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協力者が多すぎるのも、イノベーションには逆効果。何事もほどほどに。
»2013年3月21日
未来の人事を見てみよう
協力者が多すぎるのも、イノベーションには逆効果。何事もほどほどに。
人事・組織領域を専門とする経営コンサルティングファーム、クレイア・コンサルティングの広報・マーケティングチームです。
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クレイア・コンサルティングの調です。こんにちは。
BUSINESS INSIDERのWar Room Contributorsで、コラボレーション(協力)に関する面白い記事が掲載されていました。
以前このブログでも コラボレーションについての6つの誤解 というエントリをあげていましたが、その3番目の誤解として取り上げられていた
- Bigger is better. / 大きいことはいいことだ
という件について、その詳細が説明されています。
Adding Too Many People To Projects Kills Innovation
直訳すると、度を越したプロジェクトへのアサインはイノベーションを殺す、となるでしょうか。
コラボレーションにも上限はある
新たな発見などについても、その過程においては、1人の力ではなく、大勢の人の協力の元で成し遂げられたものが多くあります。アインシュタインでさえ、当時の様々な発見について、有形無形の協力によって成し遂げられたものであると語っているようです。
では、そのまま素直にどんどん協力者のネットワークを増やしていくべきか? というと、そう話は単純ではないようです。
イギリスの製造業のオープンイノベーション(自社技術だけでなく他社が持つ技術やアイデアを組み合わせて、革新的な商品やビジネスモデルを生み出すこと(日経情報ストラテジー))について調査を行ったKeld Laursen氏とAmmon Salter氏の研究によって、以下の事実が明らかになりました。
(出典: Keld Laursen and Ammon Salter, Open for innovation)
上記の図だけでもなんとなく意味はつかめそうですが、縦軸が生き延びたイノベーション案件の効果の高さ、横軸がそのイノベーションを起こすのに必要とした協力者の数、を表しています。
It shows that adding innovation partners makes firms more innovative, up to about 11 partnerships. After that, adding more partners erodes performance.
企業のイノベーション性を高めるためには、パートナーシップが有効であることが判明した。ただしパートナーシップの数は11まで。それ以降、どれだけパートナーシップを増やしてもパフォーマンスは損なわれる。
両氏はこのような結果が出たことの理由として、
in this case, it means that if you have too many partners, you can't pay enough attention to each, and your results start to get worse.
このケースにおいては、パートナーが多くいた場合、それぞれのパートナーに十分な注意を払うことが出来ず、次第に結果が悪くなっていくのではないだろうか。
と述べています。つまり、管理スパンが広すぎて管理しきれない、というマネジメント一般に適用される事態が、ここでも発生しているということになります。
この管理スパン(英語ではmanagerial controlといいます)の問題は、1950年代のEdith Penrose氏の研究において既に言及されており、チームワークは8人~12人の間でのみ有効に機能するという結果が出ているそうです。
営業させるなら外向的な人がいい!ってわけでもない
このように、多ければ多いほど効果を発揮するわけではない、という研究結果は、その他の分野にも見られるようです。これまた似たような曲線を描いていますが
(出典: Adam Grant, University of Pennsylvania)
これは縦軸が営業パーソンの売上、横軸が営業パーソンの外向性(いかに外向的か)の度合いを表しています。横に行くほど、悪く言えば外面がいい、ということになるでしょうか。Adam Grantという研究者の研究結果です。
日本でも有名なDaniel Pinkの新著"To Sell is Human"にこの結果が記載されているそうなのですが、普通に考えると、外向的であればあるほど、営業成績は上がっていきそうなのですが、実際はそうではない、と。
As you can see from the chart, the folks who fared the best ? by a wide margin ? were in the modulated middle. They're called "ambiverts," a term that has been in the literature since the 1920s. They're not overly extroverted. They're not overly introverted. They're a little of both.
この図から明らかなように、最もうまくやっている人―それも明らかな大差で―うまく自己調節が出来ている真ん中くらいの人たちだった。彼らは「両向型人間」と呼ばれ、1920年代から様々な文献に出てくる人々である。彼らは極端に外向的でもなければ、極端に内向的でもない。彼らは微妙に両方の要素を併せ持っているのだ。
ほどほどがベスト
日本ではあいまいな回答でも許される局面がある程度あるように思いますが、アメリカなどでは基本的には全てに白黒つけたいという人がどちらかというと多くいる印象を受けます。ですが、
but business rarely offers them. Is collaboration good? Yes, but only up to a point. Is extroversion good if you're a salesperson? Yes, but only up to a point.
しかしビジネスではほとんどそういった分かりやすい答えは出てこない。 コラボレーションは善か? 答えはイエスだがあくまで程度による。営業パーソンとして外向的であることは善か? 答えはイエスだがあくまで程度による。
ゆえに
Figuring out where that point lies is part of the art of managing.
その"程度"をどこに置くかが問題になるが、それこそがマネジメントがアートたるゆえんの一つなのだ。
と、この記事では結ばれています。
そういう意味では、こういった曖昧さを曖昧さとして許容できる日本のほうが、実はコラボレーションをうまくマネジメントできるのかもしれません。
お読みいただきありがとうございます。
~
当社が提供している人材アセスメントの中に、「革新性(仕組みを革新し、前例を打破する)」と「一貫性(毅然として一貫した態度をとる)」という二つのコンピテンシー(能力)を見ていくものがあります。この相反するコンピテンシーを両方見ていくのですが、双方がそれぞれ高い人もいれば、片方だけが極端に高い人、双方が同じように低い方もいらっしゃいます。
もし両極端に高い人がそれぞれ一人ずついらっしゃる組織であれば、それこそチームワークの見せ所ですね。そこにうまくマネジメント出来る人が加われば、万能な一人のプレーヤーをはるかに凌駕するチームが生まれるかも!