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「生き残るための」文章の書き方(9)twitter140字で鍛える、起承転結メソッド

「生き残るための」文章の書き方(9)twitter140字で鍛える、起承転結メソッド

高瀬 文人

フリーランスのライター/編集者/書籍プロデューサー。 月刊総合誌や『東京人』などに事件からまちの話題、マニアックなテーマまで記事を発表。生命保険会社PR誌の企画制作や単行本の編集も行う。著書に鉄道と地方の再生に生きる鉄道マンの半生を描いたヒューマンドキュメント『鉄道技術者 白井昭』(平凡社、第38回交通図書賞奨励賞)、ボランティアで行っているアドバイスの経験から生まれた『1点差で勝ち抜く就活術』(坂田二郎との共著、平凡社新書)、『ひと目でわかる六法入門』(三省堂編修所、三省堂)の企画・制作。

当ブログ「高瀬文人の「精密な空論」」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/bunjin/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


起承転結の構造の訓練に、twitterは非常に向いている。

しかし読者は、140字でできるだろうか、と思うかもしれない。


■何文字あれば「世界」は描写しきれるか

私は会社勤めをしていた時代に、出版宣伝を担当していたことがあった。新聞広告・雑誌広告や出版案内用に新刊本のコピーを書く。媒体によって120字と90字のパターンがあり、毎月刊行されるさまざまな本の紹介をひたすら書き続けるのである。

120字または90字ぴったりまで文字を埋める必要がある。広告のレイアウトがきれいに見えないからだ。本を作る最初の段階である企画会議を通す際に編集者が起案する企画書はあるが、あてにはならない。実際に本ができるときには企画書と内容が異なることはよくあるからだ。書店に出る前に先行して作られる「見本本」や、「ゲラ」と呼ばれる校正刷りを編集者から借りて読み、その本の特徴をつかむのだ。

最初はわけもわからず手探りでやっていたが、数をこなし、編集者とやりとりするうちに勘どころがつかめてくる。120字または90字あれば、起承転結構造は作れることもわかった。広告はインパクトが命なので、「転」を頭に持って来て、「○○は××か?」と書き出し、起・承・結と続けると評判がよかった。つまり、起承転結の基本をふまえた「破調」である。


別の出版社に会社を転職したら、そこではコピーは60字で、しかも編集者が書くようになっていて宣伝担当者はノータッチであった。60字で起承転結構造を作るのはさすがに無理。手抜きだと思ったが、タコツボ組織なので、他社はどうか、どうしたら広告・宣伝の質が上がるかということを考えない。その会社が面白くて工夫された広告を出すことは、私が退社するまでなかった。

そんな体験があったから、初めてtwitterに接したときにこみ上げてきたのは、一種の「懐かしさ」だった。140字しかない。しかし、140字で充分書ける。


■Twitter140字に起承転結を収めてみよう

おそらく読者は、いままで140字いっぱいに「書ききる」経験はあまりなかったはずだ。だまされたと思ってやってみてほしい。

自分の仕事のこと、身の回りのことを140字いっぱい使って、起承転結構造で書ききってみよう。

最初のうちは大幅にオーバーフローするに違いないが、ムダな表現や言葉を削っていくと、それでも起承転結で140字に収まるはずだ。これを毎日続ける。ミニマムな起承転結構造を書く訓練をしておくと、文章力は格段に上がり、twitter以外の文章表現にも応用が自由自在に利くようになる。いったんミニマムな要素とそのバランス感覚をつかんでしまえば、長い文章は基本的に引き延ばして書けばいいからだ。


ところで、よく、twitterはRTで他人の発言を拾って広めるようにするとフォロワーがつくというが、私はそういう考えは疑問だと感じている。

twitterの世界でフォロワーが多い人は、かつての「アルファブロガー」に似ている(というか、かつてのアルファブロガーは、必ずフォロワーを集めている)。もともと自分の専門性や考えをタイムリーなテーマに合わせてわかりやすく伝えたり、考えを深めて伝えることがすでにできている人たちだ。そもそも、そういう能力に信頼があるから、その人のRTは信頼されるのだ。

だから、自分の発信力を上げたいと思ったら、自分自身が発信する情報の信頼度を高めなくてはならない。アトサキが違うのである。他人のメッセージを広めることもtwitterの重要な機能だが、それを繰り返したところで何も残らない。あくまでも、「自分の発信」を目指す訓練をするべきだ。


では最後に、私のtwitterアカウント(@pointscale)から、最近書いたものをランダムに抜き出してみよう。その構造を見てほしい。なお、これらは今回のテーマに合わせて書いたものではない。

......

「振興銀の社長は取締役会議長だった江上剛になるのか。経営と執行が一体になることで、木村剛コンプライアンスモデルは崩壊。銀行も整理過程に入るだろうから、こだわっても意味ないのか。しかし江上剛は逃げないのだね。」

(日本振興銀行強制捜査で、木村剛元会長逮捕)

起......振興銀の社長は取締役会議長だった江上剛になるのか。

承......経営と執行が一体になることで、木村剛コンプライアンスモデルは崩壊。

転......銀行も整理過程に入るだろうから、こだわっても意味ないのか。

結......しかし江上剛は逃げないのだね。


「東京地方区、元杉並区長の山田宏氏落選。この人は杉並区長のとき、自分でプリウスを運転して座談会に現れたりしていた。地方分権は国政選挙の争点にならないなぁ。ホントは消費税議論に直結しているのだが。私も投票しなかったんだけどね。」

(参議院選挙の結果)


「Googleと並んでの目玉、ディスカヴァーではiPad用写真集アプリ「Discover Visual Reader」の説明を@hoshibayさんも加わってしてくださる。トップが完全にプロダクトを理解されているのに感銘。常時展示ではないようだが、お願いすると見せてもらえる。」

(「東京国際ブックフェア」の感想。@hoshibayさんは、出版社ディスカヴァー・トウェンティワン取締役社長の干場弓子さんのこと)


「小林公夫『東大生・医者・弁護士になれる人の思考法』(ちくまプリマー新書)は、一見あざといようなタイトルだが、厳しい職業へ向かうために何をしたらいいかを具体的に指し示しながら、普遍的な「学問に向き合う態度」について論じている名著だ。」

(新刊の紹介。本を読んだら140字にまとめて感想を紹介してみよう)