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チョット待った!学校のタブレット端末導入への警笛

チョット待った!学校のタブレット端末導入への警笛

田中 康平

株式会社NEL&M代表取締役。佐賀県を拠点に、教育ICTデザイナーとして教育系事業コンサルやコーチング業務を展開中。全国的にも稀な幼稚園でのICT活用インストラクター業務も注目されている。

当ブログ「教育ICTをデザインする人へ」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/tanaka_kohei/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


学校のPC教室整備

今年はタブレット化の波が押し寄せ、各地で自治体予算による整備が進んでいます。

新しICT環境により

「授業が変わる!」 「学力向上につながる!」

といった期待も高まるところですが、

整備されるICT環境のデザインによっては、全く効果を見ず使われないまま埃をかぶる事になりかねません。

既にそのような事例も出始めています。

最新のデバイスを学習に取り入れることは良いことであり、学びを変えるイノベーションのように見えているのでしょう。

しかし、実際の学校の授業は、環境の変化で変わってしまうほど骨の細い営みではありません。

耳障りのよいキャッチコピー通りにいかないという事を、理解する必要があります。

タブレット端末導入の動きに水を差すようですが、あえて今「警笛」を鳴らしたいと思います。

話題に上がるのは、1to1の様な大規模整備ではなく、従来のPC教室整備予算で行うケースが殆どです。

当然、台数は40台前後。

集めれば1人1台になり、グループ活用もできる規模です。

整備内容は、PC教室の端末がタブレット端末に置き換わり、無線LAN環境を追加するというもの。

予算は限られていますから、そう贅沢はできません。

教育委員会側も、導入業者側も、PC教室時代の仕事の延長です。

タブレット端末ですから、PC教室を飛び出し、普通教室で活用する事をイメージしています。

「普段の授業で活用する」

この事をどれだけ真摯にイメージできたか?

で整備の善し悪しは決まります。

最近

「タブレット端末の活用が進まない。どうすればよいか?」

という相談が寄せられます。

ICT環境を聞くと、PC教室時代と何ら変わらない構成。

「活用のポイントを絞らないと難しいですね」

と答えます。

なぜ難しいのか?

PC教室と普通教室の違いを表にしてみました。f:id:tanakou64:20140820175041p:plain

「求められるものが違う」

という事がお分かりいただけるのではないでしょうか?

言い換えると、其々のメリット、デメリットが見えてくると思います。

普段の授業で活用する場合、授業進行や思考の妨げになっては本末転倒です。

タブレット端末の活用は、フューチャースクール等の実証研究により、ある程度の知見が蓄積され、報告書なども公開されています。

そこに書かれた事だけを参考にしてはいけません。

現地に行って、実際に活用している先生方、子ども達の本音を聞いてみてください。

普段の授業で活用する場合、「ごまかし」がききません。

「使いやすいもの」だけが残り、後は淘汰されます。

整備に関わる立場によって、様々な目的はあるでしょうが、

今のままでは、活用されない機器やシステムを産み、今まで以上に批判の対象となる可能性があります。

事業評価を曖昧にする事は難しくなります。

提案する方は、授業を見に行きましょう。

そして、自分が「授業をする、受ける」立場で考えてみましょう。

できれば、ICTを駆使した模擬授業をやってみてください。

机上の論理では「2つの操作で簡単にできる」ことが、いざ授業の流れの中で行うと、実は手間が増え流れを切ってしまうことを体感できると思います。

整備する教育委員会の方は、先生方の話に耳を傾けましょう。

整備ありきではダメです。

活用ありきで考えてください。

その為の教育ビジョンを明確にして、到達すべき目的地から逆算した整備計画を立ててください。

その先に1to1を考えているのなら尚更です。

普通教室・普段の授業の中で活用するという意味合いや重みを受け止めて

教育委員会、導入業者、そして先生、子どもたちが

「よかった」

と思えるカタチを模索してください。

そうしなければ、短期的な目標達成はできても

長期的な発展・繁栄は望めないはずです。

今、焦って導入する必要はないと、私は思います。

※本ブログは、個人ブログ「教育ICTデザイナー 田中康平のブログ」2014年8月20日の記事の一部を修正しています。