誠ブログは2015年4月6日に「オルタナティブ・ブログ」になりました。
各ブロガーの新規エントリーは「オルタナティブ・ブログ」でご覧ください。
人材フローのトレンド: 採用はポテンシャルを見るべし、退職は合理性と意志のどっちも大事
»2012年11月22日
未来の人事を見てみよう
人材フローのトレンド: 採用はポテンシャルを見るべし、退職は合理性と意志のどっちも大事
人事・組織領域を専門とする経営コンサルティングファーム、クレイア・コンサルティングの広報・マーケティングチームです。
当ブログ「未来の人事を見てみよう」は、2015年4月6日から新しいURL「http://blogs.itmedia.co.jp/creiajp/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。
人材獲得競争はまだまだ続く
戦略コンサルティングファームのマッキンゼーが出した研究がBusiness Insiderに掲載されています。
McKinsey Predicts The War For Talent Will Go Nuts By 2020
2020年までに人材獲得戦争はさらにひどくなる、とのマッキンゼーの予測
ポジションは空いているのだが、そこに見合う求職者がいない、というミスマッチを起こしてしまっているのがアメリカの雇用市場の現状ですが、2020年までにはさらにこの傾向が広がるとのこと。
ここでのHigh-skill workers(高スキル労働者)は大卒以上卒、Medium-skill workers(中スキル労働者)は高卒もしくは職業教育のみの受講者、とのことですが、中スキル労働者は供給が需要を上回るのに対して、高スキル労働者は需要が供給を上回り、人不足の状況になってしまう、と伝えています。
このような状況の中、取り合いとなる優秀な人材を獲得していくには、どのような戦術を取るべきなのでしょうか。
実績よりもポテンシャルを見るべし
スタンフォード大学とハーバードビジネススクールの2012年に実施された共同研究の結果がTLNTで紹介されています。
Should You Hire Based on Accomplishments, or Potential?
実績で採用すべき?それともポテンシャル?
この研究の結果は以下のようになったそうです。
In the study, a panel of evaluators was asked to predict who would perform better in a leadership role: a candidate with two years of relevant experience who scored well on a leadership achievement test, or a candidate with no experience who scored well on a leadership potential exam. Most evaluators chose the second candidate.
この研究では、リーダーシップの役割を任せた場合に誰がよりよく実践しうるかについての予測を、評価者たちに尋ねた。1人目は2年間関連性の深い仕事の経験を持っており、リーダーシップの達成度テストで良いスコアを取った人、2人目は当該分野での経験が無く、リーダーシップの潜在性テストで良いスコアを取った人である。結果、ほとんどの評価者が2番目の候補者を選択した。
つまりは、一般的に言われているように実績が列挙された職務経歴書を重要視した、というわけではなく、有望だろうという雰囲気(an air of promise)をより高く評価したということになります。
このような採用手法がうまくいくのかどうか?
記事ではFishbowl社というソフトウェア会社の事例の紹介を通して、有用性をアピールしています。
興味のある方はこの記事やForbesの記事をご覧ください。
さて、そうしてポテンシャルを重視して採用したとしても、絶対にうまくいく、とは当然限らないわけです。では、そのような事態になった時に、それでも引き留めるべきか、あるいは、さっさと辞めてもらうべきか?
出来るだけ辞めさせない方向で
アメリカ進歩センター(Center for American Progress)という、リベラル寄りのシンクタンクが行った研究がCBS money watchに掲載されています。
How much does it cost companies to lose employees?
社員を失うのにかかるコストはどのくらいか?
この記事は、平均的なパフォーマンスをあげている社員が、自分の給料は5%少ないことを、証拠資料を持参しながら訴えてきた場合、あなたならどうしますか?という質問から始まります。
A: 1~2%の昇給
B: 何もしない
C: 5%の昇給
D: 地元の商店街で使える50ドル分のギフトカードをプレゼント
失業率が高く、求人を求めて列をなしているアメリカの現状では、さっさと辞めるべしと判断しがちなのですが、この研究によると、
Employee turnover is expensive.
社員の退職は高くつく(故に避けるべき)
ということだそう。
Turnover costs include productivity losses during training, recruiting and lost work while a position is vacant. For all jobs earning less than $50,000 per year, or more than 40 percent of U.S. jobs, the average cost of replacing an employee amounts to fully 20 percent of the person's annual salary
退職のコストは研修中の生産性のロスや採用、ポジションが空席となっている間の仕事の不在などが含まれる。アメリカで40%以上を占める年収5万ドル(412万円)以下の仕事を見てみると、社員を入れ替える際にかかるコストの平均は、その社員の年収の20%が完全にカバーされるくらいにまで達してしまう。
したがって、先ほどの問いに対する回答はCがベスト、とのこと。昇給はその後にも影響を及ぼすものの、雇用解除であれば一時で済むではないか、との反論に対しても、4年間に渡る昇給を行って初めて雇用解除におけるコストを上回ることになるため、雇用解除は合理的ではない、との説明がなされています。年収が3万ドル(247万円)以下の仕事については、入替のコストはやや下がるものの、年収の16%にはなってしまうとのことでした。
いや、すぐに辞めさせるべし
一方で、辞めて欲しいと思った場合には、即決すべき、という考えもあります。こちらは特に中小・ベンチャー企業や高度人材が対象になるでしょうか。
エバーノートのCEO、フィル・リービン氏の日経ビジネスONLINE上のコラムが、スタートアップ・ベンチャー界隈を中心に人気を集めていますが、
日経ビジネスONLINE: エバーノートCEO シリコンバレー流を大いに語る!
※特に第1回の「悪いこと言わないから、会社なんて始めるべきではありません」は、多くの起業家の共感を集めています。
その第3回の連載、
解雇する覚悟がなければ、採用してはいけません
において、リービン氏は以下のように述べています。
では、どんな状況になったら解雇を考えなければならないでしょうか? これはもう、本当に難しいですね。国によっても、業種によっても違うと思います。僕の場合は、何かのきっかけで、その人に「去ってもらわないといけないかも知れない」と考えるようになったら、すぐに決断しています。単刀直入に、けれど心配りをして、本人には真実を話します。(中略)
おそらく起業家としてもっとも苦しい経験が、社員の解雇だと思います。特に親しい友だちが該当者の場合は本当に辛い。
けれど、部下の適性に疑念が生じたら、解雇以外に選択肢はないと考えてください。
ただその前段において、リービン氏は
採用についてですが...一番頼りにしているのが、親しい友人からの推薦です。信頼する仲間から「あいつなら間違いないよ」と言われれば、これほど心強い言葉はありません。
そんな推薦だけで人が集められれば、素晴らしいのですが、現実は甘くありません。優秀な人材は誰もが欲しがりますし、本人の意志も尊重しなくてはなりません。そこで、僕は口コミの範囲を「友人推薦」から、「社員推薦」に広げました。優秀な社員の推薦なら、きっと優秀な人が入ってくれる可能性が高いですよね?
と語り、採用の重要性を述べています。つまり、それだけ採用が重要だからこそ、
確信をもって一人を解雇できるなら、もっと確信をもってたくさんの人を採用できる――。非常に不快な決断であっても、覚悟と確信をもって下せるようになれば、楽しい決断にはその100倍もの確信をもって臨めるはずです。採用の巧者になれたなら、きっと採用された人々も成功し、あなたに感謝するでしょう。
結果として、多くの新しい仲間を増やせると、僕は信じています。
日本では解雇が一般的でないことは重々承知しつつも、採用に力を入れたうえで、それでもダメな場合は即断即決することこそが重要、とのことです。
このような採用~(育成)~退職までの人材フローをどのようにマネジメントしていくか、人事部門には繊細かつ大胆な取り回しが求められます。希望退職やアウトプレースメントの拡充など、アウトフローの手法は徐々に増えてきていますが、まずは適切な人の見極めから慎重にやっていきたいところです。
お読みいただきありがとうございました。
~
人の見極めは採用場面だけではなく、昇格・昇進などの節目のタイミングでも必要になります。ポスト不足のために昇格・昇進の精度向上が必要になる中、客観性を担保する方法として、人材アセスメントの活用はおススメの一手です。
サービスとしての記載はありませんが、一般的に行われているアセスメントセンター方式も対応可能です。また、採用面でのご支援も行っています。
先週当社ブログに不具合が発生し、しばらくアクセスが出来ない状態となっておりました。そのため、先週はブログの更新をお休みさせていただいておりました。申し訳ございませんでした。既に復旧し、再発防止対策も完了しています。引き続きのご愛顧をお願い申し上げます。