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うつは甘え? 心の風邪?

うつは甘え? 心の風邪?

大森 洋明

REBT心理士。うつ状態から回復した経験を経て、SEからカウンセラーへの転身を図りつつ、カウンセリングを世の中に浸透させようと奮闘中。座右の銘は、菅沼憲治先生に頂いた「生死一期」という言葉。

当ブログ「あなたが持つカウンセリングのイメージは間違っている!! …可能性が高いですよ」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/t2k/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


(※文章中にうつなどの単語が出てきます。 読んでいる最中に気分が悪くなった場合は、無理をせずブラウザのページを閉じてください。 どうしても内容が知りたい場合には、他の人に読んでもらって後で話を聞くと良いでしょう)

 ネットでは「うつは甘え」などという釣り針が落ちていることがありますが、なかにはそんな大きな釣り針に釣られてしまっている人がいるかもしれません。 そもそも、うつになったことのない人には分かりにくい苦しみというのは、正しく世間に認識されているのでしょうか?

 そんな疑問もあり何回かに分けて、うつについて少し見つめなおしていこうと思います。
 若干主観が入った書き方になると思いますので、その辺を考慮しつつ、内容については個々人で判断していただきたいと思います。

 もし、すでにうつの人の場合、内容を読んで憤ったり悲観することはありません。 たとえ文章中に出てくる症状の例などが、あなたのそれより軽くても重くても、文章中の表現はあくまで一例であり比較する必要はないのです。
 あくまで啓蒙の一環だと思ってください。

 さて、「うつは心の風邪」などという言葉を聞いたことがありませんか?
 恐らくは、うつという正体不明のものを必要以上に恐れさせない偏見除外のため、もしくは、うつにかかる人の多さ(生涯有病率は6.6%、12ヶ月有病率は2.1%※註1)からでた言葉なのではないかと推測するのですが、この言葉が広まったおかげでうつは世間に認知されたものの、同時にうつの苦しさやうつの治療期間などについての誤解が広まってしまったようにも思います。
 それを憂慮してか、「うつは心の風邪」の「風邪」の部分を違う(もう少し重大な)病気やケガに置き換える人もいます。

 しかし最近では、うつはこのように表現されているようです。

「心の苦痛に加えて、他の医療的な疾病と同等の身体症状」

「他の医療的な疾病ってなんだよ」という話ですが、例として出ていたのはがんや冠動脈疾患などだったので、(私が調査研究したのではないので迂闊なことは言えませんが)その辺と比べるとイメージしやすいのかと思います。

 がん+心の苦痛、冠動脈疾患+心の苦痛・・・最初の標語が出来てから何年か経過するうちに、風邪からずいぶんランクアップしました。

 今回はまず、ある程度目に見える身体症状から見ていきたいと思います。 身体症状には、ざっくりと以下のようなものがあります。

  • めまい
  • 吐き気
  • 不眠
  • 下痢、腹痛
  • 倦怠感、疲労感

 全員に同じ症状が出るわけではなく、この中でも強く出るもの、出ないものがあります。 他にも多様な症状が存在し(頭痛、陣痛、痺れ、味覚障害など)、一概にうつと言っても症状は人によって異なります。

 言葉だけで見ると、「このくらいの症状どうとでもなるだろう」と思う方もいるのではないでしょうか。
 症状の程度にもよりますが、次第に重症化してくると、言葉の内容が以下のような感じになると思ってください。

めまい まっすぐ歩けない。 立ち止まるとこける。 壁伝いでもよろめく。 寝転がっているだけでも乗り物酔いの症状が出る。 駅のホームに立つと非常に危ない(線路に向かって下り傾斜になっている場合は特に危険)。
吐き気 基本的に常時吐き気がする。 乗り物は論外。 少しでも緊張すると程度が強まる。 食欲減退が伴わない場合は、おなかがすくのに吐き気で食べるのが大変。 食べても戻す場合、歯にも注意が必要。
不眠 暗い時間帯は生物的な問題で基本眠れない。 朝方眠りにつけるが変に覚醒する場合もある。 夜中に覚醒しているときは、ただ目が覚めているわけではなく、体は眠りたがっているのに頭の一部だけ異様に覚醒して眠いのに無理やり起こされている状態。 頭の中で休みたがっている部分と覚醒している部分の差が激しくなるのを感じて、気分がどんどん悪くなる。
下痢、
腹痛
吐き気とほぼ同じ。 ちなみに、普通の人は「洩らしたらどうしよう」と考えるが、本当の地獄は洩らした後どうするか。 準備のいい人は、常備薬と大人用おむつ(2枚重ね推奨)、替えのズボンなどを持っておくと便利。
倦怠感、
疲労感
異様に体が重くて手足が空をから振るくらいの動きしかできない。 ひっくり返されたカメ以下。 一度うつ伏せになって膝を曲げて上体の下に入れるのが一番力を使わない起き方だが、症状が酷くなると寝返りを打てないため、あおむけに寝た時点で詰む。 無理に起きようとすると一気に気分が悪くなって1日何もできなくなる。  疲労感は、数日寝た程度では微塵も回復しないのが特徴。

 風邪などの場合、これらに似た症状が出ても数日ですし、食事もおかゆなどにして我慢することもできるでしょう。
 しかし、うつの場合、この症状が数か月~数年単位で続いてしまうため、「少し我慢すれば」という対処法で今までどうにかなってきた人には想像が難しい艱難辛苦(かんなんしんく)とストレスが続いていると考えていいと思います。

 まれに、この状態で働いてる人がいたりしますが、止めた方がいいでしょう。 当たり前ですが、回復が遅れる、または悪化する可能性に加えて事故を起こす可能性が高まります。
 もちろん本人の生活もあるため、難しい選択になると思いますが・・・。

 これらの症状に加えて、心の苦痛があります。
 次回は、心の苦痛に焦点を当てて書いていく予定です。

 

註1:一般社団法人うつ病の予防・治療日本委員会 (2008). うつ病診療の要点-10 (Report). p.5