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これから ~ 今後を考える ~

これから ~ 今後を考える ~

藤 優之

福岡県出身、1977年生まれ。横浜国立大学卒業後、上場会社の経営企画室長を経てトーマツコンサルティング(現デロイトトーマツコンサルティング)に勤務。幅広い業界に対し、新規事業立案・実行支援、事業再建、M&A等多数のプロジェクトを経験。Facebook http://www.facebook.com/MasayukiTou twitterID:@MasayukiTou

当ブログ「何でも日常のことから経営的に考えてみる」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/MasayukiTou/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


みなさん、はじめまして。

 わたしは現在、地方自治体で公務員をしています。地方公務員になるまでは、上場企業で経営企画室長や外資系経営コンサルティング会社で、経営戦略の立案や企業買収支援を行ってきました。

 しかし、個別企業からの支援ではなく、地域全体の産業支援を行いたく地方公務員になった次第です。

 そんなわたしが、日常で見たり聞いたりすることについて、経営的な視点でもってアレコレと書いていこうと思います。

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・これからを考える

 3月11日に東北地方で大地震が発生しました。被害に合われた方々が心配でなりません。また、亡くなられた方も多数にのぼってきてしまっています。ご冥福をお祈りいたします。

 このような大規模な自然災害が発生したとき、多くの方は政府や企業の対応の悪さを批判したりすることと思います。もちろん対応が結果として悪くなってしまうこともあるでしょう。

 しかし、批判するだけでは何もはじまりません。

 また、備えを完璧にしておく必要がある、とも申しません。企業や政府がどんなに備えをしておいたとしても、今回のような想像を絶するような災害までを想定して備えをしておくということは非常に難しいことでしょう。

 過去、三陸沖ではいくども地震による津波に襲われてきました。

 明治29年に発生した三陸海岸津波では、2万6千人もの死者が出ました。なお、当時発生した地震はM8.5だったということです。

 今回の地震では、M9.0と明治に発生した地震よりも巨大でした。過去を踏まえて仮に準備をしておいたとしても、過去発生した地震よりもさらに大きなM9.0規模の地震を想定しておくというのは非常に困難です。

 むしろこれから考えることは、今後企業等がどういう備えをしておけばよいか、ということです。


 では、今後どうすればいいのでしょうか。わたしが考えるこれからできること(しておかなければならないこと)は、以下の3つです。

 1 資金不足への対応策を考える
 2 リスク管理体制を見直す
 3 いつもよりも多くの利益が出た場合、社会へ還元することを検討しておく

 まず、1の資金不足への対応策を考える必要があります。

 東北地方における産業の低迷、円高、定期停電などの影響により、今後しばらくは消費活動が停滞することが見込まれます。

 東北地方に顧客がある会社や、製品の製造を行っていた会社では、どうしても経済活動が停滞してきます。そうすると、給与が減ってしまうため支出を抑え出します。

 また、金融機関も、顧客が東北地方に偏在していたり工場がある場合などは、融資を厳しくしないとも限りません。

 このような状況に自社が陥ったときにはじめて「どうするか」を考えても遅いのです。今のうちに、売上高が半減しても資金がうまく回るのか、ということを検討しておきましょう。

 実際に売上高が半減しなくても、その水準で資金が回るようであれば、むしろ資金効率が高まっていいと言えます。


 つぎに、2のリスク管理体制の見直しについてです。

 言葉が悪いかもしれませんが、経営者の方にとっては、自社のリスク管理体制を見直す機会でもあります。

 会社の成長を考えるのも大事ですが、「会社が倒産しない」ことを考えるのも大事です。従業員が経営者であるあなたの肩に乗っています。しっかりとリスク管理を考えておきましょう。


 考えるコツは、自社のビジネスサイクルを考えることです。

 取引先から仕入れを行い、工場で加工し、顧客へ販売するという流れを、ビジネスサイクルといいます。

 この流れを順に追っていきながら、リスクを網羅的に洗い出していきましょう。


 仕入先が倒産したらどうするか? 新たな仕入先を常に選定しているか?
 工場が倒壊したらどうするか? 顧客へ商品を届ける流通網が遮断されたらどうするか?

 このように考えていけば、難しくはないはずです。


 最後に、3番目である、いつもよりも多く利益が出たときの場合を考えてみます。

 今回のような自然災害が発生したときに、自社の利益だけを追求している企業では大きな成功は見込めません。

 企業も社会の一員です。社会に受け入れられてはじめて、企業が成り立っています。これは、震災から日本が立ち直るためにも、必要不可欠な考え方です。

 物資を送ったり、ボランティアに名乗りを上げるだけが支援ではありません。震災に遭われた方を優先して雇用する、利益の何%かを寄付する、自社製品・サービスを無償で(もしくは安価で)提供するなど、いろいろとあるかと思います。

 自社だけをみている企業で、大きく成長した会社をわたしは知りません。

 個人でできることには限りがあります。わたしも微力ながら、募金をさせていただきました。

 しかし、本当に個人ができることは、「募金」「日常支援物資の提供」「献血」など、選択肢が非常に少ないです。むしろ、企業という組織で支援を考えるときには、個人一人ひとりが考えていることよりも、多くのことができます。

 善意は広がっていってくれると思っています。ぜひ、できること、少しのことでいいので何か考えてみてください。