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LINEを見れば分かる? 仲のいい夫婦、危険な夫婦

LINEを見れば分かる? 仲のいい夫婦、危険な夫婦

荒木 亨二

ビジネスコンサルタント&執筆業。荒木News Consulting代表。業界をまたいで中小企業経営者のサポートを行う「究極のフリーランス」。2012年より、ビジネス書の執筆ならびに雑誌の連載をスタート。

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 先日、高校の同級生で忘年会を開いた。参加者はオトコばかり、しかもサッカー部やラグビー部を中心とした集まりとあって、相当にむさい面々の飲み会となった。

 同窓会といえば、やはり過去の話題がメインとなるもので、特に体育会系はキツかった練習や最後の試合など、想い出話は尽きることがない。ちなみに、参加者は40代半ば。つまり、高校時代は30年近く前になるのだが、不思議なくらいに皆の記憶は鮮明だ。

 さて、いつもならひたすら過去の笑い話に終始するのだが、今回はちょっと様子が異なった。話題は、現在のこと。それも「奥さんと普段、LINEでどんなやり取りをしているのか」というニッチなネタで盛り上がったのだ。そのキッカケは、一生独身を通すと思われていたスワン君(仮名)の、突然の結婚報告だった。

「あ、ちょっと待って。奥さんにLINE返しておくから...」

 飲み会の最中、スワン君は小まめにLINEで奥さんに返信していた。デカい図体を屈めてスマホを覗き込む彼の横顔は、微かにニヤけていた。確かに40代半ばとはいえ、まだ新婚6か月。幸せいっぱいの時期なのだろう。そんな彼はいかにも可愛らしく映るのだが、その一方で、彼のLINEの文面を見てかなり引いた。

 ラブリー過ぎるのだ。立派なオッサンのくせに、まるで女子高生のようなLINE。

 コメントの先頭と文末には、必ずハートマークがあった。多い場合は5つほどのハートが並ぶ。スタンプも‶愛しているよ〟的なモノばかりで、もちろんコメントも、むずがゆくなるほどの甘い言葉が並ぶ。彼は飲み会の最中、みなの前でしれっと、そんなラブリーなLINEを打っているのだ。

「スワン、ちょっとスマホ見せろよ」

「別に構わないけど」

 スワン君のLINEの画面をスクロールさせると、彼は日に何度も、奥さんとラブリーなやり取りを続けており、みなが唖然となった。彼以外はみな、結婚して10年以上のベテランばかり。奥さんとこんなラブラブなやり取りをしている者など、いるはずもない。そもそも彼は、こんなヘラヘラしたキャラだったろうか...。

「夫婦喧嘩は犬も食わぬ」というように、夫婦間のことは、決して他人には分からないものだ。100万組の夫婦がいれば、100万通りの夫婦が存在するワケで、そこには100万通りの‶秘密の世界〟があるはずだ。

 ふと目にした友人のLINE、まさか他人に見せるなんて想像していない「夫婦間のやり取り」は、無防備かつ生活感に溢れるからこそ、素の夫婦生活が垣間見えてオモシロイのかもしれないー。

 そこから、みなで夫婦間のLINEのやり取りを‶それぞれ見せ合う〟ことになった。元より気心しれた仲間であり、興味津々に覗き合った。

奥さんに謝り続けるイケメン

 15日 20:20 すいません...飲みにいきます 0:30 駅に着きました

 16日 20:40 すいません...飲みにいきます 0:30 駅に着きました

 17日 20:00 すいません...飲みにいきます 0:30 駅に着きました

 イケメンでならしたエビ君(仮名)のLINEを見る限り、彼は日々、奥さんに謝り続けていた。飲みにいくのに、なぜ謝らないといけないのか。それは分からないが、とにかく彼は、毎日謝って暮らしているらしかった。

 もう一つ、LINEから分かることがあった。エビ君は毎日、ほぼ同じ時刻に飲みに行き、同じく、ほぼ毎日、終電で帰宅していた。彼は酒が本当に好きなのか、それとも、家に帰りたくない理由でもあるのだろうか。みなで首を傾げつつ、実際に気になったのは、LINEでの奥さんのシビアな反応だった。

 15日 20:25 はい

 16日 20:41 はい

 17日 20:01 はい

 彼の「すいません」との詫びに対し、奥さんはいつも、たった一言返すのみ。そのシンプルな答えがやけに生々しく、そしてヘビーに思われた。奥さんの無表情な横顔が、とっさに想像された。ちなみに彼の「駅に着いた」との連絡は、すべて既読スルーされていた。

 試しにスクロールしても、ほぼ毎日が「すいません」「はい」の連続。それ以外のやり取り、例えば「今日はご飯何にする?」といった日常会話がどこにも見当たらない。当然ながら、可愛らしいスタンプもない。

 エビ君のLINE画面をみなで覗きながら、誰もが言葉を失っていた。みなは自然に、よからぬ夫婦関係を想像してしまったのだ。しかし、当の彼はちっとも気にする様子がなく、平然とビールを飲んでいた。

一切会話のない、奇妙な夫婦

 次に披露されたLINE画面も、これはこれで奇妙なものだった。毎日頻繁にやり取りしているにも関わらず、殆ど会話がない。というか、文字を使っていない。この夫婦は、スタンプのみでやり取りしていたのだ。

 パンダが転がるスタンプだったり、サルがバナナを食べるスタンプだったり、無言でニンマリするクマだったり、変なオバケが奇妙に動いたり―。意味がまったく不明のやりとりだった。

 彼がそれらスタンプの意味を解説するには、「パンダが転がる=今から会社を出る」「サルがバナナを食べる=今日の晩ごはんは何にする?」「無言でニンマリするクマ=何でもいい」「溶けるパンダ=豚肉を冷凍庫から出して解凍しておいて」「動く変なオバケ=オレは今、忙しい」だそうだ。

 スクロールすると、さらに意味不明なスタンプがびっしり並ぶ。およそ会話らしき形跡はなく、1週間に一度も文字が登場しないこともあったが、この夫婦はこのスタンプの羅列で、きちんと意思疎通ができているそうだ。

 ちなみに、このおかしな夫婦とは、実はボクの話。「今は仕事で忙しいが、深夜にサンドイッチを軽くつまむかもしれないから、そのつもりで」など、複雑な説明をするため、時に50ものスタンプを駆使することもある。

 奥さんいわく「最初から喋れ!」だそうだが、かく言う彼女もひたすらスタンプで尋ねてくるし、彼女もまた、複雑な話をわざわざスタンプで伝えようと試みる。

「会話がないなんて、夫婦の危機じゃないか?」

 誰かが眉をひそめたが、そんなことはない。要は、LINEをジェスチャーゲームのようにして楽しんでいるだけなのだ。このため、奥さんは毎日、地下鉄車内で意味不明なスタンプを‶解読〟しつつ帰宅するのが日課となっている。

女性を確実に喜ばせる方法

 そのほかの友人のLINE画面を見ると、やり取りのスタイルは実に様々だったが、みながそれぞれのやり方で奥さんとコミュニケートしている様子だった。

「オレのことなんだかんだ言って、みんなだって奥さんとラブラブじゃん」

 と笑ったのは、新婚のスワン君だった。確かに、普段は奥さんにぶっきらぼうな者も、実はLINEでは、きちんと優しい言葉を投げかけていたりした。先のエビ君も然り。

 日本の男性は、総じて口下手である。愛情表現がヘタだ。だからこそ、男女関係を円滑にするツールとして、LINEは広まっているのかもしれない。

 そして日本の男性は、こうも思っている。

 言わなくても、愛情は伝わるものさ―。

 はてさて、それはどうだろう? 甚だ疑問である。言わなければ伝わらない場面はあるし、口に出すのが恥ずかしいなら、たまには態度で示す必要もあるに違いない。

 女性を喜ばせたい―。

 友人たちのLINEを見ていて気づいたのは、結局は、そんなシンプルなコトだ。結婚して10年が経過しようと、オジサンになろうと、普段はムッツリしていようと、これこそ全世界のオトコに共通する‶男性本能〟ではなかろうか。

 本来のバレンタインは、男性が女性に花を贈るもの―。フラワーバレンタインの話をちょうど去年の今頃書いたところ、NYに暮らす女性の友人からこんな連絡があった。

「NYのバレンタインってね、奥さんや彼女のオフィスに内緒でお花を届ける男性がけっこう多いのよ。もらった女性は『素敵な旦那さん(彼氏)ネって』褒められるし、贈った男性もオフィスでの認知度アップになるし、何かクールよね」

 なるほど。この方法ならオトコは恥ずかしくないし、女性へのサプライズにもなるし、何より、きっちり愛情を伝えることができる。なるほど。なるほど。

 と、1年前にいたく感心したボクは、現在ブランドプロデュースを手掛けるお花屋『ルポゼ・フルール』に、このアイデアを新サービスとして導入することにした。題して「オフィス・バレンタイン」。

フラワーバレンタイン1.jpg

フラワーバレンタイン2.jpgのサムネイル画像

(とりあえず、幕張新都心店限定でスタート)

 ただし、今年のバレンタインは土曜日。でも、このサービスは誕生日でも使えるし、ホワイトデーにもいけるし、自宅でなく‶あえてオフィスに贈る〟って辺りがいかにもNY流で、ステキだなと思ったのだ。NYに行ったことはないが。

 少しキザじゃないかって? そんなこと気にしていたら、何事も始まらないでしょ。LINEだけじゃ伝わらない愛も、あるってこと。

(荒木News Consulting 荒木亨二)

*イオンの新規ビジネス花屋『ルポゼ・フルール』、ブランドプロデュース中

【著書】

『就職は3秒で決まる。』(主婦の友社)

『名刺は99枚しか残さない』(メディアファクトリー)

【雑誌連載】

『Begin』(世界文化社) 「仕事着八苦YOU!」

『アスキークラウド』(KADOKAWA) 「それでもボクは会社にイタいのです」

『Safari』(日之出出版) 「最後のバブルで踊ろうよ!」