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うつは甘え? 心の苦痛編

うつは甘え? 心の苦痛編

大森 洋明

REBT心理士。うつ状態から回復した経験を経て、SEからカウンセラーへの転身を図りつつ、カウンセリングを世の中に浸透させようと奮闘中。座右の銘は、菅沼憲治先生に頂いた「生死一期」という言葉。

当ブログ「あなたが持つカウンセリングのイメージは間違っている!! …可能性が高いですよ」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/t2k/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


(※文章中にうつなどの単語が出てきます。 読んでいる最中に気分が悪くなった場合は、無理をせずブラウザのページを閉じてください。 どうしても内容が知りたい場合には、他の人に読んでもらって後で話を聞くと良いでしょう)

 前回からしばらく間が空いてしまいましたが、今回は予定通り「心の苦痛」に焦点を当てていきたいと思います。

 さて、うつの時に持つ感情というのは、どのようなものでしょうか?
 一般的によく聞く判断基準は、「憂うつ感」「気分が落ち込む」といった症状が2週間以上続いた場合・・・のようなものだと思います。 ということは、何となく落ち込んで憂うつな感じ(黄昏ているイメージ?)が続いているのが、うつの時に感じるすべてなのでしょうか?

 これを聞いた印象だと、「憂うつくらい、ちょっと遊んでふっ飛ばせよ!」と言いたくなりもしますが、実際にはそういうわけではありません。
 では、うつの時の心の中はどのようになっているのでしょうか?

 どのような感情が想起しているかを見る前にちょっとだけ寄り道をして、うつの人の思考がどのようなものになっているのかを見てみましょう。
 以下は、ありがちな一例です。

「明日こそは会社に行かなければ・・・」
「でも、体がつらい」
「でも、頑張って行かないと居場所がなくなる」
「居場所がなくなったら、クビになるかもしれない」
「クビになったら、貯蓄はすぐに底をつく」
「そうなったら、路上生活をするしかない」
「路上生活で生きていける自信はない」
「きっと悲惨な死に方をするだろう」
「そうならないためにも、頑張って会社に行こう」
「でも、会社に行ったとき、最近休んでいた自分をチームリーダーはどういう目で見るだろう?」
「あのリーダーのことだ、きっと自分を責めるに違いない」
「リーダーだけじゃなくて、周りのメンバーも『今更何しに来たんだ? この役立たずめ!』と思っているかもしれない」
「会社の人に会いたくない」
「誰とも会いたくない・・・ずっと家にいたい」
「それでも会社に行かなければ、食べていけない」
「でも、いつも、めまいがするし、吐き気もしている・・・こんな状態で大丈夫だろうか?」
「吐き気がしているから、会社まで電車に1時間も乗っていられない」
「なんとか会社についても、会社でも吐き気がしている」
「集中力も持続しないし、自分の作業に納得がいかない」
「きっとみんなも、『こいつの作業はゴミクズだ』とか思っているに違いない」
「会社に行くことすらままならない、人間として最低限のこともできていない」
「自分はダメな人間だ」

 ・・・という感じでしょうか?
(※うつの方は自分と比べないように気を付けてください)

 上述の文章を読んで、「俺はこんな考え方しないから、うつにはならないな」「こんなこと考えてるから、うつになるんだよ」とか思った方・・・充分にうつになる素質があります。
 ・・・思わなくても、うつにならないと断言できる人はそうそう居ないと思いますが。

 上述の思考は通常、人が成長をして行く過程で自然と備わってくる自分を防衛する機能の一つです。 何か自分の心を傷つけるような出来事があった時などに、(意識下、もしくは、無意識下において)自然にこのような思考が生まれ、自分の心が深く傷つくのを防ごうとしてくれます(ただし、これらの思考は推論であるため現実的ではない考え方が多く、上の例のように逆に自分を傷つける結果になることもあります)。

 しかし、うつの場合はショックな出来事に非常に過敏で、かつ、ショックからの回復が非常に遅い状態になっているため、これらの自分が生み出した1つ1つの推論に自分自身がショックを受け続け、そのショックから自分を守ろうと、さらに思考を加速させます。 よっぽど他の何かに集中していない限りは(そもそも、うつの時に集中力なんかありませんが)、この思考を自分で止めることはできません。
 長年つちかってきた思考法であるため、それをどうにかしようとするには、新たな別の方法を訓練する必要があるのです。

 また、ネガティブな方向に思考を重ねていくのは、考え続けると思考がネガティブな方向に進むという人間本来の生物的な傾向も起因しているかもしれません。

 こうして、うつになった場合はどんどんネガティブな思考を繰り返し、上記の理由によりさらにネガティブな思考を(意識的、もしくは、無意識的に)重ねていき、それを自分で止めることができなくなるのです。

 これらの思考にショックを受け続け、想起されるうつの人の感情というのは、以下のようなものとなります。

  • 耐えられない気分の沈み、苦痛
  • 将来への不安
  • 酷い悲しみ、絶望
  • 失敗感、強い後悔
  • 満足感のなさ、不満
  • ダメ人間と感じる、罪悪感
  • 被罰感、罰を受けるべきだと思う
  • 自分への憎しみ、失望感
  • 自分を責める、自尊感の低さ
  • 消えてしまいたいと感じる、希死感
  • イライラしてじっとしていられない、焦燥感

 ・・・など。

 上記の感情がないまぜになって、処理しきれなくなった感じがうつの時の心の状態です。
 これらの強い感情は、身体症状や行動にも影響を及ぼします。

 たとえば、悲しみは涙を流し、食欲を減退させ、行動を著しく制限します。

 不安が強くなると体が緊張して筋肉が縮こまり、動作が小さくなります。 酷くなると、胎児のような格好になり動くことができなくなります。
 また、不安はより危険度が高くなる夜の脅威から身を守るため、不眠を引き起こすと考えられます。

 焦燥感は希死感と合わさると、一気に自殺を行動に移す可能性が高まります。
(※うつは死者が出るものだということを再認識してください。 自殺についても後々多少なり書く予定です)

 ここまでで分かるように、うつになれば元の性格にかかわらず、上述のような状態になる可能性は誰にでもあるのです。

 もうしばらく、うつについての内容が続く予定です。