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社員が会社を辞める本当の理由
当ブログ「未来の人事を見てみよう」は、2015年4月6日から新しいURL「http://blogs.itmedia.co.jp/creiajp/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。
クレイア・コンサルティングの調です。こんにちは。
人事が頭を悩ます問題の一つに社員の離職があります。なぜ辞めてしまうのか?もう少しなんとか出来なかったのか?あるいは、あの人は辞めてくれてよかった、というのも正直あるでしょう。
当社が実施した意識調査では、一つの結論として、「組織で閉塞感を感じるようになった社員は、やがてその組織から退出することを模索し始める」ことが明らかになりました。
舞台はアメリカになるのですが、人事問題の専門家、Laurie Ruettimann氏は、広く一般的に言われている以下の意見は、実際は違うのではないか、と疑問を投げかけます。
Employees quit jobs because of managers and not money.
社員はお金のためではなく、上司に関する理由で辞めるのだ
実際に何が問題になるか。Ruettimann氏は以下のように述べています。
Most Americans take (and quit) jobs for money. Everything else is secondary to meeting our very basic, economic needs.
And we are barely meeting those needs, anymore.
Nobody Wants to Pay You More Money
多くのアメリカ人はお金で仕事を選んで(そして辞めて)いる。きわめて基礎となる、経済的なニーズに比べれば、他の要素はすべて取るに足らない。
そして我々はもはや、この〔経済的な〕ニーズを満たすことは出来ない。 誰もあなたにより多くを払いたいとは思っていないのだから。
なぜなら、国全体で貧困が進行しているから。
Did you know that 76% of Americans are living paycheck-to-paycheck? Are you aware that fewer than one in four Americans have enough money in their savings account to cover at least six months of expenses? And are you aware that 50% of those surveyed have less than a three-month cushion and 27% had no savings at all? (Yahoo.)
アメリカ人の76%がカツカツのその日暮らしをしていることを知っていますか?少なくとも半年分の生活費をカバーできる貯蓄を持っているのは、アメリカ人全体の4分の1以下だと気づいてますか?そして調査対象者の50%は3カ月分の備えも持っておらず、27%が全く貯蓄が無いことはわかっていますか?
しかし、このような問題意識は表にほとんど広まっていきません。
Unfortunately, the media is telling you the wrong story about work. Business journals, research academics, bloggers and analyst firms treat the whole labor market like a large risk pool. They talk about culture, fit and passion. And while some of their research might be true for some segments of the economy, it is rarely true for all segments of the workforce.
不幸なことに、メディアは仕事について間違ったストーリーを伝えている。ビジネス雑誌や学術研究、ブロガーや分析会社は、労働市場全体を大きなリスクプールとして捉えている。彼らは企業文化や人と組織のフィット感、情熱について大いに語る。そしてそれらの研究のうちのいくつかは経済の中のいくつかのセグメントについては正しいのだ。しかし労働者に関する全てのセグメントについて正しいということはほとんどない。
そして、うまく今の世相を拾えていない理由は、離職についての調査を行う会社自体の問題や、人事が退職者ヒアリングを行う際の聞き方の稚拙にある、といいます。
When you hear that people quit jobs for emotional reasons ? and not money ? that research often comes from organizations like the CEB or Gallup. Those are old, myopic companies that don't necessarily understand the motivations of a new, poor and more diverse American workforce.
人々は金銭的な理由ではなく感情的な理由で仕事を辞める、という話をよく耳にすると思うが、それらの研究はたいていCEB〔Corporate Executive Board〕やギャラップ社といった組織によるものだ。これらの組織は古く、近視眼的で、新たに生まれた貧しくより多様化されたアメリカの労働者のモチベーションについて、必ずしも理解しているわけではないのだ。
Can you imaging asking HR departments ? and polling firms ? to accurately measure and report on the nuanced and emotionally complicated reasons why someone leaves a job?
"Money, bad boss or lack of upward mobility. Pick one."
Please. Nobody asks the right questions. Nobody digs deeper. And the answers are too complicated for a soundbite on the nightly news.
本当に、人事部門や調査会社が多分にニュアンスを含む感情的にも複雑な離職理由について、正しく測定できると信じているんですか?
「お金、ダメな上司、出世機会の無さ。この中から1つ選びなさい」
お願いだから、ちゃんとしてほしい。誰も正しい質問をしていない。誰も深く掘り下げていない。そして出てくるはずの結果は、夜のニュースで効果的に放送される短いキャッチフレーズで納まるのが難しいほど複雑なはず。
さらに悪いことに、特に人が足りてないセグメントを除けば、アメリカの流動性ある労働市場においては、
Companies don't really care why you quit.
Money, bad boss or lack of upward mobility. Nobody cares. Executives complain about the high cost of turnover, but it is actually cheaper to let you go than to address some of the deep and dysfunctional problems in many organizations.
企業は、あなたが会社を辞めた理由について、実は全く気にしていない。
お金なのか、上司なのか、出世なのか。どうでもいい。経営幹部は離職から発生する高い高コストについて不平を漏らすが、多くの組織に横たわる根深い機能不全的な問題を掘り起こしていくよりは、そのままにしておいたほうが実際には安くつくのだ。
故に人事に求められるのは、
If you work in Human Resources, stop being a tool of the machine. Stop perpetuating myths. Start digging deeper to understand your company's compensation structure, the real reason behind turnover, and what you can do to truly create jobs and strengthen the working class in this country.
もし人事で働いているのなら、ただの機械の一部分になってはいけない。虚像を生きながらえさせてはならない。自社の報酬体系と離職の本当の理由、そして職を本当に生み出すために必要なやるべきことや、この国の労働者階級を強化する方法について理解するために、深く掘り下げることを今こそ始めねばならない。
労働慣行をはじめ、おかれた環境はアメリカと日本では大きく異なりますが、より社員にとって、そして真に組織にとって、適切な取り組みを行っていきたいものです。
お読みいただきありがとうございます。
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今組織がおかれた状況を正しく深く掘り下げるには、事前に仮説設定を行い、その仮説を証明するための設問を設計し、調査を実施し、結果を分析する、というプロセスが本来は必要です。汎用的な意識調査・満足度調査で思うような結果が導かれない方は、そもそものやり方が不十分なのかもしれません。上記の記事のとおり、そこで出てきた課題を解決していくのは、何もしないことに比べると実際大変ですけどね。。もし本当に組織の課題を発見し、解決していきたいのであれば、当社の組織診断サービスがおススメです。