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マネジメントの要諦は、熟慮した上での上司のほどよいさじ加減
»2012年8月30日
未来の人事を見てみよう
マネジメントの要諦は、熟慮した上での上司のほどよいさじ加減
人事・組織領域を専門とする経営コンサルティングファーム、クレイア・コンサルティングの広報・マーケティングチームです。
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クレイア・コンサルティングの調です。こんにちは。
この記事が本ブログの200番目の記事となります。これまでご愛顧いただき感謝申し上げます。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
さて、本日のテーマは先週に引き続き、マネジメント/リーダーシップです。
NHK Eテレの「コロンビア白熱教室」に出演し、著書『選択の科学』がヒットを記録した、コロンビア大学ビジネススクール教授のシーナ・アイエンガー(Sheena Iyengar)教授の名前は、聞き覚えのある方も多いのではないでしょうか。
そのアイエンガー教授が博士課程のRoy Chua氏と行った研究の論文がコロンビア大学のideas(at)workに紹介されていました。Harvard Business Reviewでも昨日要約が取り上げられていましたが、ここではideas(at)workの内容を元に、エッセンスを見ていきたいと思います。
Tiptoeing Toward Freedom
つま先歩きで向かう自由への道
https://www4.gsb.columbia.edu/ideasatwork/feature/7326228/Tiptoeing+Toward+Freedom
つま先歩きで向かう自由への道
https://www4.gsb.columbia.edu/ideasatwork/feature/7326228/Tiptoeing+Toward+Freedom
自由が尊ばれる時代、だが...
前回、「上司の必要性や効用をめぐる議論」というタイトルで取り上げたように、昨今は個人の自由裁量が尊ばれ、上司が存在しない職場まで出現しています。そのような中、リーダーや管理職がどのようにマネジメントを行っていくべきなのか、途方に暮れてしまっているのも無理のない現状だと思われます。
The perennial question of how much power and control a manager should share with staff has always been a difficult one. The question is even more pressing in today's workplace, given the potential of technology to offer employees more job autonomy than ever before.
マネージャーがどれくらいの力とコントロールを部下に対して持つべきかという何度も繰り返される議論は、たいていの場合非常に難しい問題だ。この問いは、かつてないほどの仕事上の自律性を社員にもたらしたテクノロジの可能性を考えると、現在の職場においてはより一層喫緊の課題になっていると言えよう。
テクノロジの進展が自由を希求する動きに拍車をかけているのは、自分も含めてよく感じるところです。ノマド論も喧しいですが、テクノロジの活用によっていろいろな縛りがなくなってきています。ワークライフバランスの推進によって、フレキシブルなワークスタイルを推奨する会社も増えてきていますね。
さて、そうした自由について、これまでの議論では、
Past research has shown that more freedom is better
過去の研究ではより自由が多いほうがより良いことを示していた。
ということで、これは、より意思決定の権利があるほど社員は自分の仕事をコントロールすることができ、よりよい職務満足と高いパフォーマンスを得ることが出来た、との考えによるものとのこと。しかし今や
how does increased freedom -- and decision latitude, or a broader array of choices -- affect employees' perceptions of their managers as leaders?
さらに増え続ける自由、そして意思決定に対する自由裁量、言い換えるとより拡大されてきた選択肢、これらは社員のマネージャーやリーダーに対するとらえ方にどのような影響を与えているか。
『選択の科学』での議論でもあったように、選択肢が増えすぎるとかえって意思決定が難しくなる、という現象がここでも起きているのではないか?というのがアイエンガー教授の問題意識です。
誠実さと独裁との狭間
そこで、アイエンガー教授とChoa氏は、仕事の自律性と意思決定の自由裁量に関しての2つの実験を実施。対象者に対してマネージャーが少数あるいは大量の選択肢を与えることで、それが対象者から見た彼ら管理者のリーダーシップの品質にどのくらい影響を与えたかを測定しています。またそれに加えてMBA生に対して過去の仕事上で与えられた自律性とその際のマネージャーの印象についての調査を行いました。その結果、
striking a balance is key: more decision-making power for employees increased perceived leadership effectiveness and agreeableness of managers, but too much freedom caused managers' images as effective leaders to suffer because they were perceived as being less conscientious.
両立させることが鍵であった。社員に対するより強い意思決定の権限の付与がリーダーシップの有効性やマネージャーへの同意を増加させていた。しかし自由が過ぎてしまうとマネージャーの効果的なリーダーとしてのイメージを毀損することが分かった。これは彼らが誠実ではないと認識されたことによるものだ。
あまりに自由を与えすぎると、誠実ではない、良心的ではない、と思われる。これは自律性を重んじるリーダー・マネージャーの方にとっては手痛い結果です。一方で、
"Managers who don't give their employees choices in how to do their work are perceived as dictators or authoritarians," Iyengar says. "And managers who offer too much freedom are perceived as warm but incompetent."
「社員に仕事のやり方について選択肢を与えないマネージャーは独裁者あるいは権威主義者と捉えられる」とアイエンガー教授は語る。「そして自由を与えすぎるマネージャーは、優しいけれども能力が足りないと思われるのだ」
誠実さが確実に伝わるくらいの時間をかけるべし
アイエンガー教授によると、この狭間の中に、ちょうどいい妥協点(happy medium)があるとのこと。英語(幸せな中間点)のほうが日本語よりも前向きな表現でいいですね。ある程度の選択肢、でも多過ぎず、というのが最も親切かつ有能と見られる、と。
"Employees think of those managers as effective leaders because they feel that they have spent time thinking about their goals and have been more strategic about what choices they want their employees to contemplate,"
マネージャーが部下のあるべき姿について考える時間をきちんと持ち、また部下がどのような選択肢を元に熟慮すべきかを戦略的に判断したと捉えることによって、社員はマネージャーを有能なリーダーだと考えるのである。」
なんとも上司の方にとっては難しいところではありますが、ただの自由放任ではいけない、と言われる理由は、上司の部下に対する時間と配慮の投資がある程度なされなければ部下は見放されたように感じる、というところにあるようです。
そしてこうして適切な選択肢を与えられると、部下は力を与えられた(given as empowering)と感じる、とのこと。こうした形でもエンパワーメントは成り立つ、ということですね。
中間点のありかは会社にとってまちまち
そうはいっても、たとえばブラジルのセムコ社の超民主主義的な運営など、自由放任を地でいく会社も多々あり、ここではあくまでも一般的にはこのほうがいいですよ、というに過ぎないことは言うまでもありません。また部下のレベルによってどの程度までの選択肢を与えるべきかも変わってくるため、いずれにせよ鍛錬が必要になります。
ちょうどアメリカの有名なソフトウェア会社、37signalsのCEO、Jason FriedのインタビューがFast Companyに載っていましたが、彼はこのセムコ社のRicardo Semlerを引用しながら、より自由を希求するマネジメントを語っています。
37signals Earns Millions Each Year. Its CEO's Model? His Cleaning Lady
37signalsは毎年何百万ドルも稼いでいるが、CEOのロールモデルは彼の雇った家政婦さん!?
37signalsは毎年何百万ドルも稼いでいるが、CEOのロールモデルは彼の雇った家政婦さん!?
これらを較べて読みながら、自組織にふさわしいマネジメントの"幸せな中間点"を探し出してみるのも良いかと思います。
お読みいただきありがとうございました。
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