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羨望の力
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本日のエントリは心理学系のお話。妬み(envy)について。
The power of (benign) envy
羨望の力
http://www.psychologytoday.com/blog/ulterior-motives/201105/the-power-benign-envy
そもそも人が自分自身を他人と比べるのは自然なことだそうです。
そして今回のトピックはupward comparison(上方比較:自分より上位の人/モノと比べること)について。
When you make an upward comparison, there are a number of different emotional reactions you might have. As a sax player, I often get to hear amazing musicians play. One reaction to hearing a great musician would be to admire their skill. A second reaction would be to wish that I could play as well. This kind of emotional reaction is a benign envy. I want what the other person has. A third reaction would be to feel a more destructive envy in which I recognize that the other player is better and with that something bad would happen to that player.
上方比較をする際、いくつかの異なる感情的な反応(情緒反応)が起こります。サックス奏者として、私はよく超絶なミュージシャンの演奏を聞きます。そこでのリアクションの一つは、その技巧を称賛/敬服するパターン。二番目には、同じくらい演奏できるようになりたい、と願うパターン。この種の情緒反応は良性の羨み(羨望)です。その人が持っているものを自分も得たいと思うのです。そして三番目のリアクションはもう少し破壊的な羨み(妬み)であり、他人が自分より優れており、その優位性を持つが故に何か悪いことが演奏者に起こって欲しいと願ってしまうパターンです。
Personality and Social Psychology Bulletinの今年6月号に発表されたNiels van de Ven、Marcel ZeelenbergとRik Pietersによる調査によると、良性の羨みである羨望は、人々が熱心に働くようモチベーションを高めるのに非常に有効だということがわかったのだそう。
この調査の内容は、まず大学生を2つのグループに分け、前者には行動の変革が容易というマインドセットの話をし、後者には行動の変革が困難であるという話をまず聞かせたそうです。そしてそれぞれに過去に大成した人の話を読ませるのですが、前者については多くの困難を乗り越えて著名な科学者になった人の話、後者には常に偉大な科学者になりたいと願っていたにも関わらずかなわず、しかし最終的に著名な科学者になった人の話を読ませたそうです。
その後、この2つのグループに同じ内容の新聞記事(ある大学生が国の学術コンペで優秀な成績を修めたというもの)を読んでもらい、その反応として
- how much they felt benign envy (wanting to be like this student)
どれくらい羨望を感じるか (その学生のようになりたいか) - how much they felt admiration (appreciating what the student had accomplished)
どれくらい称賛を感じるか (その学生の成果に敬服するか) - how much they felt malicious envy
どれくらい意地の悪い羨み(妬み)を感じるか
について聞いたそうです。そして、この調査と関係なさそうな話題として、次の期にどれくらい多く勉強をしようと思っているかを尋ねたとのこと。
その結果、
Participants who were given the mindset that change is easy tended to feel benign envy toward the excellent student they read about. In contrast, participants who were given the mindset that change is hard tended to feel admiration toward the excellent student.
変革が容易だというマインドセットを与えられた参加者は今読んだ優秀な学生について羨望を抱く傾向にありました。一方、変革が困難だというマインドセットを与えられた参加者は、その学生に対して称賛の気持ちをより持つ傾向にあることがわかりました。
さらに、
When asked later about study time, those people who thought that change is easy expressed that they planned to study more than those who thought change was hard.
勉強時間について聞いたところ、変革が容易だと考える人たちは変革が困難だと考える人たちに比べ、より長い時間勉強しようと計画していることが分かりました。
のだそうです。おもしろいですね。
envy(羨望や妬み)について、通常はネガティブな印象を持つことが多いように思いますが、自らが変化できるというマインドセットを持っていれば、より自分自身に対して、憧れの人のようになりたいと感じ、それに向けて努力しようとする力が働くようです。
この結果を受け、自己改善についての2つの教訓が書かれていますので最後にご紹介します。
First, keep an open mind about change. If you put in the effort, then your performance will improve. I may never be as good a sax player as some of the great musicians I hear, but I can get better. Second, when you compare yourself to others, it is fine to envy what they have, as long as you use that envy to make yourself better rather than to tear other people down.
第一に、変化に対して開かれた心(open mind)を持つこと。努力を注ぎさえすれば、パフォーマンスは向上します。偉大なミュージシャンほどのサックス奏者にはなれないとしても、より上手になることは出来るのです。
第二に、他人と自分自身とを比べる時、その羨望を自分自身を良くすることに使う限り、その心は効果を発揮します。他の人をけなそうとした場合には、それは羨望ではなく妬みとして機能し、良い効果は発揮しません。
こうなりたい、という人を見つけ、さらに変革が可能というマインドセットを持つこと、この二つのセットが羨望をうまく活用するコツのようです。
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