれば、確実に
キャッシュになります。
これは選択肢として知っておいて損はないと思います。
「簿外に内部留保」をつくっておけば資金面で備えることができるのです。
以下簡単にまとめます。

・保険契約を解約(一部解約も可)して解約返戻金を赤字解消などに流用
・解約返戻金の一部(概ね80%程度)の範囲で借入ができる(保険会社による)

資金面でピンチのときに使える可能性があるわけですね。
注意点としては、ピンチでないときに解約してしまうと、利益扱いになり、当期
利益とともに課税されてしましますので、これまでの節税効果がパーになってし
まいます。

活用方法としては、会社のリスクヘッジとして社長様の死亡保障を担保すると
同時に、資金面での備えを「簿外の内部留保」で行い、社長様が勇退するまで
「簿外の内部留保」が残っていればそれを退職金にして下さい。
バランスシートを崩すことなく、堂々と退職金がもらえます。
(簿外なので会社の資産を取り崩すことはありません)
ただ、勇退までに大きなピンチがあって、資金繰りに使ってしまって「簿外の
内部留保」がなくなってしまった場合は社長様の退職金はなしです。

「簿外の内部留保」は会社のヘソクリです。
こっそりつくって上手く活用しましょう。

 

追記

今回紹介したような定期保険の解約返戻金の借入については、

保険会社によって対応が変わります。

傾向としては大手国内生保は貸してくれないところが多く、外資系や

カタカナ系、損保系は貸してくれることが多いです。