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あなたの言う「ブラック企業」は本当にブラックなのか。"ハードワーク企業"と一緒にしないで

»2013年8月 9日
メディアとWebと人材と

あなたの言う「ブラック企業」は本当にブラックなのか。"ハードワーク企業"と一緒にしないで

中嶋 嘉祐

理系学生向け就職情報誌『理系ナビ』初代編集長。ベンチャー2社で事業責任者として上場に向けて貢献するも、ライブドアショック・リーマンショックで未遂に終わる。現在はフリーの事業立ち上げ屋。副業はライター。現在は、MONOistキャリアフォーラムMONOist転職の編集業務等もお手伝い中。

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前回の投稿で続きを......と書いたような気がしますが、なかったことにしてください。思うところあって、久々にブログ再開します。しばらくは書き続けるんじゃないかな、なんて思ってますが、先のことは分かりません。

ちょっと前から、「ブラック企業」問題についてあらためて報道されるようになり、さまざまな言説を見る機会が増えてきました。

私の立場は「ブラック企業ってよくないよね」というありきたりなものなのですが、「そもそも皆さんの言うところの"ブラック企業"って何だろうか」という観点で、今回と次回の2回くらいに分けて、問題提起したいと考えています。

◆ブラック企業と"ハードワーク企業"の違い

「コトバンク」では、ブラック企業のことを「労働者を酷使・選別し、使い捨てにする企業」とあります。過酷な労働環境に置き、ノルマをこなせない社員にプレッシャーを掛け、退職に追い込んではまた新しい社員を採用する企業、といった感じでしょうか。

ただ、中には「過酷な労働環境」が待っている企業=「ブラック企業」と解釈している人もいるように感じます。一方、ブラック企業と同じ過酷な労働環境であっても、将来のことを考えると自分のためになる"ハードワーク企業"もあります。今回は、そんな"ハードワーク企業"とブラック企業とを混同しないでほしい、というお話です。

◆"ハードワーク"と"無闇に働く"は違うこと

1つ、例を挙げましょう。中途の人材紹介会社によく出入りする身としては、「プログラムの書けるエンジニアがいない」という話をよく聞きます。立派な大学を出て、有名な大手SIerで働いている自称エンジニアは、職務経歴書を見ると外注管理くらいしか経験がないことが丸分かり。そんな人材は紹介先がほとんどない――というのが人材紹介会社アルアル話です。

一方、激務で有名なSIerで働く社員は、コンサルティング・要件定義・設計・プログラミング・テストとすべてのプロセスを経験し、若いうちはとにかく自分でプログラムを書かせて社員を鍛えます。ちなみに、その会社名で検索すると、一時期、関連検索ワードに「○○(社名) ブラック」が含まれていました。

しっかりと休みが取れて、「無理をしないで働ける」大手SIerで10年働いた社員と、激務で有名なSIerで「常に自分をストレッチさせ続けて」10年働いた社員。どちらの方が中途の転職マーケットで評価されるかというと、たいていの場合、後者の社員の方が高く評価されます(もちろん、前者が評価されるケースもありますが)。

ただシステム業界には、真の意味での「ブラック企業」も多数存在するようです。自分の今やっている仕事が自分の成長につながっているのか。会社は自分の今後のキャリアのことを考えて、適切なプロジェクト/ポジションを用意してくれているのか。そうした視点を忘れてしまっては、"ハードワーク"でなく、ただ"無闇に働く"ことを求めているブラック企業にいいように使われてしまいます。

◆人材輩出企業・野村證券もブラックなのか?

もう1つ例を挙げましょう。優秀なビジネスパーソンが育つ人材輩出企業として、リクルートなどと並んで野村證券の名前が挙げられることが多いです。

ただ、野村證券は新入社員に通過儀礼を課すことで有名です。今もやっているのかは分かりませんが、新人社員には「名刺集め」が課されるそうです。

「名刺集め」とは要するに飛び込み営業です。ビルの1階から最上階まで、各フロアの企業に飛び込んで、然るべき人の名刺をもらってくる。中に入ると怖い人が出てくる会社に飛び込むこともあれば、「目標枚数が集まるまで帰ってくるな」と言われることもあったなんていう噂もあります。「野村證券 新人 名刺」あたりで検索すれば、このあたりの逸話を語っている野村證券OBのホームページがいくつか見つかると思います。

学生さんがこんな話を聞くと、「そんなことやりたくないな」と思うかもしれません。けれど、野村證券がブラックだから、新人を辞めさせたいから、こんな通過儀礼を用意しているわけではありません。学生の甘えを取り除き、社会の厳しさを教えて学生時代の矮小な枠を取り払い、泥にまみれながら這いつくばってでも目標を達成する――といった気概を持たせるために課しているのでしょう。

新入社員のころに、野村證券の「名刺集め」のような通過儀礼を経験した営業マンと、温室栽培で育った営業マン。実際に売上を作れる営業マンは、たいてい前者でしょう。最近はインバウンドマーケティング等、スマートな営業スタイルに適した人材も求められているとは思いますが、泥臭い営業とスマートな営業、両方できる人材の方が好ましいはずです。

◆ブラック企業と"ハードワーク企業"の境目は?

このような内容を書いていて、思い浮かべたのは学校の運動部の部活動です。少し前に、体罰問題も話題になりましたが、企業で言うなら、まさしくブラック企業。ウサギ跳びや、夏場に水を飲むな、といった非科学的な指導法は排除されるべきです。

ただ確かな指導法に基づいた"ハードワーク"を課す部活で中学あるいは高校の3年間を過すとどうなるでしょうか。厳しい練習をやり遂げた先には、確かに1年前、2年前よりも成長している自分がいるはずです。マッタリと練習をしていた他校のライバルと大きな差が付いていることでしょう。

話が飛び飛びしましたが、ブラック企業と"ハードワーク企業"、そしてマッタリできる"普通の会社"。将来のことを考えて「"ハードワーク企業"で働きたい」と考える若者が増えてきてくれるといいなと私は願っています。――まあ、"ハードワーク企業"を探し出すのはそれなりに難しいんですけどね。



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