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正直過ぎる起業家に贈る「ハッタリ」のテクニック

正直過ぎる起業家に贈る「ハッタリ」のテクニック

波多野 謙介

コラボリズム株式会社 代表取締役で文系プログラマー。超朝型へのスイッチで、仕事と家庭の両立を目指す二児の父。

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ビジネスに「信用」は絶対的に必要なので、正直さ・公正さが起業家にとって必要な資質である事は間違いないんですが、正直さのあまり、話す必要もない社内事情や、取引先とのやり取りをうかうかと話してしまうようでは、逆に信頼を失ってしまいます。

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また「話しが伝わりやすい」という意味では、本質的なところに影響のない範囲で、ハッタリをかますというか、話を盛った方が良い事もあります。細部まで正確な話というのは、注釈がたくさん入れられた文章みたいで、分かりにくいんですよね。


つまり正直さには加減が必要だ、という事なんですが、加減の分からないスーパー正直者の起業家に贈りたい本というのが、今回紹介する「スモールビジネスマネジメント」です。

これ実は僕がある会社を辞める時に元同僚から贈られた本なんですが、自分でもスーパー正直者の部類に入ると思っている僕にとっては、本当に役に立つ本になりました。


この「スモールビジネスマネジメント」という本は、デブラ・クーンツ・トラベルソというコンサルタントが書いた本で、起業したばかりの会社やSOHOが、大企業が提供する商品、サービスを相手に生き残って行くためのノウハウをまとめたもので、特別に正直者向けに書かれているわけではありません。

 
ただ、多分著者がスーパー正直者の部類に入るのでしょう。かなりハッタリを重視していて、具体的にそのテクニックが書かれているところが面白いです。

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せっかくなんで、この本の中で僕の好きな箇所を幾つか引用してみます。


「いつでもオーケー」はやめよう

打合せ日時を決めるとき、手帳も見ずに「来週ならいつでもいいですよ」とは言ってはいけない。他に仕事がないのかと思われる。かわりに、手帳を取り出し、指を走らせ「月曜日であれば、一時から三時、木曜日なら九時から十一時のあいだ、この時間ならお目にかかれます。ご都合はいかがですか?」

暇で仕事のない人よりも、人気のある、引く手あまたな人と仕事をしたいという気持ちはわかる気がします。起業してすぐのスケジュールがガラガラの時でも、それをお客様に分かるようにしない方がいいって事ですね。

ちなみに今の僕は本当にスケジュールきつきつなので「本当は空いてんだろ」って言わないでくださいませ。


仕事をもらったことを過度にありがたがらない

「このところ仕事がなかなか進まなくて・・・。だからこの仕事はとてもありがたいです」この真正直さは、言うのは爽やかかもしれないが、相手にはあなたが仕事がなく、がつがつしているように映る。だから、得策とは言えない。

全然ありがたがらないのも可愛げが無いと思いますが、ありがたがり過ぎるのも良くないという事ですね。スケジュールのテクニックとちょっとかぶってますが、「人気ないんだな」と思われないようにする、というものです。

これに関連して、お客さんに伝える話はとにかくポジティブに、マイナス表現は避けてとかいうのも、よく言われる話です。こういうのって、当たり前の事なんですが、スーパー正直者にはなかなか思いつかない事でもあるんですよね。僕もなかなか完全には染み付いてくれないです。


説明しすぎや、謝罪、自分の意見を正当化することに、時間を無駄遣いしてはならない

これらは、あなたの自身と力強いイメージを台無しにする事になる。簡潔で、事実に基づいた説明による自身あるボディー・ランゲージは、あなたの最も望んでいる結果への近道だ。

欠点を知らせることで安心するお客さん多いので、欠点を伝えること自体は悪くないのですが、スーパー正直者は欠点に「触れる」だけでなく、説明を増やしてそれをフォローしようとする傾向があります。

しかしトータルで、自社製品・サービスを採用してもらった方がお客さんにとってメリットがあると思うのならば、変に弁解に言葉をついやさず、自信のある振る舞いをした方がお互いにとってメリットのある結果になると思います。

 

また、忘れてはならない事として、この著者の基本的なスタンスは「正直さこそ最高のビジネス・ポリシー」である、という点です。あるクライアントに対して嘘をつくように言われた人に対しての下記のアドバイスは、非常に的確に「正直である事の大切さ」を捉えたものです。

私だったらそうしないと思います。私なら『私はあなたのために、嘘はつきません。もし、ここで嘘をつけば、あなたは、私があなたに対しても嘘をつけると思うから』と伝えるでしょう」。

本当の意味での嘘と、テクニックとしての「話し方」や「ハッタリ」は別の事です。これはたくさんのビジネスを経験し、雑多なテクニックを身につけたとしても、ちゃんと心に留めておくべきと思います。


この本、2001年の発刊で現在は販売終了になっているので、今さらという感じではありますが、最近関わった新しいサービス立ち上げ(「作って壊して、また作る」の実践。新サービス立ち上げの楽しさと、反省点を振り返る)の時に、改めて読み返していた事と、この本をくれた元同僚に、先日たまたま出会ったので書いてみました。(お礼は言い忘れましたが...)

今回は正直者に向けて、という切り口で書いたのでハッタリのテクニックに限定して抜粋していますが、本来この本はそれに限らず「小さな会社が大きな会社のサービスに対抗して生き残っていく」ための様々なテクニックや考えかたが具体的な例と共に書かれている、素晴らしい一冊です。

今思い返すと、本をくれるなんて熱い奴だなあと思いますけどね。多分僕も熱いやつだったんでしょう。今度会ったら、ちゃんとお礼を言います。たぶん。