誠ブログは2015年4月6日に「オルタナティブ・ブログ」になりました。
各ブロガーの新規エントリーは「オルタナティブ・ブログ」でご覧ください。

熟達化と人材育成

熟達化と人材育成

宮崎 照行

衆議院議員秘書を経て、2009年 Training Officeを設立して独立。組織行動論、心理学、教育工学、経営学等のエビデンスを用いながら、クライアントの戦略に沿った研修プログラムの構築や運営を手がけている。

当ブログ「本当の人材育成:研修の現場から」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/training-office/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


「できる人の定義は?」

 世の中には、なんでもパッパと判断を下して行動に移して、それが的確な人がいる。モノ作りの場面においても、サッサと仕上げて寸分の違いだけでなく見栄えも綺麗に仕上げる職人さんなど、「できるな~」と思う人がたくさんいる。私もその域を目指しているのだが、まだまだ試行錯誤の渦中にいるのはいうまでもない。このように人のスキルは持って生まれたものだろうか?答えは否である。だれでも、最初からできる人なんていない。様々な積み重ねの賜である。この記事では、スキル修得のプロセスを丁寧にみていきたいと思う。

「学習の4つのプロセス」

 人がスキルを修得するプロセスとして学習理論のに「熟達化の4段階」という考えがある。ここでいう熟達化とは、特定の分野における高度な能力の修得のプロセスのことをいう。しかし、高度な能力の修得といわれても具体的にどのようなことかイメージがし難いと思う。これから説明する「学習の4つのプロセス」を理解いただければイメージがわいてくるのではないだろうか?人が初心者から熟達化するためには、以下の1~4のプロセスをたどるといわれている。

  1. 無意識的無能
      ⇓
  2. 意識的無能
      ⇓
  3. 意識的有能
      ⇓
  4. 無意識的有能

 これらを一つ一つ詳しく見ていこう。

  1. 無意識的無能
    知らないということを知らない状態である。仕事の目標を達成するために獲得しなければならい知識やスキルがあるということすら知らない状態である。成果の観点からいくと全くのゼロ。

  2. 意識的無能
    知らないということを知っている状態である。仕事の目標を達成するために獲得しなければならない知識やスキルがあるということを認識しているが、まだ具体的な行動には移してはいない。

  3. 意識的有能
    仕事の目標を達成するために獲得しなければならない知識やスキルを獲得し、具体的行動を起こすことができる状態。ただ、実際に行動するときには、集中して特別な配慮が必要となる。また、未知の状況に遭遇すると足踏みをしてしまう可能性がある。

  4. 無意識的有能
    仕事の目標を達成するために獲得しなければならない知識やスキルを獲得し、具体的な行動を起こすことができる状態。獲得した知識やスキルは自分の身体の一部のような感覚にあり、どのような状況にも瞬時に判断・対応できる。

 4の無意識的有能状態がまさしく熟達の域、つまり、特定の分野における高度な能力を有している状態なのだ。言い換えると、特定の分野における高度な能力とは、獲得した知識やスキルが自分自身の身体の一部となり、どのような状況においても瞬時に且つ正確に判断・対応できる状態だ。

「熟達化への道」

 人材育成における究極の目標は、さまざまな状況において高い生産性をあげる人材を育成することである。極端な話、だれでも最初(生まれたとき)は(1)無意識的無能の状態である。それが、教育を受け経験を重ねて(2)意識的無能に移行する。特に、この移行段階では先達の協力的なフォローが必要になる。
 次に、(2)→(3)への移行だが、(2)の意識的無能のステージでは、何をやらなければいけないのかを本人は自覚しているので、具体的行動ができる環境を整え、適度な練習とフィードバックの機会を設けることが重要になる。ただ、無闇に経験を重ねればいいというわけではない。平行して、自ら行動を振り返ったり考えたりしなければならない。
 最後に、(3)→(4)への移行である。(1)→(2)、(2)→(3)へは比較的だれでも達成することが可能であるが、(3)→(4)への移行はそう簡単にはいかない。それは、さまざま文脈に応じて瞬時に且つ正確に判断・対応できるようになるためには、膨大な質の高い経験(=深い省察を伴う経験)や仕事や取り組みに対する思い(例えて言うならば、心の底から天職だと思うこと)、誘惑に負けない強い意志などが必要となるからである。つまり、これらの条件をクリアしないと「躰に染み込まされたスキルや知識」は実現できないということになる。

---------------------------------------------------

日本において、熟達化のステップを側面から支える制度が充実していた。それは徒弟制度である。世界に誇る文化財や工芸品、工業製品が生まれの要因として、徒弟制度が果たしてきた役割は大きい。簡単なテクニックだけの詰め込み式を見直して、この徒弟制度に混迷究める現在の人材育成のヒントがあるのではないだろうか?


===============================================
Training Office 代表 宮﨑 照行

講演・研修のお問合せは下記のアドレスにて受け付けております
E-mail:miyateru@training-office.biz

================================================