誠ブログは2015年4月6日に「オルタナティブ・ブログ」になりました。
各ブロガーの新規エントリーは「オルタナティブ・ブログ」でご覧ください。
クールビズ - エアコンの設定温度が語る職場の冷房環境を巡る争い
»2011年7月27日
本当は面白い、BtoBソフトウェアベンダー生活記
クールビズ - エアコンの設定温度が語る職場の冷房環境を巡る争い
コラボリズム株式会社 代表取締役で文系プログラマー。超朝型へのスイッチで、仕事と家庭の両立を目指す二児の父。
当ブログ「本当は面白い、BtoBソフトウェアベンダー生活記」は、2015年4月6日から新しいURL「http://blogs.itmedia.co.jp/collaborism/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。
夏の服装は軽装であるのに越したことはないので、個人的にはオフィスでタンクトップもありかも知れないと思いますが、よく考えると女性のいる職場で男がタンクトップを着ていると、それだけでセクハラ的な扱いも受けかねないので、自然と許されるファッションにも限度が出てくるものです。
そうすると暑さ対策は服装では補いきれず、冷房の助けを必要とする事になりますが、エアコンの設定温度にもそれぞれの好みがあるため、職場ではエアコン設定温度を巡る無言の、しかし熾烈な駆け引きが行われることになります。
誠ブログで「クールビズ」のお題が出たので、ちょっと外れますが職場のエアコン設定を巡る駆け引きについてのエントリーです。(ちなみに以下の内容は、節電要求のない例年のお話です。)
個人的にはエアコンが非常に苦手で、エアコン直撃の部屋にいると1時間位で喉がおかしくなってきて、2日目には花粉症のような鼻水に苦しみ、3日目には風邪を引くというエアコン虚弱体質。そのため僕はエアコンの温度を高く設定したがり、他のみんなは低く設定したいという事で、社内には2つのエアコン派閥が形成されます。
かくして駆け引きは始まる
大体朝は掃除がありますから窓を開け放しにしていて、僕も快適な温度で過ごしているのですが、しばらくするといつの間にか肩と背中が芯まで冷えて、頭が重いとか思いながら資料を作ったりメールを書いたり、ふと席を立って冷房を見ると設定温度は23℃。
23℃!多くの企業では冷房は28℃の時代。所帯が小さいからと言って世の流れに無関心であるのはいかがなものか。組織が小さいからこそ環境の変化に敏感であれ。とか思いながらカチカチと冷房の温度設定28℃に変更して席に戻り、温度設定を巡る駆け引きがスタートします。
しばらくすると快適だった温度はまたもや次第にじわじわと下がり始め、さりげなく席を立って設定温度を確認してみると、エアコンの温度は24℃に。
これは明らかにエアコン温度設定低い派の筆頭、Uの仕業。ディスプレイに表示された24℃という数字には次のようなUの主張が込められています。
U:「28℃?この職場はハタノさんだけの職場じゃ無いんですよ。大企業は28℃かもしれませんがウチは別に環境ISOをとってるわけでも無いでしょう?ハタノさんは年をとって干からびているから寒いかも知れませんけど、私達は若者だから暑いんですよ。年寄りの体調にみんなを合わせないでください。」
メッセージを読み取った僕は次のようなメッセージを込めて温度設定を素早く27℃に変える。
ハタノ「いやいや、普通汗だくで暑いとか言い始めるのはオッサンの方でしょう?若者は脂肪が少ないから涼しいんだよ。社会がクールビスを求めているこの時代、大量消費型の生活を続けるのではなく若者らしくトレンドを追うべきだ。せめてこの位の温度で暮らしていけるようにならないとこれからの時代はやっていけない。これは僕からみんなへの親心だ。」
そして、どちらか一方が席を立つ度にエアコンの温度を介して無言の会話が繰りかえされます。
25℃
U:「私たちはハタノさんと違ってスポーツの筋肉が生き残ってて新陳代謝が活発だから汗をかくんですよ。ハタノさんみたいな昔の人はスイカを川の水で冷やしたかも知れないですけど私達は文明が発達してから産まれたんで未開の時代にはもどることは出来ないんです。これ以上暑いと仕事にならないからもう帰ります。」
26℃
ハタノ:「おれだってスイカを川で冷やすのはキャンプの時だけだ!だいたい新陳代謝が活発で汗をかくなら汗が揮発して涼しくなるはずでしょうが!変温動物としての本能を活用して自らを律し、ひいてはエアコンの温度設定を律することができるのが、文明人というものなんだ。これより低い温度は絶対に認められない。」
エアコンの設定温度をパカパカと26にしながら、まあこの26℃が手のうちどころかな、と考えます。温度的にも25℃と26℃で丁度接点になっているし、温度一つで文字通り空気を読み合ってきているのだから、社会人としてこの温度が妥協点となることは少し前から想定されている筈です。それが交渉というものです。
しばらく経って、26℃が設定されたままになっているのを確認にいってみると、エアコンのディスプレイに映る21℃の文字。...なんか変更する気にもなれずスルーしてトイレに向かいます。
そう。このメッセージ性ゼロのエアコン設定はUではなくKの仕業なのです。温度を巡って細かい駆け引きが交わされた事など知らず、また駆け引きに興味もないKはただ「暑い」という理由でこれまでの文脈など全く考慮せず、通りすがりにエアコンの設定温度を限界近くに引き下げたのです。
かくしてエアコンの設定温度を介した駆け引きは「数の論理」の前に惨敗し、僕は一人エアコンの送風口を目張りしたり、耐え切れないときは上着を着るなどしてOLのような生活を送っています。
今年は節電にスーパークールビズですから温度設定高い派の圧勝ですが、このようなエアコンの温度設定に限らず、言葉を交わす事なくやりとりされる無言のメッセージが溢れているのが、良くも悪くも日本の職場環境というものなのでしょう。