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前回は保険代理店などが保険会社から受け取る販売手数料について、結構シビア
な内容だったと思いますが、今回お話したいのは業界のコアな裏事情など全く関係の
ない事柄です。
この3月にアフラックから新しいがん保険「Days」が発売されました。
おそらく今回の「週刊ダイヤモンド」発売準備段階でプレスリリースされたか
どうか微妙なタイミングでしたが、商品名が明確に掲載されているので、内容は
把握されていたはずです。
上記を前提にお話しします。
この商品の前に東京海上日動あんしん生命から「がん治療支援保険」が発売され
ておりましたが、このアフラックの「Days」は、がん保険のパイオニアとしての
意地をかけて「がん治療支援保険」の対抗策として発売されたことは明確です。
「がん治療支援保険」はその名の通り、これまでのがん保険の常道であった入院
や手術の給付と診断給付金にプラスして抗がん剤治療や健康保険適用外の先進医
療の給付金を付加して「治療支援」という側面を全面に出しています。
30年以上前から「がん治療支援」を旗印に商売をしていたアフラックはお株を
奪われた格好となり、「フォルテ」という商品を2年ほど前に出したばかりでし
たが、急遽対抗策を講じたように見えます。
各社が切磋琢磨して商品内容が充実するのは、消費者にとっていいことですが、
この両者とも保険料がかなり高騰してしまっています。
新しい付加価値があるので、値段が上がるのは仕方ない面がありますが、メインと
なる通常の医療保険より保険料負担が大きくなるプランニングがスタンダードと
いうのはどうかと思います。
詳細はこちらにありますのでご覧下さい。
http://www.hoken-erabi.net/seihoshohin/goods/7496.htm
保険料が高騰している点は同誌でも指摘しておりますが、今回申し上げたいのは
上記の記事の後半で記述している部分です。
この「Days」と「がん治療支援保険」に共通する大問題点があります。
どちらも終身のがん保険(「がん治療支援保険」は定期もあり)を基本として
加入したとすると保険料は生涯一定になるはずです。
実際に基本部分は一定で変動しませんが、上記記事で指摘しておりますように、
今回の目玉というべき付加価値の多くが10年更新になっています。
ということは10年ごとに保険料が上がっていくわけです。
歳をとるほど上げ幅は大きくなり、上記で例を挙げた30歳女性が加入した場合
70歳時点でほぼ倍の保険料になってしまいます。
つまり、高齢になるほど、がんに罹りやすくなるほど負担が増えて継続が難しく
なる可能性があるのです。
基本(主契約となる部分)は終身タイプとして目くらましをして、美味しそうな
特約は10年更新で保険料がアップする構造は、大昔からある生命保険の
「定期付終身保険の悲劇」という問題とまったく同じです。
死亡の必要保障額は年齢によって低減していくので、10年更新で10年ごとに
保障額を減らして保険料を抑えるといる理屈がありますが(これもどうかと思い
ますが一般論としてです。こいつについては今度書きます)、がんの保障には
全く馴染まないと思わざるをえません。
それでも、「10年ごとに同じ内容を継続すれば保険料が大幅にアップする」と
いう事実をしっかりお客様が認識していればいいのですが、一般の方が保険会社
のパンフレットなどを見て理解するのは難しいと思います。
実際の保険料は、更新しない部分とする部分を分けて、更新しない部分に10年
ごとの更新にてアップする保険料を足すだけで算出できますが、今回の「週刊ダ
イヤモンド」の保険特集では、この「Days」と「がん治療支援保険」の特約
更新問題にはまったく触れていません。
「オススメの保険商品4分野ベストランキング」と称して、保険商品に詳しい
ファイナンシャルプランナーや保険ジャーナリスト、乗合代理店経営者22人に
お勧めの保険商品や活用法を記述していますが、この問題を指摘している方が誰
一人としていないのです。
万一気付いていないのなら、生命保険の看板を下ろさなければならないほど
初歩的且つ重要な事柄であり、気付いていてネグっていたとしたら論外です。
まさか「手数料が保険料の58.5%の『がん治療支援保険』が、特約が更新
で保険料が上がることがバレると売り辛くなるから黙っていよう」なんてことは
ないと信じます。(ジャーナリストは売り手でないので関係ありませんが)
おそらくは、ご自分のクライアントや見込み客にはきちんと説明してご提案され
ていると思われまので、「週刊ダイヤモンド」の編集段階で担当者の認識不足の
ためカットされてしまったかもしれません。
ともあれ、アウトされたものは大特集でありながら、新商品のウイークポイント
を指摘できていないので結果として「間抜け」なものになってしまっています。
せっかく保険会社や保険代理店の広告による圧力がないのに非常にもったいない
です。
保険ジャーナリズムの明日はどっちだ?