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ネガティブなフィードバックも時には有効
»2013年1月31日
未来の人事を見てみよう
ネガティブなフィードバックも時には有効
人事・組織領域を専門とする経営コンサルティングファーム、クレイア・コンサルティングの広報・マーケティングチームです。
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クレイア・コンサルティングの調です。こんにちは。
日々のマネジメントや年1回の人事評価面談の際に、上司を悩ませることの一つとしてフィードバックがあります。厳しい指摘をしたいのはやまやまだが、下手に機嫌は損ねたくない。でも指摘しないとチームの業績や本人の能力は上がっていかない。こういった時、どのようにすれば良いのか。
過去に大きな成果を上げた人が経験則から語るベストプラクティスも教訓集としてはいいのですが、科学的に検証された方法に則るとすれば、どのようなときにどう対応すべきかなのでしょうか?
Heidi Grant Halvorson博士がPsychology Todayに掲載した記事を紹介します。
Sometimes, Negative Feedback Is Best
- When, where, and why negative feedback is motivating. -
コロンビア大学のStacey Finkelstein氏とシカゴ大学のAyelet Fishbach氏の最新の研究によって、いつ誰にどういうフィードバックを行うのが適切なのかが分かってきたのだそうです。
ポジティブなフィードバックとネガティブなフィードバック
まず、ポジティブなフィードバックとネガティブなフィードバックそれぞれの機能を分けて考えることが重要だそうで、
Positive feedback (e.g., Here's what you did really well....) increases commitment to the work you do, by enhancing both your experience and your confidence. Negative feedback (e.g., Here's where you went wrong....), on the other hand, is informative ? it tells you where you need to spend your effort, and offers insight into how you might improve.
ポジティブなフィードバック(例: この件については本当に君の働きは素晴らしかった)は、今あなたがやっている仕事に対するコミットメントを高める。というのも、あなたの経験とあなたの自信を増進させることになるから。一方、ネガティブなフィードバック(例: この点に関して君のやり方は良くなかった...)は情報の伝達であり、どこに今後注力していく必要があるかを示し、どのように改善していけばいいのかを気付かせる働きがある。
コミットメントの向上と、情報の伝達、という異なる機能があるとして、それぞれをうまく使い分けるには、具体的に誰に対してどのような場面で使っていけばいいのか?
when you don't really know what you are doing, positive feedback helps you to stay optimistic and feel more at ease with the challenges you are facing ? something novices tend to need. But when you are an expert, and you already more or less know what you are doing, it's negative feedback that can help you do what it takes to get to the top of your game.
もし自分がやっていることがきちんとわかっていない場合、ポジティブなフィードバックは自分が直面している困難な状況を楽観視させ、安心感を与えてくれる。これはしばしば初心者(novice)が必要とするものだ。しかしもし自分が専門家(expert)であり、自分がやっていることについてそこそこの知識がある場合、自分がプレーしているゲームでよりトップに近づくために必要なことを教えてくれるのはネガティブなフィードバックとなる。
記事では環境保護組織のメンバー(専門家)とそうでない人(初心者)とが、環境に優しい行動をとったかどうかについてフィードバックを受ける場合、効果的だった行動と効果的でなかった行動のどちらを聞きたがったか(専門家ほど効果的でなかった行動を聞きたがった)、といった、実際に行われた実験の様子が取り上げられています。
モチベーションも変わるか?
これらの実験から、
people who are experienced in a given domain ? people who already have developed some knowledge and skills ? don't actually live in fear of negative feedback. If anything, they seek it out. Intuitively they realize that negative feedback offers the key to getting ahead, while positive feedback merely tells them what they already know.
ある分野において経験の豊富な人、つまり知識やスキルをある程度蓄積した人は、ネガティブなフィードバックを恐れることがない。たとえ不安があったとしても、自分で何とかしてしまうのだ。彼らは本能的にネガティブなフィードバックが先に進んでいくための鍵を提供しててくれていると認識しており、一方ポジティブなフィードバックは自分が知っていることをただ伝えているに過ぎない。
ということが判明したそうです。ではフィードバックを受けた結果、現場で上司が最も懸念するであろう、部下(対象者)のモチベーションはどうなるのか?
先の環境保護に関する実験において、ランダムにポジティブあるいはネガティブなフィードバックを行い、その後実験参加費として払われた25ドルを環境保護団体(Greenpeace)にいくら寄付したいかを尋ねたところ、
When negative feedback was given, experts gave more on average to Greenpeace ($8.53) than novices ($1.24). But when positive feedback was given, novices ($8.31) gave far more than experts ($2.92).
ネガティブなフィードバックを受けた場合、専門家は初心者に比べて平均でより多くを寄付した(専門家: 8.53ドル、初心者: 1.24ドル)。しかしポジティブなフィードバックが与えられた場合、初心者は専門家よりもより多くの寄付を行った(専門家: 2.92ドル、初心者: 8.31ドル)。
フィードバック後のモチベーションについても、先の本人に対する有用性と同様、専門家ほどネガティブな、初心者ほどポジティブなフィードバックが効果的だということが分かりました。
でもだからといって、初心者が失敗しても常にやさしい言葉をかけ続けて甘やかしてよいか、というと、勿論そういうわけではなく、必要な指摘はきちんとすべきなのは確かです。そして、熟達者についても褒めてはいけないわけではありません。成果にはきちんと報いることが必要です。重要なのは、
negative feedback should always be accompanied by good advice, and given with tact.
ネガティブなフィードバックは常に前向きなアドバイスと共に提供される必要があり、そこには最善の工夫が必要だ。
ということであり、また、
piling on praise is a more effective motivator for the rookie than the pro...
you shouldn't worry so much when it comes to pointing out mistakes to someone experienced.
褒め続けることは、プロや上級者よりも新人のモチベーションを高めるのに効果的だ、ということであり...
経験豊かな人に対して誤りを指摘することについて、それほど心配する必要はない、ということだ。
何事も極端はよろしくありません。上記の点を踏まえ、日々のマネジメントや評価面談を工夫してみてはいかがでしょうか。人それぞれ長所と短所があると思いますので、そこで細かく使い分ける、等。
お読みいただきありがとうございます。
~
上司の評価能力は、部下の成果や能力を評価する人事制度を導入している組織では必須の能力となります。制度を導入してもうまく浸透しない場合、ここがネックになっているかもしれません。特に急成長中の組織で現場のマネジメントレベルが追いついていない場合や、昇格者研修などが特に出来ていない場合には、評価者研修だけでも導入されることをおススメします。