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今月の初旬に発売された「週刊ダイヤモンド3/9号」の保険特集の記事において、保険ショップ最大手の社長が脱税疑惑で家宅捜査された記事に関連して、主に保険ショップを含む乗り合い代理店(複数の保険会社を扱う代理店)において「中立」を謳うことは不適切ではないか、というのがありました。
なぜ不適切なのかというと、最大手の社長の保険ショップなどのような大きな代理店については、一部の保険会社が多大な手数料を支払っており、その多大な手数料を支払っている保険会社の商品を最優先で販売推進しているのではないか、と赤裸々な事実(らしきもの)をもとに告発しています。
また、金融審議会において、乗り合い代理店が「中立・公平」を謳うことの禁止や販売手数料の開示を審議している、とも伝えれらています。
これは業界で「祭り」が始まるぞ・・・と一部で騒然としているようです。
しかし、もし「中立・公平」を謳うことを禁止されたとしても、それこそ看板の書き換えだけして違う言葉を見つけるだけのことになると思います。
そもそも、乗り合い代理店のおける「中立」的な提案というのにはかなり違和感があります。
「中立」ということは誰もが損しない、あるいは損も得も均等に分かち合うことですよね。
つまり、代理店も保険会社も、もちろんお客様も利益を均等に分配し、そして複数あるお取引先の保険会社の売上シェアも均等に配分するようなことが、本来の意味でも「中立」だと思います。
どうであれ、「脱税保険ショップ」の社長がTVCMを中心に「中立」を謳っているのは噴飯ものであることは異論がないでしょう。
末端の現場の代理店としては「中立」ではなく「お客様の立場」により近いポジションが本来の姿であり、使い古された表現ですが、「販売代理店」でなく「購買代理店」があることが乗り合い代理店の存在価値であると言えると思います。
「手数料開示」については、正確に提示するのは物理的にほぼ不可能です。
目先の手数料は設計書をつくった段階で表示することは可能ですが、今回の議論ではオーバーライド、つまりボーナスにあたる部分が過大であり、トータルで多大な手数料が一部の保険会社で発生している、というものですが、オーバーライドについては対象となる期間が終了するまで確定しません。
※例えば25年度上半期、などで区切るのです。
仮にお客様の提示するとしたら「だいたいこのぐらいになる予定です」としか言えませんので、あまり意味がないと思います。
でも、考えてみて下さい。
保険料がほぼ同じだとして、診断給付金100万円のがん保険を比較した場合、A社は診断給付金は一回限りだけれど通院がつけられる、O社は診断給付金は2年間があけば複数回給付があるが通院がつけられないとした場合、どちらを選ぶでしょうか?
どちらにしようかな、と考えていると「A社の手数料は保険料の65%で、O社は55%です」と担当者から提示されたらどうでしょう。
そんなことどうでもよくありませんか。
たまたま、違う保険ショップでがん保険の相談をしたら、同じようにA社とO社を勧められ場合に「A社の手数料は50%でO社は65%です」ということもあります。
※代理店のランクによってレートが変わるのです。
どうでもいい上に混乱を招くだけですね。
それよりも、「診断給付金があれば通院の費用は賄えるから、診断給付金が複数回でるO社の方がいい」と判断する方が大切で、代理店がもらう手数料などお客様には関係ありません。
どちらも解約返戻金がなく、一生涯の保険料支払いで一生涯の保障と同条件ですので、単純にスペックを比較して好きな方ととればいいだけの話しです。
本当の問題は、A社しか取り扱っていない代理店やショップが「がん保険はこれが最新です」と勧めて販売することによるお客様の「機会損失」と、A社O社両方扱っているのに手数料率に目がくらみ「がん保険はこれが最高です」とA社のみ勧めて販売することです。
その際に「手数料は65%です」と提示されても「だから何」ってなもんです。
「それは手数料貰いすぎだから保険料まけてよ」と言っても負かるわけではありません。
つまり、「手数料開示」をしても全く問題解決にはならないのです。
また、「生命保険は金融商品なのだから投資信託同様に手数料を開示するべきだ」と頓珍漢なことを常時垂れ流している著名な方々がいらっしゃいます。
垂れ流しの著名な方々は生命保険のことをあまりご存知ないようで(おっと、垂れ流しの方々に「保険評論家」のお方がいたけど、まっいっか)、生命保険については設計書というものがもれなく付いてきます。
それにはその商品のスペックはもとより、解約返戻金があるものはその金額の推移がきちんと明記されます。
その場で確定できない、お客様にとってどうでもいい手数料ではなく、お客様が負担するまたは利益となる金額や保障内容は明確に提示されるわけです。
生命保険業界全体で見渡せば、大手国内生保の特約てんこ盛りの10年更新や、安く見せかけて選択の機会を奪うようなネット生保に比べれば、乗り合い代理店や同形態の保険ショップで保険加入することは十数倍マシです。(手数料優先で勧められて加入してもです)
本質的な問題は、上記したようなお客様の「機会ロス」であり、前回に書いた「思考停止」を誘発して明らかにお客様に不利益な商品を販売している「マシじゃない」保険会社です。
それでも今回のように、乗り合い代理店や保険ショップにおいて、手数料優先で恣意的な販売というのは結果オーライのことはあっても、問題であることは間違いありません。
ここで言いたいことは、<乗り合い代理店が「中立・公平」を謳うことの禁止や販売手数料の開示>することが手数料優先で恣意的な販売の解決策ではない、ということです。
解決策としては、消費者自身が最低限の「生命保険リテラシー」を身につけることしかないように思います。
誤解を恐れずに言えば、そもそも「無料相談」とやらに消費者があまり考えず乗り合い代理店に突っ込んでしまっては「鴨ねぎ」状態であります。
担当者の善意にすべて委ねてしまって、「手数料開示」があったところで何も変わりません。
もちろん「購買代理店」に徹している誠実な担当者の方が多いと認識しておりますが、それを保証するものはどこにもありません。
なので最低限、消費者としての「生命保険リテラシー」を身につける必要がある、というか身に着けないと今回の議論の問題解決にならないのです。
次回から最低限どのような生命保険リテラシーを身に着ければいいのか、考えて行きたいと思います。
乗り合い代理店の「中立」性については以前このブログで書いています。
「乗合代理店の舞台ウラ」
http://blogs.bizmakoto.jp/shigotonin/entry/2401.html
また、「手数料開示」についてもこちらで書きました。
「生命保険の手数料は公開すべきか?」
①http://blogs.bizmakoto.jp/shigotonin/entry/4144.html
②http://blogs.bizmakoto.jp/shigotonin/entry/4179.html