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人事機能の優劣こそが会社業績を左右する鍵に

人事機能の優劣こそが会社業績を左右する鍵に

クレイア・コンサルティング

人事・組織領域を専門とする経営コンサルティングファーム、クレイア・コンサルティングの広報・マーケティングチームです。

当ブログ「未来の人事を見てみよう」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/creiajp/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


クレイア・コンサルティングの調です。こんにちは。
一週間ほど発表されたBoston Consulting Group (BCG)World Federation of People Managament Asssociation (WFPMA)の共同研究が話題になっています。

Realizing the Value of People Management
人材マネジメントの価値を認識せよ https://www.bcgperspectives.com/content/articles/people_management_human_resources_leadership_from_capability_to_profitability/#chapter1
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このレポートを取り上げている2つの記事を紹介しながら、今人事機能に求められている期待について見ていきましょう。 この調査は100ヶ国以上の4,200人を超える人事およびその他の分野の多業種の管理職層を対象に行われたものです。  

 

リーダーシップとその育成への道筋(タレントマネジメント)がやはり重要

Harvard Business Review (HBR)の以下の記事によると、

How Great Companies Manage Their People
偉大な企業はどのように社員をマネジメントしているか
http://blogs.hbr.org/morning-advantage/2012/08/morning-advantage-how-great-companies-manage-their-people.html

高業績な企業はリーダーシップをただ会社を上手く操縦する機能としてではなく、人々を育て、励まし、チャレンジさせることだと考えています。 それに加え、 

a company needs leaders who care about and develop their people -- leaders who understand that building a talent pipeline should extend beyond successors to top management to include everyone whose contributions are essential to the company's future.

企業が必要とするリーダーは、まず第一に人々をきちんと気にとめて、能力を育成する人。そして、タレント人材を輩出する仕組み(talent pipeline)が、トップマネジメントの後継者だけでなく企業の将来に不可欠な貢献をする全ての人を含むものであることを理解する人である。
アメリカではありがちな超優秀層のみへの教育的投資だけでなく、全階層を対象に優秀なポテンシャル人材を発掘していく、という方向性は、まさに日本企業が得意としてきたことになるかと思われます。もちろんそれが全ての人に等しく同じ研修を施す、ということと同じ意味では無いのですけども。

そして高業績企業が他の企業と比べて特に力を入れているのは次の2点だそうです。  

 
  • They are 1.5 times more likely than average to have in place a leadership model that describes expected contributions and behavior and that is grounded in company values.

    高業績企業は平均的な企業と比べると1.5倍の割合で、期待される貢献内容や行動が記載され、かつ企業理念にきちんと裏打ちされたリーダーシップモデルを確立している。
  •  
  • They make leaders' compensation and career advancement dependent in part on leaders' people-development efforts -- 3.4 times as often as low-performing companies do.

    高業績企業はリーダーの処遇や将来のキャリアを決める要素の一定部分を、彼らの人材開発に対する努力に基づいて行っており、これは低業績企業の3.4倍の割合で行われている。

   

高業績企業を形作るのは人事の責務

このような強いリーダーシップを確立するには、何より人事機能が強くあるべき、とのこと。 では同じ調査をより幅広い視点から取り上げている、イギリスの人事専門誌、HR Magazineの記事を見てみましょう。

Companies with high performing HR departments, enjoy 3.5 times the revenue growth
人事部のパフォーマンスが高い企業では、3.5倍の収益拡大を享受している http://www.hrmagazine.co.uk/hro/news/1074181/companies-performing-hr-departments-enjoy-35-times-revenue-growth-capable-employers

この記事のタイトルからわかるとおり、人事機能のパフォーマンスが収益性に結び付いている、とのこと。  

 
Companies that are 'highly skilled' in core HR practices experience up to 3.5 times the revenue growth and as much as 2.1 times the profit margins of less capable companies

中核となる人事業務において"高スキル化"された企業では、それほどスキル化されていない企業に比べて、収益では3.5倍の成長率、利益率では2.1倍もの差が生まれている。

より人事の機能が高いほど、業績もそれに付随してついてきている、というのは、明確な投資対効果が見えにくい人事部としては、嬉しいニュースではないでしょうか。 逆に言うと、業績が芳しくない場合に、それは人事に何らかの問題がある、と指摘を受けてしまう可能性がある、ということも意味しますけれども。   では人事部は数多ある人事関連の業務のうち、何に資源を投入していけばいいのか。

 

注力すべきは3つの人事業務

この研究では人事業務を22の分野に分けて調査を行い、その結果、

The correlation between economic performance and capability in these 22 HR areas was especially striking in six contexts: recruiting, onboarding of new hires and employee retention, talent management, employer branding, performance management and rewards, and leadership development.

経済的なパフォーマンスとこれら22の人事領域の能力との相関は、特に採用、新入社員の受入と引きとめ、タレントマネジメント、雇用主としての評判管理、業績管理と報酬、そしてリーダーシップ開発の6つの分野で顕著に出た。

そして特に、リーダーシップ開発、タレントマネジメント、業績管理と報酬の3つの中核分野において、特に高業績企業はそうでない企業と比べて劇的に異なる施策を取っているとのこと。

In each one, these companies engaged in more activities and provided more options, did so more often, and were generally more effective.

それぞれの領域において、高業績企業はより多くの施策を打ち、より多くの選択肢を提示し、回数もより多く、そしてたいていの場合より効果的なのだ。
リーダーシップとタレントマネジメントが重要な旨、先のHBRの記事は記載していましたが、それに加えて、例えば以下のような施策が有効なものとして挙げられています。 タレントマネジメントで言うと、

They also do more to nurture employees' individual growth and keep them fulfilled professionally.

高業績企業では社員の個々の成長を助け、またプロフェッショナルとしての矜持を維持している。

そして業績管理と報酬面では、

high-performing companies treat and track performance with transparency...
They reward behavior, not just results, to a greater degree than low-performing companies.

高業績企業は業績(パフォーマンス)を透明性をもって扱い、その結果を記録している... (そして)彼らは低業績企業と比べると、結果だけではなく行動に対してより大きな割合で報いている。

このあたりも、ステレオタイプなアメリカ的な結果オンリー成果主義的なニュアンスとはだいぶ異なる姿を垣間見ることができるかと思います。

 

「人を活かす企業が成長する」が証明された

この調査の結論を言葉尻だけで見ると大した新鮮味はありませんが、何より重要なのは、WFPMAのQuiros代表が語っているように、
  
"We've always believed that companies that have good people-management practices perform better. But we now have uncontestable evidence of this correlation."

「我々は常に、良い人材マネジメントの実践が行われている企業の業績はより良いはずだと信じてきた。しかし、今や我々はこの相関について争う余地の無い証拠を持ったことになる。」

まさに人の成長こそが企業の成長を形作ることを信条とする人事部など人事担当組織の方々にとっては僥倖と言っていいでしょう。しかしそれは今までの業務の重要性が、より高まったことを意味します。

Excelling in leadership development, talent management, and performance management, however, is not enough. Being a people company means doing more across the entire spectrum of people management activities, from employer branding to employee retention.

リーダーシップ開発やタレントマネジメント、業績管理などに秀でることだけでは、残念ながら十分とは言えない。人を重視する企業になるということは、雇用主としての評判管理や社員の引きとめまで、幅広い人材マネジメントの業務に更に注力していくことを意味しているのだ。
   

まずはどこから手をつけるべきか

上に書かれた6分野、特に中核となる3分野に対して、戦略的に資源を投入していくことが必要です。

例えばリーダーシップ開発については、各社の価値観や事業特性に合わせて個々人の役割を都度規定していく役割等級/役割評価制度の採用が一つの方法として考えられます。採用と雇用主としての評判管理(employer brandingはなかなか日本では流行りませんね...)、またインターナルブランディングにも絡みますが、ビジョン/価値観を浸透させるのに、人事制度の運用・活用は効果的です。業績管理や報酬面においても、透明性のある評価制度、企業の価値観を反映した報酬制度の確立は必須でしょう。

また全社的な高ポテンシャル人材の発掘を行うには、通常の人事考課に加えて、潜在的な成果発揮能力を測定していく人材アセスメントの活用も一手です。そうして選抜された候補者をじっくりと育て、また時には敗者復活の仕組みやローテーション、研修などを絡めながら、リーダーシップ開発へとつながる全社的な人材開発の枠組みを作っていく必要があります。

人事機能の優劣こそが会社業績を左右する重要な要素になっていた今、日本の人事のさらなる強化に、当社もさらに貢献していければと思います。 

お読みいただきありがとうございます!