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Facebookアカウントで社内システムにログインする未来へのシナリオ

Facebookアカウントで社内システムにログインする未来へのシナリオ

波多野 謙介

コラボリズム株式会社 代表取締役で文系プログラマー。超朝型へのスイッチで、仕事と家庭の両立を目指す二児の父。

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6月28日。もしかするとこの日は将来「ソフトウェアの巨人達による戦いが、新しいフェイズに突入した日」として記憶されているかも知れません。

この同じ日に、巨大な2つのサービスがリリースされました。ひとつは6月28日に招待が始まった「Google+」そしてもうひとつはマイクロソフトOfficeのクラウドサービス「Office 365」(いずれも米国時間の6月28日)です。

「Facebookアカウントで社内システムにログインする未来」とは、この2つのサービスを起点としてマイクロソフトとGoogleの競争が加熱した結果「訪れるかも知れない」未来の事を指しています。

今回はその未来に至るシナリオについて、考えてみたいと思います。

Bonbons Microsoft Office
Bonbons Microsoft Office / Sunfox

熾烈化するOffice市場の競争

シナリオの始まりとなる競争の場は「Office」市場です。

マイクロソフトが支配するOffice関連事業は、同社売上の約30%を占める虎の子です。この市場は参入障壁が高いため、生半可な競合では挑戦することもかなわない、安定性の高い事業でもあります。

このOffice市場を狙うほぼ唯一のライバルがGoogleでした。GoogleはWebブラウザーだけで利用できるGoogle Appsをリリースし、まずはフリーで一般ユーザーをつかみつつ、ゆっくりと必要な機能を進化させて企業向け市場を侵食しています。

しかしマイクロソフトも手をこまねいていた訳ではありません。Google Appsの首根っこを押さえるべく、前述のOffice 365をリリースしました。これによって「Webブラウザーだけで利用できる」というGoogle Appsの長所は消えて無くなり、企業向け市場に長い実績のあるマイクロソフトが一歩優位に立ったように思えます。

Officeとソーシャルとの融合

ところが。Googleには更なる奥の手があります。Office 365と同じ日に開始した「Google+」です。リリース後瞬く間にSNSの三番手につけたこのサービスは、「サークル」等の特徴的な機能から、ビジネスとの親和性が高いという評価が多く見られます。つまり、将来的にはGoogle+はGoogle Appsと連携して、ビジネスとソーシャルが連携する画期的なサービスの軸となる可能性が高いわけです。

これに対し、マイクロソフトはOfficeに連携できる有効なSNSを持っていません。かといって、これから成功するSNSを作るには大変長い時間がかかるでしょう。GoogleもGoogle+を成功させるまでに、数々のプロジェクトを失敗させてきたのですから。

Battleship 1
Battleship 1 / John-Morgan

こうなると、残る方策は提携しかありません。相手はBingによる検索で提携実績があり、同じくGoogleを不倶戴天の敵とするFacebookが最適です。この組み合わせ、考えてみると両者にとって大変メリットのある組み合わせとなりえます。

マイクロソフトとFacebookが提携する事によるメリット

Facebookから見ればGoogle+は初めての脅威であり、そのGoogle+がGoogle Appsと連携して、画期的なビジネスSNSを始めるのは望ましい事ではありません。対抗するための手段が必要です。

そのためのパートナーとして、マイクロソフトほど心強い相手もないでしょう。マイクロソフトはFacebookが得意ではない企業向けビジネスのノウハウと、強力な実行部隊を備えており、Office市場に参入するつもりもないFacebookと利害が一致します。

マイクロソフトからすれば実名ソーシャルの支配者であるFacebookのブランド力をOffoce365に付加する事ができる上に、アカウント連携をうまく導入できれば、7億人といわれる同社のユーザーを(直接でなくても)潜在的な顧客ベースとして勘定できるというメリットもあります。

また、Facebookは、プロフィールにOffice 365の企業名や役職情報を取り込むことで、LinkedInのようなビジネスマッチングのためのプロフィール情報を信頼性の高い形で拡充できるかも知れません。Facebookの企業ファンページにOffice365の連携ポートレットを埋め込むといった連携方法も面白そうです。少し考えただけでも、提携によって可能性がいろいろと広がる組み合わせではないかと思います。

社内システムとの統合も

また、Office 365はActiveDirectoryと連携できますから(現在はActiveDirectoryからOffice 365への一方通行のみですが。)更に飛躍して考えると、企業ポリシーや企業規模によってはFacebookアカウントでドメインにログインできてしまうような未来が訪れないとも限りません。

Community
Community / Jeff Kubina

まあ、ドメインログオンは荒唐無稽かもしれませんが、FacebookアカウントでOffice 365にシングルサインオンできるような事は、管理インターフェイスの出来次第で本当にありえるのではないでしょうか。

ただし、そのためには現在は影も形もない「ビジネスとソーシャルの連携」が、マイクロソフトにとって脅威となるほど魅力的でなければいけないのですが。

ビジネスが生み出す面白い未来

以上、単なる想像でしかありませんが、Office市場の競争の結果、訪れるかもしれない未来について考えてみました。

マイクロソフトが努力し、Googleが努力し、Facebookが力を貸して、企業同士の真剣な競争の結果が、やがて我々の想像を超えた未来を創り出してしまう。本当にビジネスとは面白いものです。

本当にこのシナリオ通りの未来が訪れたら、6月28日の一致はその面白さのスパイスとして使うべく、記憶しておきたいと思います。