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ビル・ゲイツの子育てとレジのお釣りが速すぎる店員の話
»2011年7月 1日
本当は面白い、BtoBソフトウェアベンダー生活記
ビル・ゲイツの子育てとレジのお釣りが速すぎる店員の話
コラボリズム株式会社 代表取締役で文系プログラマー。超朝型へのスイッチで、仕事と家庭の両立を目指す二児の父。
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僕には二人の子供がいます。なんだかわからない言葉を楽しそうに話しかけてくる1歳8ヶ月の上の子と、産まれたばかりでフカフカの下の子。政治も、経済も、社会も、どのニュースを見ても将来が不安になる世の中で、この子達をどのように育てていくかという事は、いつも気にかかっているテーマとなっています。
そんな訳で子育てに関する記事が気になるこの頃。大富豪ビル・ゲイツはどの様に子供を育てているのか、という興味深い記事を見つけました。そこに書かれている彼の教育方針は次のようなものです。
ビル氏曰く「私の財産からすると、子供達にはほんの少ししか与えないつもりです。つまり、うちの子供達は自分の道を自分で見つけなければならないということです。子供たちには素晴らしい教育を与えるし、それは全て私が払いましょう。健康に関する問題も全て面倒みます。が、子供たちの収入ということを考えると、彼らは自分達の好きな仕事を見つけ働いてお金を得なければなりません。うちの子供は普通の子供です。お手伝いをしてお小遣いをもらう、そういうことです。」
つまり、彼が子供に与えるものは、衣食住に医療、そして教育だけであるという訳ですね。
よく一代で財を築くと言いますが、ビル・ゲイツの場合は「一代」すらかかっていません。彼が一線から退いた時の年齢は50代前半。比類のないソフトウェア企業を築き上げた上で余裕を残して引退し、今は慈善事業として第二の人生を送っている訳ですから、本当に桁外れの天才です。
そんな人間の子育てですから、その方針にも物事の本質に迫る真理があるはずです。
熱中は与えられない
こうしてみると、ビル・ゲイツであっても子供に与える事のできるものは我々とたいして変わらない事がわかります。彼程の人ですから「それ以外のものを子供に与えようとしてもムダ」だとわかっているのでしょう。つまり「自分達の好きな仕事を見つけ働いてお金を得る」事でしか手に入らないものがある、という事です。
では、自分で働くことによってしか得られないものとはなにか?
それはたぶん、マズローの欲求段階説などで説明される「欲求」が満たされるというような状態とは違うものです。そこで得られるものは、満たされるものではなく自分から溢れるもので、欲求ではなく「熱中」なのだと思います。
次から次へと考えが湧き上がり、その実現に夢中になっている起業家は、一日20時間コーディングしていても、ポテチとコーラだけの食事を続けても不満を感じません。
僕には、これは欲求が満たされているというより、不満を感じている暇が無いという事だと思います。
起業家だけではありません。この間、新幹線のホームのベルマートで見た店員さんはまだ二十歳そこそこの若者でしたが、僕がペットボトルとミンティアとおにぎりをレジに置いたと同時に「398円です」と言ってお釣りを出し、僕がお釣りを受け取ったときには次の人に「258円です」と言っていました。
ここまでレジが凄くなる人は、絶対楽しく仕事をしています。彼はどうすれば自分が仕事に熱中できるかを知っているのです。普通の人が日常としか思わないレジ打ちという行為にゲーム性を見出せる。この人も常にレジ打ちを楽しむことで、不満を感じる暇が無いようにしている。
些細な事にせよ、重要な事にせよ「熱中」できる能力を持っていれば、あまり不満を感じずに生きることができます。欲求よりも「熱中」が上回るからです。
そしてやはりたいした事はできない
親が子供の「生存」とか「安全」以外の欲求を満たしてやろうとすると、多分子供は幸せになれないと思います。欲求がいくら満たされたとしても、不満は完全にはなくならない。不満をなくすためには、不満を感じないほど生きることに熱中する事が近道です。
しかし、親は子供に熱中を与える事はできません。子供が小さいうちはゲームでもスポーツでも親から熱中を与えられますが、子供が自分自身の人生を生きるにようになると、熱中は自分でなければ見つけられないものとなっていきます。
親ができる事は、せいぜい子供が自分で考えたり工夫したり、発見したりする事を邪魔しないようにする事、彼らの「楽しむ」能力を潰さないようにしてあげる事くらいではないでしょうか。
結局、たいしたことは出来ませんがビル・ゲイツのような人だってそうしているのです。自信を持って、「たいした事をせずに」いようと思います。