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集客用のコラムを代筆するために考えたこと

集客用のコラムを代筆するために考えたこと

開米 瑞浩

IT技術者経験をバックグラウンドに、技術系の専門的な情報を「分かりやすく書く」スキルの指導を得意とするドキュメント・コンサルタント。技術者向け文書作成研修経験多数。

当ブログ「技術屋のためのドキュメント相談所」は、2015年4月6日から新しいURL「​http://blogs.itmedia.co.jp/doc-consul/」 に移動しました。引き続きご愛読ください。


技術屋さんが「ドキュメントを書け」と言われて困ることの1つに、非・技術的な文書を求められた場合、がありまます。たとえば

「○○技術に関するセミナーを当社主催で開催したいのですが、そのための集客用にコラムを書いてもらえませんか? セミナーに興味を持ってもらえるような内容を、当社のメディアで3回に分けて掲載しますので一回あたり3000字ぐらいでお願いします」

と、こんな感じの依頼があった場合です。こういう場合、テーマは自分が専門としている技術領域だったとしても、目的は「集客」です。わかりやすい技術解説よりも「セミナーに行きたくなる」ように書かなければなりませんが、いったいそれにはどうしたらいいのか・・・勘所がわかりませんよね。

私も別に集客文のプロではないのですが、この種の依頼が最近ありました。
そのときに考えたことは意外に他の人にもヒントになるかもしれませんので、メモを公開することにします。何かの参考になれば幸いです。


■■ 経緯 ■■
ある新聞社系メディアが、コンサルタントY氏のセミナーを企画し、Y氏に集客用のコラムを依頼。Y氏はセミナーで話すのは名人級にうまいのですが、文章は苦手なので「困った・・・」となり、私に代筆の依頼がありました。私はY氏とは長いつきあいで、セミナーの内容もだいたい知っているのでちょうど良かったわけです。

話を聞いてみると、Y氏が扱う領域では既に他に人気コンサルタントが1名いるそうです。
K氏というその1名はY氏とは反対のタイプだそうで、これは好都合、と徹底的に逆のポジションを打ち出すことにしました。

  Y氏:現場たたき上げの、親しみやすい、やさしいおじさん
  K氏:現場経験なしの理論派、厳しく指導するインテリタイプ

こうしてざっくりと方針を立ててから実際のコラムを書きました。以下はその途中の細々した表現を組み立てた意図のメモです。「意図」のほうだけでも参考になると思いますので、具体的な「表現」そのものは省略して「****」と書くか、実際の文言とは違う形で書いておきます(書くと、ぐぐれば分かってしまいますし・・・(笑)。


■「私自身も後がない思いで**********したことがありました」
→親しみを持ってもらうため、修業時代の必死さを見せる

■「○○一筋30年」
→K氏と違って現場たたき上げ系だということを感じさせる

■「でも、何が問題なのでしょうか? そして、打つ手はあるのでしょうか?」
→全体の1/3ぐらい使って「困った状況」を説明したところで、これからその謎解きをするよ、という予告をします。読者はこの流れで関心を持つはずで、またおそらくここでページの切り替えになるので、次をクリックさせるための引きを作っておくわけです。

■「○○○の動き」
→最初は「△△△状態」と書いてたんですが、もっと柔らかい表現のほうがY氏キャラに合ってるだろうということで「○○○の動き」に変更

■「よっしゃ******!」
■「でもね、************」
→K氏のようなインテリくささを消すためにソフトな口語体を使用します。

■「私は相談してくれた方に、あるヒントをお話ししました」
→問題点を書くだけだと冷たく見えるので、その後親身に相談に乗ったということをきちんと書きます

■「○○○な感じに出来てますけどね、でもね・・・」
→「○○○な感じ」・・・に作りたがる読者が間違いなく大勢いるはずなので、そうじゃないよ、と釘を刺しておく。このフレーズを読んでギクッとする人は多いはず。次回以降にもつながる伏線。

■「私が現役の時に経験的にやっていた方法です。
→理屈っぽい話じゃないよ、だから、来れば分かるよ、セミナーに来てね、ということを示します。

■「誰かが教えてくれたわけではありません」
→Yさんオリジナルの方法であって、他の人からは聞けないよ、ということを示します。だからセミナーに来てね、ということ。

■「誰にでもできますよ。ポイントは簡単ですから」
→俺にも出来るんだろうな? と希望を持ってもらう

■「私も手伝いますから、一緒にやりましょう!」
→ほっといたりしませんよ、親身な相談役になりますよ、という演出

■「部下に教えてやらせてみたところ、やはり同じようにうまく行きました」
→Yさんだから出来る特殊技じゃなく、汎用性がありますよ、だからセミナーに来れば役に立つよ、ということ

■「○○業界、○○業界、○○業界でいずれも効果があった」
→特定の業種でしか使えない技じゃなく、汎用性がありますよ、だからセミナーに来れば役に立つよ、ということ


・・・・・・・・・・以上、ざっとこんなことを考えながら、約3,000字の記事をまとめました。なんの文章であっても、それを使う目的があるはずなので、目的に応じて細かい計算をして演出する必要があります。商業メディアに載っている記事、コラムというのは個人がブログに書くものに比べて、何気なく書いているように見えてもそうした細かい演出があるものなので、興味がある方は注意して読んでみてください。