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生命保険が存在しない前提で考えてみる

»2011年11月 9日
生保のトリセツ

生命保険が存在しない前提で考えてみる

しごとにん

10年余り生命保険業に所属し、一社専属の大手国内生保から乗合い代理店、保険ショップ運営を経験。現在は業界から距離を置き、俯瞰できる立場で個別相談や執筆活動を行っております。

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生命保険の加入を検討する際の方法については、巷でいろいろ語られております。
ライフプランを設定してキャッシュフロー表を作成して、無駄のない保障をなるべく負担の少ない保険料にて加入する・・・と言ったところでしょうか。

まあ、上記は当たり前のお話しなのですが、どうしても担当者の思惑や性格や立場によって大きくブレることは覚悟しなければなりません。

端的に申し上げれば、担当者が扱える、または得意とする商品に誘導するためのライフプランやキャッシュフロー表になってしまうことが大半です。

「そんなはずはない。たくさんの保険会社を扱っている保険ショップなんかでは中立的な提案をしていいるはずだ」と思われている方がいらっしゃるかもしれませんが、それは幻想です。

以前にもお話しておりますが、保険募集人(保険を売る人)はニーズ喚起から自らが扱う商品に当てはめる訓練を受けているわけで、それができないと生活が成り立ちませんので、悪気はなくとも恣意的な分析、提案にならざるを得ず、結果的にベストまたベターな保険加入ができたとしても結果論でしかありません。(もちろんそうでない良心的なケースもあります)

そこでいつものように「生命保険のリテラシーの向上」の話しになりそうですが、今回視点を変えます。
"生命保険なんか初めから存在しない"との前提で思考することのお勧めです。
生命保険のリテラシーの前にその他の周辺事情のリテラシーの向上が必要ということです。

国の制度や勤め先の福利厚生なども含めて、真剣に検証しましょう。
生命保険で儲ける、得をするなどのヨコシマな考えを排除するためにも必要です。

病気やケガで入院してしまったらどうなってしまうのか、考えてみます。
勤め人であれば有給休暇や傷病手当があり、ある程度カバーできると分かりますが、自営業の方はそうではありません。

もし明日にでも交通事故で自分が死んだらどうなるのか、遺族年金はいくら出るのか、会社から死亡弔慰金はあるのか、事故の相手先からはどのぐらいの補償が見込めるのか、なども知っておく必要がありますね。

その他にも介護や難病指定、先進医療や将来の医療制度や年金制度の変化の経過など知っておかなければならないことはたくさんあります。

なぜこんなことを持ち出したかと言うと、生命保険提案の際に保険募集人はこのような話はある程度するはずですが、都合の悪いことは言わないと思ったほうがいいからです。

また単に保険募集人が無知で出てこないケースも少なくありませんが、どちらにしろ消費者側の周辺事情のリテラシーが低ければいいようにやられてしまいます。

極端な例ですが、自宅を購入したばかりの奥様が、ある国内最大手の女性営業職員にこう言われたそうです。

「ご主人が亡くなったら、住宅ローンを奥様だけで払えますか?そうでなければ保障を上積みしないと大変なことになりますよ」

もう十年ほど前の実話なので、さすがに最近はここまでひどい話はないようですが、実際にこの奥様は保障の追加をしてしまったようです。

通常は住宅ローンを組む際に「団体信用生命保険」が義務付けられており、加入できなければローンが通りません。
(現在はフラット35など任意加入のところが一部あります)
ですから、ご主人に万一のことがあれば住宅ローンは「団体信用生命保険」で銀行に一括返済されますのでチャラになり、その分住宅費用がなくなるわけですから必要保障額は下がりますので、反対に保険金額の削減を検討する状況となります。

この営業職員が知らなかったにせよ、知っていて言っていたにせよ、余分な保障を買わされたことになりますが、「団体信用生命保険」のことをこの奥様が知っていれば防御できたはずです。

考え方として「生命保険が存在しない」を前提に周辺事情のリテラシーを高めて、その上でどうしても担保できなところを"仕方なく"生命保険で最低限補う、というのが正しいのではないかと思いますが如何でしょうか。







追記
「団体信用生命保険」は生命保険の一種ですが、営業職員が売りに来るものではなく、公共性の高い住宅ローンのしくみに組み込まれていますので、通常の生命保険とは分けて考えてみました。