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人材開発に注力し過ぎた時に忘れがちなこと

人材開発に注力し過ぎた時に忘れがちなこと

クレイア・コンサルティング

人事・組織領域を専門とする経営コンサルティングファーム、クレイア・コンサルティングの広報・マーケティングチームです。

当ブログ「未来の人事を見てみよう」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/creiajp/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


クレイア・コンサルティングの調です。こんにちは。


少し前にTLNTに掲載されたエントリーをご紹介。


Why Do More Than Half of HiPos Drop Out of Development Programs?
http://www.tlnt.com/2014/07/18/why-do-more-than-half-of-hipos-drop-out-of-development-programs/


原題を直訳すると、「なぜ半数以上の幹部候補生が育成プログラムから脱落するのか?」となります。ここでの脱落は、能力面などが規定のレベルに達せずに脱落した、ということではなく、他社に転職してしまったことを指しているようです。


このHiPoと言う言葉、最近アメリカの人事系のメディアでよく目にするようになりました。なんとなく想像がつく通り、High Potential (高い潜在能力)を持つ人、の意味ですが、特に後継者育成計画(Succession Plan)の俎上に乗るような、ハイレベルな人材を指すことが一般的であり、日本語で言えば幹部候補生に近い位置づけになるでしょうか。


重要な視点としては、ただ財務や営業的な業績(Performance)だけを評価しているのではなく、あくまでPotential(潜在能力)の高さを見ている点でしょう。いわゆるコンピテンシーを重視した視点と言えます。このようなHiPoを将来のリーダーとして育成していくことにより、より確実性の高い将来の企業運営をしていこうという企業の姿が見えてきます。


CEB research shows that organizations with strong leadership can double their revenue and profit growth.

〔著者も属している〕CEBの調査によると、強いリーダーシップを発揮するリーダーのいる組織は売上や利益の成長率を2倍にすることができる。

とすると、リーダーを外から引き入れるか、中で育てていくしかないわけですが、人手不足が深刻化している日本同様、アメリカでもなかなか優秀な人材は獲得できません。そこで内部で育成しよう、というのが最近の流れです。


But all this investment is for naught if a firm's brightest and best take all their "world class" training and hot foot it off to a competitor. SHL Talent Management research shows that a staggering 55 percent drop out of HiPo programs.

しかし企業内で最も聡明で最上級の人材が「世界クラス」の研修を受け、そのまま競合に移ってしまったとしたら、これらの投資は全て水の泡になってしまう。SHL Talent Managementによる調査によると、55%もの社員が幹部候補育成プログラムから離脱しているとのこと。

最近で思い当たるのは、日本の自動車メーカーの高級ブランドの幹部が、アメリカの自動車会社に引き抜かれた件などでしょうか。当社をはじめ、昨今はタレント・マネジメントの流れを受けて、後継者育成計画に力を入れる企業とそれを支援するコンサルティング会社が多くいますが、そこだけに着目せずに、


Given the career risk to an HR executive in telling their CEO that half the top talent in the company is likely to leave within five years, they should not only focus on those development programs but on engaging and retaining HiPos.

5年以内に自社の優秀人材の半分がいなくなりそう、と人事担当役員が社長に言うことのキャリアリスクを考えると、人事は育成プログラムだけなく幹部候補生を動機づけて辞めさせないことへも注力すべきだろう。

とのこと。人材育成に対する投資にはかなりの金額が費やされていますので、それをムダにはしたくないですよね。


では、どうすれば幹部候補生を動機づけ、辞めさせないように出来るのか。著者は以下の3つのステップが必要と解説しています。



1. Show them some love. / 社員に愛情を示す。


63 percent of organizations don't even tell their HiPos that they are high potential.

63%もの組織が、幹部候補生自身に対して、彼らが幹部候補性であるさえ伝えていない

期待していることをきちんと伝えることが愛情。



2. Give them a challenge. / チャレンジングな機会を与える。


Our research shows that 70 percent will stay if they get a challenging task and unconditional support.

我々の調査によると、チャレンジングなタスクや無条件のサポートが得られれば70%の幹部候補生は会社に残る。

仕事の報酬は仕事、ということですね。厳しさと優しさを両立させる。



3. Make them commit. / その仕事にコミットさせる。


A surprising 89 percent of organizations ask for no such commitment.

驚くべきことに89%の組織が幹部候補生からのコミットメントを求めていない。


2.の「無条件」とちょっと矛盾する気もするのですが(笑)、機会と支援を与える代わりに、きちんと社員からのコミットメントを取り付ける作業が重要、と。


ここまで述べてきた一連の流れは、通常真っ当な人事マネジメントを行っていれば、半期/年間の目標設定や評価を行う際に実施されてそうなものではあります。しかしアメリカの幹部候補生に対してこの数字ということは、いかに各企業において狙ったような制度運用が為されていないかの証左でもあるように思われます。


人事制度や幹部候補育成のような人材開発プログラムが多々企業に導入されていますが、どうせならきちんとしたものを導入してきちんと使いこなし、最大の効果を得たいところ。人事と人材開発で部署が分かれている会社も多いかもしれませんが、両面で見ていくことが大切ですね。


ご一読感謝!



今回の記事に関連するものとして、例えば以下のようなサービスを提供しています。


「成果につながる行動」をコンピテンシーとして洗い出して評価を行う手法は、まさにHiPo育成と親和性の高い方法です。


当社ではリーダーシップの開発において、特に「変革」を可能とする人材を発掘・選抜することに主眼を置いています。人材アセスメントはまさにHigh Potentialを見抜く手法です。


人事制度や人材アセスメントだけでなく、育成プログラムの設計と実施も行っています。各組織のニーズに合わせて1つ1つ設計していきます。



2015年の新卒採用を引き続き行っています。組織と人の領域について強い関心があり、今後も継続して学びながら働いていきたいという熱意をお持ちの方、今後、組織や人の領域における専門性を高め、プロフェッショナルとして活躍していきたい方は、ぜひご応募いただければと思います。コンサルタントとコンサルティングスタッフの2職種で、コンサルタントについては第二新卒の方もご応募可能です。