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幼稚園での「ICT活用インストラクター業務」
教育ICTをデザインする人へ
幼稚園での「ICT活用インストラクター業務」
株式会社NEL&M代表取締役。佐賀県を拠点に、教育ICTデザイナーとして教育系事業コンサルやコーチング業務を展開中。全国的にも稀な幼稚園でのICT活用インストラクター業務も注目されている。
当ブログ「教育ICTをデザインする人へ」は、2015年4月6日から新しいURL「http://blogs.itmedia.co.jp/tanaka_kohei/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。
5月より、佐賀市の学校法人高岸幼稚園で、「ICT活用インストラクター業務」をスタートしました。
どういう業務内容か?というと、
iPadなどの必要機材を、
専任のインストラクター(ICT支援員能力認定試験合格者)が持参し、
事前のセッティング
授業中の操作サポート
事後の片付け
までを一連で提供する。というものです。
トラブルがあれば即座に対応。
学校現場で5年間ICT支援員を経験したインストラクターです。
黒子に徹しながら、さりげなく授業進行を支えていきます。
現在は、年長さんクラスで実践しています。
その名は「ICT(あいしーてぃー)タイム」
1台のiPadをスタンドに設置
AppleTVをプロジェクタに接続
無線LAN環境の中でAirPlayできる状況です。
ケーブルに引っかかる心配もありません。
iPadの画面を大きく映して、全員で「場」を共有します。
子どもたちには、基本の「おやくそく」を伝えています。
「まつ」「みる」「おうえんする」
今ではすっかり定着して、自分たちで唱和してくれるほどです。
導入は、「絵本の読み聞かせ」から。
デジタルえほんでも、朗読はできるだけ担任の先生に読んでもらいます。
その方が、子どもたちが安心して聴いてくれます。
大きな画面で「えほん」を見る事で、集中し、教室内に落ち着いた空気が流れていきます。
iPadなどの刺激的なメデァイは、与え方によっては過度に興奮させてしまい、肝心の学びが薄まる傾向があります。
そうならない為にも、導入の中で「静かな集中」を促していきます。
この日はアルファベットアプリで、ABCを学びました。
海外に転園した友達にもらった英語のえほんを読もう!
という動機からスタートした取り組みです。
アルファベットをドラッグしながら、iPadの操作にも慣れていきます。
子どもたちは
「がんばれ〜」「そっち〜」
と、声をかけながら、友達が操作する様子をしっかり見つめています。
楽しそうに、場に参加してくれます。
おやくそくも、守ってくれました。
かけ声は、回を重ねるごとに具体的な言葉に変わっていきます。
「右〜」「上のしろいところ〜」「もっと下〜」
わかりやすく伝えようと言う工夫や気持ちが伝わってきます。
表面だけを見ると、「楽しい」「集中していた」で終わるのですが、
実践の前に、我々は指導案を作成し、担任の先生と打ち合わせを行い、活用の「ねらい」を明確にしています。
実践の後は、その日の様子を振り返り、「到達度合い」を確認し、「次へのてだて」を考えます。
それを、実践の記録として残しています。
「ねらい」を絞る時に常に意識しているのは
「キー・コンピテンシーの育成です」
星印の項目を重視しながらアプリの選定やICTの活用方法を探っています。
その基で、子どもたちの状況に応じて指導案を練っています。
同時に、従来取り組まれてきた保育や教育活動は、これまで以上に大切にしたいと考えています。
とくに、「場」を共有する事には重きを置いています。
日頃の活動と、友だちや先生との関わりの充実がある中に、
「ICT」を少しだけ取り入れることで
「つくる」「つたえる」「かかわる」
といったチカラを今以上に拡げたいと願っています。
スタートしたての頃、園児たちに一つだけ質問しました。
「家で、スマホやタブレット、パソコンを使って遊んでいますか?」
全員が手を挙げました。予想以上でした。
スマホやタブレットなど、ICT環境は子どもたちの生活のすぐ近くに存在しています。
操作はお手のモノ。スイスイです。
一方、保護者の方からは
「ゲームばっかりしている」「あまり使わせたくない」「良いイメージがない」
といった声が聞こえてきます。
スマホやタブレットは、大人でも依存や中毒になる事があるほど、刺激が強いメディアです。
子どもにとっては、尚更です。
放っておくと、夢中になりすぎてしまいます。
それを「集中している」という見方もできるかもしれませんが
メディアに「支配されているのでは?」という視点を持つ事も大切だと考えています。
「ストーリーや想像/創造の範囲が限定されないアプリ」
「周囲の人たちと一緒に楽しめる活用」
「操作時間は極力短く、体験の充実を促す活用」
こういう視点から選んだアプリや学びのデザインを通して
子どもたちや先生方、保護者の方と一緒に
「よりよい活用」「よりよい関わり方」を深め、広めていきたいと思います。
幼保での取り組みに関して着想してから数年。
近年は、「小学校ではもう遅い」と考え、方略を練ってきました。
イメージがカタチになる喜びを噛み締めています。
同時に、取り組み始めた責任を全うしたいと思います。
今後も、定期的にレポートしていきます。
※本ブログは、個人ブログ「教育ICTデザイナー 田中康平のブログ」2014年5月2日の記事の一部を修正しています。